温泉と真珠 (ハンガリー・ブダペスト)
ブダペストに行こうと思ったのは、温泉目当てだった。
肩まで存分に湯に浸かりたい!その思いだけでフライトを取る。一応3泊4日の旅だったが、初日はほぼ夜中に着いたので実質自由な時間は3日ほど。
まず初日は、早速温泉に!こちらだと スパ(Spa)と呼ばれている。
日本の温泉をイメージしているとだいぶ違う印象を受けてしまうと思うのだが、水着持参で温めのお湯にゆったり浸かるのが、ヨーロッパ流のスパという娯楽である。場所にもよるがお値段もリーズナブルではない。
ぬるい湯だけでなく、サウナに入ったり、飲み食いしたり、泳いだり、寝る場所もあったりするので、人によっては1日過ごす人も。これが海外のスパである(と、理解している)。
ちなみに、ベルギーにもある。
わたしはまず初日にホテル近くのスパを訪れた。
そこを選んだのは、何を隠そう女性限定の日があるからである。
そう、スパは一般的に混浴なのだ!
でも混浴なだけで混雑度が上がるし、せっかく安らぎにいくのだから女子だけのほうが気が楽で良い。
なので私が滞在する間にレディースデイと被ったのは幸運だった思う。
結論から言うと、私は非常に満喫した。非常に。
朝の10時にインして、夕方の17時に出た。
ほぼ1日過ごしてしまった。
そのスパはドナウ川沿いに位置していて、建物の見た目からはあまり大きく見えないのだが、中に入ると「アラマァ」というほど広い。
左に行くと、プールとWellnessと呼ばれる温水エリア、右手にはいわゆるお風呂コーナーがある。
私はとにかく今回の旅のメインは温泉だったので、持ち物に抜かりなかった。
水着、ビーチサンダル、水泳用のゴーグルと帽子、タオル、そして1日過ごす想定でいたのでお昼ごはんのパンも持参した。
水着に着替えたら、まずは早速お風呂コーナーへ。受付でもらったリストバンドをかざして中へ入っていく。
中には、合計で5つのお風呂とスチームサウナがあった。
真ん中の風呂が一番広く、まずそこに入ってみる。このスパは別名Turkish Baths、日本語で言うトルコ風呂である。
その名の通り、天井は高く、ポツポツと色がついたステンドグラスで覆われていて可愛らしい。
一番広いその中心のお風呂で、みんな思い思いに過ごしていた。
ブダペストではこのスパが一種の交流の場所だと、どこかで目にした。たしかに、観光客の中に玄人らしき地元のマダムもいる、気がした。
連れなのか、ここで出来た友達なのかは分からないが、熱すぎないお湯の中で、なんとなく揺れたり、腰を掛けたりしながら皆話している。
中には互いにマッサージをしているマダムたちも。その光景を見て私は、日本の銭湯と全く同じだな、なんて思いながら観察する。
日本でもよく銭湯に行っていたが、マダムたちがよく肩を揉み合っていた。
やはり人間、身体に疲れが溜まったり痛みがあるときは湯に浸かるのが一番なのである。
メインの真ん中の浴槽はぬるめの温度に設定されていて、他の3つは28度〜33度など、さらにぬるいどころか下手したら身体を冷やしてしまうようなうな温度であった。
しかし、残りのひとつがなんと・・・・42度!
足先を入れたときの私の喜びを、ここで表現することは難しい。
ほぼ狂喜乱舞で浴槽の中へ。・・・・天国でしかなかった。
42度の湯につかれる場所が、この大陸にあるとは。夢見心地とはこのことであった。
ヨーロッパ生活で冷え切った私の身体はこれを欲していたのである。
身体が芯まで温まるのがわかる。
この風呂の発見をしてからというもの、私は42度の風呂→28度の風呂→外気浴を何度か繰り返した。そしてたまに、真ん中の広くてぬるい風呂で天井を仰ぎながらゆっくりする。身体が熱くなりすぎたら、気分転換にプールで泳ぐ。疲れたら休憩スペースで寝る。お腹が空いたら買ってきたサンドイッチを食べる。
こうやって身体が求めるままに行動していたら、気づいたら夕方だったのだ。
旅行先でこんな過ごした方をするとは。ブダペストに来たのにまだ橋しか渡ってない。
でもこれが私の予定通りで、完璧な1日であった。
ちなみに夕ご飯は、宿の近くのベトナム料理屋で麺をすする。ハンガリーにきたのに?と思うかもしれないが、風呂上がりなのでそういう気分だったのだ。人間なんでも本能に従ったほうがよい、と信じている。
リーズナブルなのにとても美味しかった!!
本当はビールが飲みたかったのだけど飲めなかったのでコーラで我慢。
予定外のことがひとつ、その後にあった。
ホテルで仲良くなった子達に、ブダペストの夜の散歩に誘われたことだ。
ひとつ返事でいいよー!と言ったものの、温泉で完全にスポンジ状態になっていた私は正直行くのがめんどくさくなっていた。
しかし約束を破るのは日本人として良くない・・という謎の使命感にかられ、しぶしぶ目的地まで赴く。
歩いても行けたができる限り疲れたくなかったので、まぁ私もう大人だし、というこれまた謎の名目でタクシーに乗る。
約束の場所まで送り届けてもらい、一歩足を踏み出したら、
その光景に一瞬たじろぐ。
目の前には、白く巨大な教会があり、美しく光り輝いていた。
そして更にドナウ川のほうに身体を向けると、暖かいオレンジ色で照らされた、とんでもなく美しい国会議事堂が佇んでいた。
この見渡す限りの夜景の美しさに思わず言葉を失う。
この街の別名である「ドナウの真珠」って、適当に読み流していたけれど、真珠って本当にふさわしい表現かもしれない。美し
さにため息ばかり出る。
スポンジのわたしを連れ出してくれたマレーシア人とオーストラリア人の友人たちに感謝しながら、そのあと皆でホテルまで歩いて帰った。