ヒストリー⑩始まりの前に・2004年10月
決意のNHK退職
NHKの清水康之ディレクター(現ライフリンク代表)は悶々とした日々を送っていました。
厚生労働省の「自殺防止対策有識者懇談会」が2002年12月に出した「自殺予防に向けての提言」は、よく練られた内容でした。
自死遺児たちを取り上げた番組は反響も大きく、彼らの声を社会に届けたという思いもありました。
しかし、自殺に追い込まれる人は増え続けていました。
2003年に自殺に追い込まれた人は3万4427人と過去最高になり、6年連続の3万人超を記録してしまいました。
最大の問題は、提言が提言だけで終わってしまっていることでした。
提言に沿って社会が動けば、また番組にしようと取材を続けていましたが、厚生労働省は相変わらずうつ対策だけで、包括的・横断的な動きはまったくみられません。
地方自治体にしても「自殺対策って、行政がやる仕事なんですか」と聞き返される始末です。
そうした一向に動ない現状に、清水ディレクターは心を決めます。だったらもう、自分が現場に入ろうと。
そして2004年3月、NHKを退職します。32歳、明日からの収入がまったく見えないままの決断でした。
5月には、東京都にNPO法人認証の申請も行いました。
清水ディレクターは、代表になりました。
団体の名称を「ライフリンク」としたのには、清水代表の思いがありました。
「みんなでつながり(リンク)あって、いのち(ライフ)を守ろう」「いのち(ライフ)を守るために、みんなでつながろう(リンク)」という意思を込めたのです。
2004年10月、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」が発足しました。
=続く 次回は、⑪2004年10月編「ライフリンク 苦難の船出」です。