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きょう心にしみた言葉・2023年6月5日

最終的に、死ぬことができなかった一成少年は、一つの結論を出した。
自分は一度死んだことにしよう。
自分は一度死んだ。
そして、生き返った。
そういう設定にしようと思った。
自分は一度人生が終わった。でも奇跡的に生き返った。一度終わってしまった人生なのだから、この先の人生を進められるということだけで、全てプラスになる。この先がどんなにきつくても、いくら悲しくても、こう考えれば諦めることができる。
今こうして生きているのは、人生のアディショナルタイムなのだから。

「星屑物語」(ほしのディスコ・著 文藝春秋)

ほしのディスコさんは、お笑いコンビ「パーパー」のメンバーとして活躍する一方、その美しい歌声で多くのリスナーを魅了する「歌うま芸人」です。YouTubeチャンネルの登録者数は21万人を超えています。しかし、かつては、いつも「死にたい」と考えている子どもでした。「一成」はほしのディスコさんの本名です。「口唇口蓋裂」という上唇と口蓋が裂けた状態で生まれ、自分の容姿について悩み、周囲の言動に深く傷ついてきました。その苦悩の末にたどり着いた考えが「自分は一度死んだ。そして、生き返った。そういう設定にしようと思った」でした。そして、お笑いの楽しさを知り、お笑い芸人をめざしました。
「同じ口唇口蓋裂の人にも、何か伝えることができるんじゃないか」。そう考え、芸人として有名になって、自叙伝を出版することを夢に努力を重ねてきました。その夢がかなったのが、この「星屑物語」です。自分の生い立ちや日々の暮らしを赤裸々に描き、心ない言葉に傷つきながらも優しい言葉を返していく文章には心が揺さぶられます。コロナ禍で仕事を失う中、YouTubeに一曲の歌をアップロードしたところ、次々と動画が拡散し、世界が一気に変わっていく展開にも高揚します。
「今こうして生きているのは、人生のアディショナルタイムなのだから」
ドラマは、いつもアディショナルタイムに起きると教えられます。

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