きょう心にしみた言葉・2023年7月18日
バズフィード・ジャパン記者で、医療やケアの現場で取材を続ける岩永直子さんの著書「言葉はいのちを救えるか?」から、詩人の岩崎航さんの言葉を引用しました。岩崎航さんは進行性筋ジストロフィーと闘いながら、五行詩の発信を続けています。兄の岩崎健一さんは、やはり進行性筋ジストロフィーと闘いながら、画家として制作を続けています。ふたりの兄弟は、航さんの五行詩と健一さんの絵で構成した画詩集「いのちの花、希望のうた」(ナナロク社)を出版しました。
冒頭の言葉は、航さんが17歳の時、症状の進行に絶望し、死を考えた時を振り返ったものです。「生きようという命そのものが持っている力」によって、航さんも健一さんも創作活動を始め、多くの人々に「生きる力」を届けていきます。「言葉はいのちを救えるか?」には、航さん健一さん兄弟の心揺さぶられる言葉が連なるように紹介されています。
航さんの詩です。
嗚呼僕も
生きているんだ
青空の
真っ只中に
溶け込んでいる
「通院のために介護タクシーにストレッチャーで乗り込む時に青空を見たんです。空をまともに見ることさえ久しぶりで、その時見た青空に、言葉にならないほど心動かされました。まさに『嗚呼』としか言い表せなかった瞬間だったのです」と航さんは振り返ります。
健一さんは、病棟の周りの桜に感動して、絵の創作活動を始めます。
航さんは、健一さんの心の動きをこう語ります。
「兄が桜を見て美しさに心打たれて絵を描こうと思ったように、花はその命が、見る者の命を動かす。命が響き合い、見る者の心を動かすのではないでしょうか」
同じ病を生きるふたり。航さんは「兄は自分の灯明」、健一さんは「弟は同志であり戦友」と語ります。ふたりのいのちが作品に宿り、作品を通して多くの人の心に宿っています。
「言葉はいのちを救えるか?」には、岩崎さん兄弟をはじめ言葉の力を信じる人たちの思いが綴られています。