HAYATOSUMINO CONCERT TOUR2022 “CHOPIN,GERSHWIN AND…”あとがき
配信期間が終わってしまった。
実は1番最後が1番まともに聴けた気がする。
その理由を挙げると
現実的に哀しいかな、まず平日は連続でゆっくり配信を聴いていられる時間が取れない。
そういえばここのところずっと夜はワンオペだった。(というには子供もそれなりに大きいが)
また個人的に、角野さんの終演後のtweetが気になってしょうがなく、
その内に体調を崩されてしまったり。
心配な数日を過ごしたが、
先日、笑顔と共に復活をされ
更にはラボでガーシュウィンのコンチェルトinFについてたっぷりと語ってくれた。
それがめちゃくちゃ楽しかった。
それで私も本当にホッとした。
しかも配信終了のこの日
暴れたい盛りの息子が20時に寝落ちしてくれた。
もう奇跡としか言いようがない。
家事も早々に片付け、「今日だけは許してくれ」とひとり部屋にスピーカーを持ち込んで、明かりを落として没頭した。
最初から最後まで通して聴いて、拍手もした。その音を出来るだけ心に刻み込んだ。
特に感じたことがあった。
以下は私の完全なる妄想話である。
本当にここだけの話である。
彼は謙虚だと言われる事が多いけど、私にはそれとは違った意味で、本当に謙虚と言うか、真摯な方なのだなとこの公演で感じた。
YouTuberというイメージ。
音大卒ではない、音楽1本だけじゃないイメージ。
時にはピアニカやカホンやトイピアノを駆使しちゃうイメージ。
一般的には異色、異端かも知れない。
そしてその色眼鏡でショパンコンクールの彼を聴いた方も少なくないだろう。
けれどその時彼が目指した演奏は正統派だった。
私はそこに心底惚れた。
彼は自分がやろうとしてることを信じて、本気で今の音楽シーンが迎えている状況に向き合ったのだ。
音楽家と対峙するのではなく、音楽家そのものになって演奏する。
この事がクラシックを遠ざけてきた人達を多く惹き付けていると思うし、間違いなく私もその内のひとりだ。
これは簡単な様でいて実は難しいのじゃないかと思う。
自らが音楽が楽しいと思う気持ちがないと実現できないものなのじゃないかと思う。
心から楽しむ事。
大人になると本当に難しいのだ。
また以前彼は「長く音楽家を続けて行きたい」と語っていた。
ファイナルの配信を見る直前に、
ガーシュウィンの生涯を描いた「アメリカ交響楽」を見た。
定められていた運命だったのか、そして彼はそれを知っていたのか、溢れる才能を輝かせながら「時間がない」とばかりに駆け足にその人生を走り抜け、若くしてなくなってしまう。
ガーシュウィンの人柄や歩む道が、彼に重なる部分が大いにあり、当時思いもよらぬ数々の仕事をこなす彼が、まるで生き急ぐかのように見えてしまった。
しかし、違うのだ。
彼は生き急いでなんかいないと私は思った。
今回のコンチェルトinFのお陰だ。
この曲は本当に演奏者によってイメージが違い、オーケストラの部分だってリズミカルだったりそうでなかったり
逆にその演奏者の色を出しやすい楽曲に思えた。
私は安易だった。
かてぃんさんならきっとオケすらもアレンジしてジャズ感増し増しの演奏で来るだろうと勝手にイメージしていた。
(ご本人が挙げて下さったプレヴィン盤を聴いても、クラシックは大事にしながらそう来るかなと。。)
けど違った。
後のラボでも語られていたが、
ツアーで披露されたのは
ガーシュウィンの、「きちんと認められるような協奏曲を世に出したい」との思いを汲んだ、正統派のinFだった。
※ピアニカはオリジナルだが
凄いと思った。
音楽の事は本当に素人で私がこんなことを語ることすら許されるのか分からないけれど、楽曲にも、聴衆にも真摯に、確実にこの曲を演奏することを選んだのだと私は感じた。
もし生き急ぐのならもっと違う演奏を目指すような気がする。
ふわふわしてたり、気を許せる相手だと少年みたいだったり、忘れ物が並みじゃなかったり。。
先の事や余計な事は余り言わないため
掴み所がないようにも感じるが
根底では本当に彼は着実さを大切にしていると思った。
現在の人気ぶりの中で、下手したら目的や自分を見失ってしまいそうな中で、彼は周りのたくさんの要望に応えながらも、いつもその先と足元をちゃんと確かめながら歩いている気がする。
「いつかピアノ協奏曲を書いてみたい」
珍しく彼が語った確実な夢である。
語り口から、今すぐにでも書きたいというものでなく、ゆっくり時間を掛けて、これはというものを仕上げたい、そんな風に聴こえた。
これだけで本当に幸せな気持ちになる。
何年後も彼はピアノを弾いてくれている。
その事が分かったからだ。
角野隼斗というピアニスト。
カッコ良くて、才能もあって、時代にも乗っている。
それだけならこんなに心は惹かれない。
彼の華やかな活躍の芯には、音楽に対する真摯で真剣な姿勢がいつもある。それだけ音楽が大好きなのだ。
だからこそ、音楽家や音楽に精通したファンや、私みたいな初心者まで心を掴んで離さないのだと思う。
彼はきっと数十年後も同じように笑顔を見せてくれるはずた。
「音楽って楽しいんだよ!」
そう言って見聴きしたもの、味わったものをまた素晴らしい音楽に変えて、新たにその魅力を届けてくれるだろう。
彼の行く末のスケールが大きすぎて
いつか私はそのレールから降りてしまう日が来るかもしれない。先の事は本当に自信がない。でも、それでもいい。
今はとにかく、彼の音楽が、ピアノが楽しくてしょうがないのだ。
その日を1日ずつ、楽しみながら、ゆっくりと重ねていけたらと心から願う。