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その町を訪れるのに
醤油一本あれば十分だ。
この年末年始、とても気になる醤油に出会った。岡本醤油のだし醤油。一緒に旅した友人からいただいたもので、聞けばそれは大崎上島町からやってきたそうだ。
大崎上島町は遠い町だった。物理的にではない。「いつか行きたいね」と思っていたけど、その「いつか」がなかなか埋まらないという意味で、遠い町だったのだ。
その距離が醤油一本で一気に縮まった気がする。煮こみ料理での美味しさに魅せられ、気づけば「岡本醤油」と検索していた。
岡本醤油醸造場のことを取材した「職人醤油」の記事は以下の文章からはじまる。
醤油づくりを最も愛しているつくり手、そう聞かれたら岡本さんの名前をあげたいです。ただ、広島県といっても大崎上島はフェリーでしか行けません。昔は島観光のついでに醤油蔵見学に立ち寄られる方もいたそうですが、今では岡本醤油を目指してフェリーに乗る方が多くなってきているそうです。
https://www.s-shoyu.com/kura/okamoto
わかる。ぼくも岡本醤油を目指してフェリーに乗りたいとうずうずしているひとりだ。
さらに調べたら、どうやら醸造場の見学もできるらしい。「私もまだ行けてないんだけど、醸造場が微生物ですごくいい雰囲気らしいよ笑」。醤油をくれた友人の一言がたまらない。
つまりそういうことなのだ。あれもこれもいらない。その町を訪れるのに必要なのは、一本の醤油なのだ。