ライフリンク・メディア報道・北東北フォーラム・2010年9月開催①
秋田県、青森県、岩手県の3県に発行本社を置く秋田魁新報社、東奥日報社、岩手日報社の3新聞社は、2009年から毎年大規模な自殺対策フォーラムを開き、ライフリンクも全面的に協力しています。フォーラムでは、様々な論点が提起され、民間団体の活動も詳しく報告されています。3つの新聞社の記事をもとに、フォーラムで交わされ、深められた議論について、たどっていきます。今回は2度目の開催となった「2010自殺対策を官・学・民で考える いのちを守り、いのちを支える全国フォーラム」を2回に分けて紹介します。(2010年9月18日、19日に秋田市で。新聞記事は、10月17日東奥日報、10月19日秋田魁新報・岩手日報)
基調対談は、ライフリンクの清水康之代表と本橋豊・秋田大学医学部長が行い、国の自殺対策について議論しました。国は、2009年11月に「自殺対策100日プラン」、2009年2月に「命を守る自殺対策緊急プラン」を掲げて遂行しました。本橋氏は「3月に睡眠キャンペーンを行ったところ、4月の自殺者数は全国的に減少した。3カ月展開した秋田県では、5月も減った」と効果があったと総括しました。また、本橋氏が「自殺統計は亡くなった人のデータ。残された遺族に関する数字は出てこない」と指摘すると、清水康之代表は「遺族は全国に300万人いると推計されているが、支援組織は100もない。社会全体、地域全体が遺族支援を展開し、遺族が安心できるよう変えていかなければ」と提起しました。
「事例報告」では、全国各地で活動する団体や自治体からの報告が相次ぎました。
NPO法人東京自殺防止センターの西原由記子さん(故人)は、「人は夜に悩む。眠れないとき、誰かに話を聞いてもらうのは大切なポイント」「子どもたちの『死にたい』という声は『死にたいほど苦しいから助けて』というサイン。しかし、大人たちは口封じしてしまう」「人は人を求めている。人はつながりがないと生きられない。自殺しようとしている人の自宅にスタッフと向かったら、『来てくれたのね。3人も来てくれた。独りぼっちじゃない』と思い直してくれたこともある」と話しました。
NPO法人「白浜レスキューネットワーク」代表、藤藪庸一さんは「牧師をしながら、自殺しようとした人を保護している。昨年は93人を保護した。現在は変える場所のない人々12人と自宅で共同生活を送っている。1999年以降、408人を保護した。保護した男性と話しているうち、帰る場所がないことが分かり、一緒に住むようになった」「日常のあいさつを心掛けてほしい。相手が元気なのか、調子が悪いのかがわかる。人間関係が豊かになった感覚が出てくる。あいさつの一声が励ましになり、ほっとさせている」と話しました。
NPO法人ほほえみの会(青森県五所川原市)理事長、藤林百合子さんは、精神保健福祉ボランティアの主婦4人で法人を立ち上げた思いを語りました。「自死遺族の悲しみは計り知れない。傾聴サロンで互いに寄り添い、支援できる人材を育て、地域の自殺防止力を養いたい。傾聴とは、怒りや悲しみを取り除くのではなく共有すること。怒りや悲しみは出し尽くさない限り、次に進めない。共有する役割を担うことで互いの絆に気付き、相手に力を与えることができる」と話しました。
宮城県栗原市市民生活部長の小澤敏郎さんは、栗原市が自殺対策に取り組んだのは2007年6月で、市議会一般質問で自殺率の高さを指摘されたことが契機だったと明かしました。栗原市の当時の自殺率は全国平均の2倍でした。対策会議を設置して「いのちを守る緊急総合対策」を策定し、5年間で自殺率を3割減らす目標を掲げました。最初に多重債務者専用の相談電話を始め、栗原市が市内の金融機関に1億円を預託して独自の融資制度「市のぞみローン」を創設しました。相談者の9割はローンを利用せずに問題を解決したといいます。市内の自殺者は24%減りました。
写真は、川崎市の岡本太郎美術館にて
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