桜花の鬼姫 序章 桜花の離別。

桜花の鬼姫 

序章: 桜花の離別。

 桜舞う季節。それは、出会いと別れの象徴でもある。

着物を来た女性が、桜の木にそっと触れる。

「大獄丸が残した噂に、日の国以外からの妖怪が襲い掛かるでしょう。私があの人の転生した魂を護るために、封印されます。いいですね?」

 丘にある桜の木に、鬼女。桜花美紗が、己をここに封印しろと僧侶に頼んだ。

 それは、二千年先の未来を守るために。遠い遠い過去からのメッセージ。

「はい。仰せのままに」

 着物を来た。女性の長い髪が、桜風に流され、乱れていく。

 そして、愛おしそうに大切な人と過ごした日々とこの世界を眺めた。

「美紗様。あまり、目に焼き付けていては、過去の思い出に流されてしまいます」

「ええ。そうですね。人の世は、移ろい。滅びと転生を繰り返される。ですが、その日常で生まれた情愛や怒り、憎しみ、恨みといったモノも時を超えるでしょう。もしかしたら、妖怪の多くは、人の恐れや恨みと言った昇華しきれていないものが生み出されているのかもしれませんね」

 長い髪を右手で押さえて、彼女は桜の木に振り返り、手をそっと添える。

「では、お願いします。今が過去になったとしても。未来という今を失わせないために。私は眠りましょう。あの人に出会うその日まで」

 美紗と呼ばれる女性は、後に鈴鹿御前という名で知られる鬼である。

 

 とある地方では、羽衣伝説として。

 とある地方では、悪鬼の鬼女として。

 そして、ここにいる彼女は、愛する人を護るために、二千年もの長い時を桜の木に封印された。

これは、桜花の鬼姫と謂われた。

鈴鹿御前―桜花美紗。

吸血鬼の幼馴染吉村沙緒。

生まれ変わった秋葉駿。

三人の妖怪ハンターの物語である。

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