場をほぐし、価値観を解ぐし、関係性を祝ぐす
2021年12月11日(土)、隠岐諸島の看護師さんや保健師さん向けの研修会で講師(ファシリテーター)をさせてもらいました。
テーマは「心のスペースを空けることー忙しく働いている自分や周りをいたわり、関係をほぐしていくー」。一言でいえば「関係をほぐす」ことがテーマでした。
担当者との事前の打ち合わせから設定したものでしたが、偶然か必然か、ぼくがいま大切にしているテーマと重なりました。そこで、この研修会を踏まえながら「関係をほぐす」ことについて対話的に深めてみたところ、あるキーワードが見えてきました。
○収録日:2021年12月17日(金)
○聞き手:若柳翼
ほぐすからはじまる好循環
── まず聞いてみたいと思ったのは、打ち合わせでのどんなやりとりから、「今回は『関係をほぐす』をテーマにしたほうがよさそうだ。」と感じとったんですか?
澤:知り合いの看護師さんから依頼をいただいたんです。 そのとき聞いていたのは「コロナ禍もあり、いつも忙しない感じがしていて、同じ職場にいても、コミュニケーションがおろそかになってる感じがしてるんだよね。どうにかしたいとは思ってるんだけど。」ということでした。
「そうなんですね。担当者の話も聞いてみますね。」ということで、研修会の2週間前に打ち合わせの場をもちました。話を聞いているうちに明らかになってきたのは「職場をもっとよくしたいとは思いつつ、つい後回しになっている。」という困りごとでした。
がんばっているからこそ、一緒に働く同僚との関係づくりが後回しになってしまう。そこで、「関係をほぐす」ことが現状を好転させるきっかけになりそうだと思ったんです。
打ち合わせの時間そのものも心地よかったらしくて、「なんだか肩の力が抜けました。当日もこういう時間にしたいですね。」と言葉を交わしながらその日の打ち合わせを終えました。
── 打ち合わせの時間そのものが「ほぐされる」場になったということですね。同時に、澤さん自身が「ほぐれた状態」や「ほっとした状態」に魅力を感じているような気もしました。
澤:確かにそうですね。ぼくがここ数年間で学んだのは「なるべくいつも穏やかでいたほうがよい。ご機嫌でいたほうがよいし、ほぐれていたほうがよい。」ということだったんです。
それは例えば「オンの時間もオフの時間もどちらも大切な時間なんだ」と心から思うことだったり、「スマホを見ない時間や人と会わない時間もそうなんだ」ということをジャッジせずに受け入れることだったりしました。「何もしない」時間の尊さを実感したんですよね。
自分らしいバランスを見いだすために始めたことだったんですが、しだいに「これは皆さんのためにも役立てるかもしれない」と思うようになっていきました。
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何もしない時間の尊さ
──日常では「がんばる」モードでいるからこそ、その対(つい)として「ほぐす」モードが大切なんだと感じたんですね。
澤:「対」という感覚はとても大切だと思っています。常に「ほぐす」でも常に「がんばる」でもなく「両方とも大切なんだ」ということを大切にしたいと思っているんです。
同時に、「すでにがんばっている」とも感じています。「もっとがんばれ」と後押しするよりは、「ほぐす」時間や「立ち止まる」時間、「何もしない」時間をとり、物理的にも心理的にもスペースを空けてあげたほうが、自浄作用が働き、循環が良くなると信じています。
世の中的に「がんばれ」モードが強いからこそ、なおさら「ほぐす」「立ち止まる」「何もしない」を意識的にとっていきたいですよね。実際、研修会では「サイレント・ウォーク」の時間をとりました。何も持たず、のんびりと歩く。ただそれだけの時間です。それだけなのにとても豊かな時間なんですよ。
▷「何もしないことは最高の何かにつながるんだ。」と教えてくれたのはこの映画でした!
循環はデフォルト
──「循環」という言葉が新たに出てきましたが、循環をデザインしていくことが澤さんがこれからやっていきたいことなんですか?
澤:当たり前過ぎてなかなか気づけなかったんですが、自然界の営み的には「循環することはデフォルト」なんですよね。そうであるならば、自分や社会がよりよくなるには、循環がなめらかになるようにデザインすることが大切ではないか。そう思うようになりました。
──「ほぐす」で完結しているのではなく、自分らしく、その職場らしく、その地域らしくエネルギーが流れ、必要なら変化していく。循環をおこしていくための「ほぐす」なんですね。
澤:まさに。後日、研修会の感想を送っていただいたんですが、ひとつひとつから温度感を感じたんです。研修のときに感じていた温度感と一致していて、きっと相互にエネルギーを交換しあう場になっていたんだと、読みながら元気をもらいました。
──澤さん自身もほぐされていたんですね。「ほぐす人」と「ほぐされる人」のように関係が固定されず、お互いにほぐしあい、ほぐされあっている。その場にいた人同士でエネルギーの循環がおきていたんですね。
澤:ぼくもひとりの参加者なんですよね。さらにいえば、お互いでほぐしあうことによって、この場に参加した人が別の誰かをほぐす可能性が開かれる。個人的には、波紋が広がるように、そうした連鎖をみすえながら場をつくりたいと思っています。願いや祈りに近いかもしれないですが、これからもこだわっていこうと思います。
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