ライフリンク・メディア報道・秋田の取り組み④・東京フォーラム・2017年11月
2017年11月14日、東京・内幸町の日本プレスセンタービルで開かれたフォーラム「秋田モデルから考えるこれからの自殺対策」の議論の内容を、前回に続き紹介します。
清水康之代表、自殺総合対策推進センター長の本橋豊さん、NPO法人あきた自殺対策センター蜘蛛の糸理事長の佐藤久男さんの3人が登壇した基調鼎談の後、パネルディスカッション「進化・深化する自殺対策」が行われました。パネリストは、秋田県湯沢市健康対策課保健推進班長・保健師の佐藤久美子さん、足立区こころとからだの健康づくり課長・保健師の馬場優子さん、秋田県医師会常任理事・メンタルクリニック秋田駅前院長・精神科医の稲村茂さん、自殺対策総合推進センター自殺実態・統計分析室長の金子善博さん。秋田大学大学院医学系研究科准教授の佐々木久長さんがコーディネーターを務めました。
佐藤久美子さんの発言です。
「湯沢市は人口4万6500人の市で、人口減と高齢化が進んでいる。自殺対策で地域づくりのアプローチが必要だと痛感したのは2010年、2011年に特定の地域で自殺が急増したこと。秋田大学と共同で対策を講じることにしたが、自殺に対する地域の誤解や偏見は強く、対策の必要性を理解してもらうのに時間がかかった。ようやく理解を得て住民と本音で話し合い、孤立を防ぐ事業に取り組んだ結果、自殺者は大きく減少した。地域で支え合うことの大切さを住民も行政も確認できたことは、その後の対策の弾むになった」
馬場優子さんの発言です。
「2006年の足立区は人口が約65万人で東京23区では5番目なのに、自殺者数は23区内でワーストだった。このため08年から本格的な自殺対策を開始したが、庁内や議会などの理解を求めるのに意識的に用いたのは数値。07年までの10年間で自殺した人は区内の一つの町内会全住民に相当する1616人に上ること、自殺した人の72%は亡くなる前に相談機関を訪れていたことなどを示した。相談に訪れていた人の命を守れなかったことに職員や関係機関はショックを受け、さまざまな対策が加速した。その結果、昨年までの18年間で自殺者は3割も減って都や全国の減少率を上回っている。データを分析し、どこに重点を置くかということが重要だ」
稲村茂さんの発言です。
「対策をより実効あるもににするには、医療関係者にも地域モデルの視点が求められる。医療関係者は地域との関わり、接点が大きい。自殺の原因は心の病だけでなく、がんなど身体の苦しみも大きなウエートを占める。外科や内科の医師も含めて医療関係者は地域住民の一人なんだという意識を持ち、患者の異変に気付いたら話を聞いて早期に自殺予防につなげることが肝心。秋田県医師会では精神科以外の医師に協力医としてうつなどの初期診療をお願いしており、互いに連携しながら取り組みを広げていきたい」
金子善博さんの発言です。
「自殺率の高低で塗り分けた地図を見ると、東北地方は率の高い地域が目立ち、東京近辺は低い地域が多い。だが、例えば「自殺に占める独居者割合」の基準で見れば東北は低い地域が多く、東京や大阪など大都市は高い地域が多くなる。四国や南九州など大都市圏でなくても高い地域がある。こういうのが地域特性、地域の自殺の実態であり、分析の切り口を変えることによってそれが見えてくる場合がある。地域特性に応じた対策を考えるとともに、支援から漏れる人々や地域がないようにしてくべきだろう」
「秋田の取り組み」シリーズは、いったん終わります。次回から「自治体トップセミナー」シリーズを始めます。
写真は、富山市の富山ガラス美術館にて。
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