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ヒストリー⑨始まりの前に・2002年2月,11月

行政は動き出したのか

行政もようやく自殺対策に動き始めます。

2002年2月には、厚生労働省が「自殺防止対策有識者懇談会」を発足させました。それまではうつ病対策だけで終わっていた行政の自殺対策でしたが、そこから一歩を踏み出したのです。

有識者懇談会はこの年の12月、「自殺予防に向けての提言」をまとめました。提言では、「自殺対策は緊急の課題であること」「自殺はすべての国民にとって身近に存在しうる問題であること」「精神医学的観点のみならず、心理学的観点、社会的、文化的、経済的観点等から多角的な検討と包括的な対策が必要であること」が謳われました。

さらに「自殺とは追い込まれての死であること」が明示され、「自殺は自ら選んだのではなく、『唯一の解決策が自殺しかない』という状態に追い込まれた」ものだとはっきり位置づけられたのです。

また、「未遂者、遺族へのケアが重要であり、自殺で遺された家族・友人等は、心に深い傷を負っているのであるからにして、彼らの対する支援は極めて重要だ」と指摘されました。

 提言が出た前月の11月には、自死遺児たちによる「自殺って言えなかった」がサンマーク出版から刊行されました。大きな反響を呼んだ冊子「自殺って言えない」をもとに、その反響、運動の経緯、遺児たちの座談会、実態調査などを加味した本です。

冊子の題名は「言えない」という現在形でしたが、この本は「言えなかった」と過去形にしました。

書名は、自死遺児たち自身が考え、ブックカバーのデザインも自分たちが被写体になりました。

NHKの清水康之ディレクター(現ライフリンク代表)は、本の出版に合わせ8分間の特集「支え合う自死遺児たち」を制作し、NHKの朝のニュース番組「おはよう日本」で全国放送されました。ここでも大きな反響を呼び、自殺対策は順調に進むかに見えました。

し かしー。
                
=続く  次回は、⑩2004年10月編「決意のNHK退職」です。

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