㊶記憶の宝物
一年ぐらい前に買った『死は存在しない』(田坂広志 著) という本を久しぶりに書棚から出してきて読んでいます。
少し、本の中から抜き出してみますと……「量子真空」というものの中に「ゼロ・ポイント・フィールド」というものが存在していて、そこではこの宇宙の中で起きた全ての出来事が記憶されている。「現実世界」の「現実自己」は、死後にゼロ・ポイント・フィールドの中の「深層自己」に移り、エゴ・自我を持たない自己となって、その場所にずっと存在し続ける…というようなことが書かれています。平たく言えば、人は死んでも各人の意識は残り、別の空間でずっと生き続ける…ということ。「アカシックレコード」と同様のものに感じられますが、ゼロ・ポイント・フィールド…というのは何処にあるのでしょう…宇宙空間の何処か…なのかな・・・
この本はオカルト分野の本ではなく、大学の名誉教授という肩書きの人が書いた本です (光文社新書。サブタイトルとして「最先端量子科学が示す新たな仮説」と書かれています) 。
闘病していた友達の現在がまるで分からなくなり、人は死んだらどうなるのだろう…そんなことを考えていた時に、この本を手に取りました。
この本によれば、死んですぐの内にはまだ現世での意識・記憶を伴って存在しているけれど、次第に死ぬ前まで抱いていた不安や恐怖といったものから解放され、その結果「私という意識」の無い状態になるのだそうです。
僕は友達の「意識」と逢ってみたい。いま生きているこの世界では、直接逢うことは出来なかったから。
2022年に、カマキリの不思議な出来事が三度ありました。あの頃、友達がどのような状況にあったのかは分からないけれど、友達の浮遊する意識がカマキリという乗り物に乗って僕の所に来たのだ…と、かなり本気で思っています。
2021年1月、僕は通信教育による、作詩の講座の受講を始めました。その講座の中で、既に出来上がっているメロディーに合わせて詩を嵌め込む…という課題がありました。
僕はそのメロディーを聞いて、「死んでしまった友人の目から見える私」というモチーフが浮かんできました。何度もメロディーを聴いている内に自然に言葉が降りてきて、部分的にはかなり会心の出来となりました。それでも全体的には、随分無理をして言葉を当て嵌めなければならない箇所が沢山あって、“気に入った仕上がり” なんてものにはならなかったのですが…。この課題を提出したのは、2021年の2月でした。
友達から闘病の知らせがあったのは、それから二ヶ月後の4月。友達は僕の知らぬ間に mixi を退会していて やり取りが途絶えていましたが、一年と四ヶ月のブランクを経て、突然病気のことを知らせてきたのです。
結果的に、講座の課題のメロディーを聞いて浮かんできたモチーフは、闘病している友達と自分とのことを予見したようなものであったことが本当に不思議です。
この講座では、出来上がった作品をプロの歌手の人に歌ってもらってCDにすることが出来ます。
課題として提出した時には、最初のインスピレーションから少し離れて、内容に死を含まない、普通の友情の歌として完成させましたが、友達との思い出をどうしても一緒にパッケージしたくて、最初のイメージ通りの内容でどうにか詩を組み立て直し、CDにすることが出来ました。このメロディーを知ってから二年後の完成でした。
この作品には、例え友達がこの世にいなくなってしまっても、ずっと見守っていてほしい…という願いが込められています。
mixi を通じての僕とのやり取りを、友達は「自分の記憶の中の宝物です」 と言ってくれました。記憶は現世を離れていつまでも残るものなのかは分からないけれど、友達のその言葉は僕を恍惚とさせるぐらい、幸せな気持ちで一杯に満たしてくれる言葉です。
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