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PFAS問題と"安全な飲料水"の入手方法

有機フッ素化合物のPFASを1週間程度調査してみたので記事にしてみました。


📝PFAS総合

  • 「PFAS」・・・ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances)の略称であり有機フッ素化合物総称

  • 「強力な化学結合」・・・炭素 - フッ素結合(F - C)のため分解されにくい

  • 「多種」・・・PFASはOECDの2018年の定義では4730種あり、2021年の定義変更では10776種の化学物質が分類され、アメリカ環境保護庁のデータベースには約14735種が分類されています。すべてのPFASに毒性があると示されたわけではありません

  • 「よく取り上げられるPFAS」・・・PFASにはPFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)と呼ばれる有機フッ素化合物があります。PFOA、PFOS、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)は日本を含む多くの国で規制済みですが、代替としての化学物質であるGenX、PFBS、PFNAなどもよく取り上げられることがあります。

参考:P5 https://www.env.go.jp/content/000242270.pdf
P3,4 https://www.env.go.jp/content/000242267.pdf
  • 「国際条約で規制されたPFAS」・・・現時点でPFOA(廃絶)、PFOS(制限)、PFHxS(廃絶)の3つが規制されています。PFOAなども含まれるグループ、長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)は2025年に(廃絶)になる予定です。LC-PFCAには、PFOAが該当しますが、既に規制済みで、それ以外で代表的なものはPFNA(ペルフルオロノナン酸)になります。
    PFOS、PFOAは、有害性のほか、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という特性があることから、環境への排出が継続された場合の将来への影響を未然に防止するために、 国際条約や法律により製造や輸入が禁止されました。
    https://www.env.go.jp/content/000242834.pdf(P3,4)
    PFOS、PFOA、PFHxSが禁止になると、その化学物質の特性に似た代替物質が使われる事になります。代替物質リストは以下で確認する事ができます。
    https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf(P61~)

  • 「生物学的半減期」と「高い蓄積性」・・・PFASの生物学的半減期は平均4~5年とされています。特にPFOAやPFOSは体内に蓄積することで健康に悪影響を及ぼすことが示唆されています。

一部改変:https://www.env.go.jp/content/000239539.pdf
出典:P8 https://www.env.go.jp/content/000242270.pdf
  • 「分類」・・・PFOS、PFOA は炭素(C)の数が8個、PFHxS や PFHxAは炭素数が6個。PFOS、PFHxSの末端基はスルホ基、PFOA、PFHxAの末端基はカルボキシル基です。

出典:https://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2023/07/PFAS%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%952023%E4%B8%80%E9%83%A8%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88.pdf
P.2の画像を一部改変
※「ペルフル~」と「パーフル~」は、表記こそ違いますが同じ意味合いです
出典:https://www.jwrc-net.or.jp/docs/p-ken_report_rev.pdf P.5
  • 「主な用途・製品等」・・・

出典:https://www.env.go.jp/content/900539503.pdf
出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/kagakubusshitsu/anzen_taisaku/pdf/2023_03_01_01.pdf
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001058576.pdf
  • PFAS POPs条約規制動向

POPsは、長期間環境中に残留し、生物に蓄積しやすく、毒性を持つ化学物質の略称です。POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、こうした物質の生産、使用、輸出入、排出を規制し、段階的に廃止または禁止することを目的とした国際的な枠組みです。

参考:P27 https://www.env.go.jp/content/000242830.pdf
国内は化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)にて規制

2024年11月現在、国内のPFOS、PFOA、PFHxSは原則的な製造と使用が禁止されています。
なお、国内では、水環境に係る暫定的な目標値としてPFOS(ピーフォス)及びPFOA(ピーフォア)の合算値50ng/Lを設定しています(環境省、令和2年5月28日付)。PFHxSの暫定的な目標値は設定されていません

  • 環境中のPFAS汚染の原因

明確な因果関係があるのかはさておき、現実問題として、地下水、河川水の高い汚染情報がでた周辺の多くに…
・有機フッ素関連の工場
・半導体工場
・PFASが含まれる泡消火剤の使用が疑われる米軍施設
・PFASが含まれる泡消火剤の使用が疑われる航空自衛隊基地
・使用済み活性炭などの不法投棄
・産廃業者
が存在します。かなりのケースで当てはまります。

出典:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79612?page=2
出典:https://www.asahi.com/articles/photo/AS20240408000110.html
横田基地周辺 出典:P15 https://x.gd/CRIfZ
横田基地周辺 出典:https://x.gd/JfJdy
出典:https://c.okinawatimes.co.jp/index.html?kijiid=OTPK20211207A0027000100534001
普天間基地周辺 出典:https://ipp.okinawa/2019/09/21/mcasfutenma-pfas-map-2019/
嘉手納基地周辺 出典:https://ipp.okinawa/2019/09/09/map-pfas-contamination-kab/

その他の米軍基地におけるPFAS漏出、放出事故は以下。
https://x.gd/fuqd3

空自岐阜基地 泡消火剤が疑われるようです
大阪府高槻市 出典:P17 https://x.gd/CRIfZ
大阪府高槻市 出典:P20 https://x.gd/CRIfZ
岡山県吉備中央町。放置された大量の使用済み活性炭。450万ng/LのPFASが検出されたという。
出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014449821000.html

神戸市西区明石川水系 奥の新池排の水路で1900ng/L、堅田橋ではPFAS1300ng/Lが検出されたようですが、こちらも周辺に産廃業者やPTFEメーカーがあったりします。

  • 「代表的なPFASの特性 簡易まとめ」

※数値の中にはおおよその値を示すものもある事に留意

📝PFAS 人体に与える影響

出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/f20d395a397f1fcfd347a7d0c4588325a19f678f?page=2

C8 科学委員会(米国)は 55 の健康影響を調査し、2011 年から 2012 年にかけて、PFOA腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患、高コレステロール血症、妊娠高血圧症の 6 つの影響とおそらく関連していると結論付ける 4 つの報告書を裁判所に提出しました

<デュポン社のワシントン工場付近の住民が、数十年にわたって地下水を PFOA で汚染したとして同社を訴えた 2001 年の集団訴訟から生まれた研究(2013年)>
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3855507/

画像の「健康影響」はこの辺りから多くきていると思われます。
https://www.eea.europa.eu/publications/emerging-chemical-risks-in-europe/emerging-chemical-risks-in-europe
※EEA(European Environment Agency,欧州環境機関)2019年12月12日公開

EEAのサイトに示された画像は以下の複数の論文及び報告書が元になっているようです。
「米国国家毒性プログラム(2016年)、C8健康プロジェクト報告書(2012年)、WHO IARC(2017年)、Barryら(2013年)、Fentonら(2009年)、Whiteら(2011年)」など。

📝PFAS 生物学的半減期

出典:https://www.env.go.jp/content/000241758.pdf

生物学的半減期を仮に以下とすると

  • PFOA: 3.2年(1,168日)

  • PFOS: 5.7年(2,081日)

  • PFHxS: 8.5年(3,103日)※推定値

  • PFHxA: 数日程度(3日と仮定)

摂取日からの体外排出割合は計算上このようになります。

例えばメチル水銀や鉛の生物学的半減期はそれぞれ50-70日、30-60日となっており、長鎖のPFOA、PFOS、PFHxsは桁違いに半減期が長く、蓄積性が高い(体外排出性が低い)ですから、摂取しないことが何より重要と考えられます。摂取をできる限り低減するためには、どのような摂取物に含有されているか、また、そのおおよその量を知っておく事に尽きます。

環境中に現存するPFASの物理的な半減期は、生物学的半減期と比べ、さらに長く、数十年~数百年以上ではないかとされています。生物学的半減期は、細胞の入れ替えがありますし、肝臓・腎臓での代謝、尿・糞排泄など人体の機能に大きく依存しますが、環境中では、体外排出という概念がそもそもありません。

環境中では、化学反応、紫外線、酸化などによるPFASの分解をもって減少していきます。但しPFASは炭素-フッ素結合が非常に強固で難分解性ですから自然分解は極めて遅い傾向があります。そのような違いから、生物学的半減期よりも環境中の半減期が非常に長くなります。それ故、一部でフォーエバーケミカルと呼ばれたりします。

📝PFAS 発がん性分類

出典:https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/pfoa_and_pfos_faq.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001213119.pdf

現時点で、IARCの発がん性分類によると
PFOAはグループ1、PFOSはグループ2Bに分類されています。

📝PFAS 毒性データ

・PFOS

出典:P10 https://www.env.go.jp/council/09water/y095-18b/900430111.pdf

・PFOA

出典:P11 https://www.env.go.jp/council/09water/y095-18b/900430111.pdf

・PFHxS

出典:P6 https://www.env.go.jp/council/49wat-doj/y4911-19b/mat03.pdf

📝PFASをめぐる世界と日本の動き

出典:https://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2023/07/PFAS%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%952023%E4%B8%80%E9%83%A8%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88.pdf

関連情報(企業)

<デュポン>
テフロン製品を製造する時に助剤として使われる化学物質、ペルフルオロオクタン酸(PFOA、またはC-8)をワシントン・ワークスの工場から排出していたとして、2001年に地域の住民から集団訴訟を起こされていた米国の化学大手メーカー、デュポンは2004年9月10日、前日に原告側住民の代理人と和解に達した、と発表した。

https://plaza.umin.ac.jp/khh/pfcreview/040915.htm

<ケマーズ>
デュポン社のスピンオフ企業であるケマーズ社は現在、別のPFASであるGenX(ジェネレーションX)と呼ばれる代替化学物質を使用してPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を製造しています。GenXはPFOAに比べて環境中での残留性が低いように設計されていましたが、「残念な代替品」であることが判明しました。その影響は、置き換えることを意図した化学物質と同等か、それ以上に有害である可能性があります。

https://en.wikipedia.org/wiki/Polytetrafluoroethylene

<三井・ケマーズフロロプロダクツ>
「(従業員の)健康影響は報告されておらず、検査後の健康調査は実施していません。PFOAは製品の製造過程で2013年まで使用していましたが、その後は使用しておりません。懸念物質として自主的に置き換えていく認識を持ち、対応してきました。PFOAに対する環境規制はありませんが、工場敷地内においては一定頻度で調査しています。工場敷地内の調査データは開示していません」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231109/k10014251261000.html

<ダイキン>
「特定PFAS」のうち、ダイキンではPFOAを過去に製造・使用しておりましたが、2015年までに国内・海外の全拠点でのPFOAの製造・使用を廃止しております。PFOSとPFHxSは、過去から現在に至るまで一切製造・使用しておりません。

https://www.daikinchemicals.com/jp/sustainability/pfas/pfas.html

📝PFAS 人へのばく露量モニタリング調査

単位はng/mL。

出典:P13 https://www.env.go.jp/content/000242834.pdf

📝PFAS 環境省、都道府県及び水濁法政令市の調査状況

出典:P18 https://www.env.go.jp/content/000242830.pdf

📝PFAS 水道水 検出状況一覧

水道水のPFAS検出状況マップ(最大値)2020年4月~2024年9月

上記NHKのサイトから画像を転載します。2024年12月1日に公開されたもので、現在の最新情報といえます。過去に暫定目標値を超過していた地点のいずれも今回の検査で目標値を下回っているようです。水源を切り替えたり、廃棄されていた汚染物質を特定・除去したり、浄水能力を高めたりしたのでしょうか。

ここからは令和3年度の水道水からPFOS及びPFOAが検出された状況の詳細。各自治体などの定量下限値を超えた水道水の浄水場を示しています。
数値は、調査が行われていた場合に限ります。

参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014471451000.html

過去の給水栓水等の水質を知りたい場合は、
・「水道水質データベース」>管理目標
から確認できます(3年分)。
http://www.jwwa.or.jp/mizu/cle_up.html

📝PFAS 河川水・地下水等 検出状況一覧

週刊新潮(2024年8月15・22日号)の特集記事を参考にさせて頂きました。他にTBS NEWS DIGや朝日新聞DIGITALの調査、明石市議会議員の情報公開請求で発覚した情報(神戸市の西区押部谷の33000ng/L)なども含めました。
問題を避けたい、公開したくない意識が垣間見える自治体があるように思います。風評もあろうとは思いますが、知らずに地下水や湧水の誤飲といった事故を避ける為(…というか事後ですが)、公開最優先でお願いしたいと思います。

📝PFAS 無自覚に経口摂取していないかの見直しチェック

PFASの含有や性質を知りつつそのリスクを許容し摂取の判断をする分には、個人の自由の範囲内だと思いますが、知らないまま対策もできずに摂取してしまっていた…という事は、無いようにしていきたいですね。

  • ファストフードの包装容器

(2023年5月4日の記事)
アメリカ食品・医薬品局(FDA)によれば、高温で焼き付けされているフライパン加工に比べて、包装容器への使用は、低温で加工されているため、食品への移行が起こりやすいと指摘されています。
私が2021年に日本の大手ファストフードチェーン5社に聞き取り調査した範囲では、包装容器で有機フッ素加工をしていないのは、ドーナッツのミスタードーナッツだけです。ミスタードーナッツではパラフィン紙を使っているとのこと。その他のマクドナルドやKFCも使っているとの回答で、ロッテリアは全く回答拒否でした。モスバーガーはハンバーガーの包装紙には使っていないがポテトの包装紙に使用という回答でした。
アメリカのマクドナルド本社は2021年1月に、2025年までに包装容器のすべてのPFASの使用の中止を宣言しました。日本マクドナルドも2025年までには対応するそうです。

https://uedatakenori.com/692/

(2024年9月6日の記事)
ファーストフードの包み紙や箱には、耐水性や耐油性の向上を目的にPFASが使用されています。以前はPFOAが使用されていましたが、現在はフッ素フリーの材料や別のPFASである「6:2 FTOH」に置換されています。
このうち「6:2 FTOH」などを含めたPFASに対して、世界的なファーストフード企業などは脱PFASを宣言しています。

 https://x.gd/pktTp

調査結果(2021年5月の調査)
1)2度催促しても回答がなく、PFASを使った包装容器の使用が強く疑われる企業(7社)
日本マクドナルド、ロッテリア、フレッシュネスバーガー、ウェンディーズファーストキッチン、サブウェイ、ケンタッキーフライドチキン、ドムドムフードサービス
2)一部にPFAS使用しているが、使用削減および中止に向けて代替素材も含めて検討中という回答があった企業(1社)
モスバーガー(ハンバーガーには使用していないが、フレンチフライポテト用袋のほか、期間限定の耐油性BOX等使用)
3)PFASを含む包装容器は使用していないという回答があった企業(2社)
バーガーキング、ミスタードーナツ

https://www.fswatch.org/?p=1686

→PFOA代替品とされる物質の例

出典:P65 https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf
  • フライパンのフッ素樹脂(コーティング)
    ※「ダイヤモンドコート」「マーブルコート」「チタンコート」も基本的にフッ素樹脂加工です

「フッ素樹脂とは、主に炭素とフッ素から構成された高分子化合物でプラスチックの一種 です。元素の組合せにより、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)などがありますが、PTFE がフッ素樹脂の約 60%を占めているとされています。」
「フッ素樹脂について毒性学的に懸念されるのは、ヒューム(熱分解時に生じる粒子状生成物)の吸入による「ポリマーヒューム熱」という独特の現象である。樹脂の種類により異なるが、200℃以下~375℃に加熱したときの生成物を吸入すると発生する症状で、PTFEの場合は315~375℃で発症する。」
「1982年に新たに開発された燃焼生成物の毒性試験方法(NBS)により、PTFEの非常に高い毒性が報告された。その後の研究により、高い毒性を引き起 こす原因となるいくつかの重要なパラメータが示されている。特に、熱分解生成物の微粒子段階が明らかに関与しており、吸入される粒子サイズが重要な因子であると考えられる。」
PTFE:融点 327~342℃(327℃)

https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f02_fluorocarbon_polymers.pdf

(2024年9月6日の記事)
コロラド州では、2024年5月に「有機フッ素化合物の規制に関する法律」が成立。2026年1月1日以降、PFASを使用したクリーニング製品や調理器具などの販売、流通が禁止されることとなり、地域により厳格な規制が進んでいることがわかります。

https://packtimes.net/info/0708/

国際がん研究機関(IARC)による評価では、グループ3 (ヒトに対する 発がん性について分類できない)であり、安全性が高いと言われているPTFEですが、最近では、州レベルで調理器具として販売できないなどの法律ができるなど、動きがでてきています。

またPTFEの製造プロセスについて、均質で滑らかな表面を作る為に水相中でポリマーを分散させるのですが、そこに水と油の両方に親和性を持つ(現在ではPFOA以外のPFASである)GenXやPFBSなどが、乳化剤として用いられます。乳化剤以外にも、界面活性剤、安定剤にPFASが添加されている事も考えられ、一製品に使用される物質に対していちいち問い合わせたり特定するのも手間ですから、私は鉄やステンレス、セラミックコーティング製などを買うことが多いです。

確かにフッ素加工コーティングが便利であることに異論はありませんが、テフロンからは華氏464度(摂氏240度,240℃)で有毒な微粒子が放出されるといった見解もあります。であれば、必ずしも「適切に扱えば問題がない」とも言い切れなくなるので、それにより、調理器具として、使いたいか、使いたくないかの判断が以前と変わる事もあるかもしれません。

https://www.ewg.org/research/canaries-kitchen
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f02_fluorocarbon_polymers.pdf

→PFOA代替品とされる物質の例

出典:P63 https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf
  • 紙コップ

アメリカの研究チームが実施したファストフードの食品包装材についての調査では、2014年から2015年にかけて全米で400点以上のサンプルを調査した結果、紙コップからのPFASの検出は確認されませんでした。
調査の対象となったいくつかのファストフードチェーンにおいては、紙コップへのPFASの含有は一般的ではないと推測できます。

https://x.gd/TnKfm
  • デンタルフロス

「デンタルフロス使用でPFAS血中濃度上昇 より安全なデンタルフロスの選び方」
「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)というテフロン系の樹脂を使っている女性たちでは、不使用の女性と比べてPFASの一種であるPFHxS〈パーフルオロヘキサンスルホン酸 通称ピーエフへクスエス)の血中濃度が25%高かったのです。」

https://uedatakenori.com/729/

上記の引用元記事が詳しいです。自分の使用しているデンタルフロスをさっそく調べましたが大丈夫そうでした。

  • 金属メッキ

物性を向上させるために使用される金属メッキでも、PFOSは使用されてきました。ニッケルメッキやクロムメッキのメッキ液に含まれる添加剤がその代表例です。2009年の製造禁止を受けて新技術が開発され、装飾メッキでPFOSは使用されなくなりました。硬質メッキでは、使用量が3倍以上増えるものの、フルオロテロマースルホン酸塩が代替品として使用されています。さらに、非フッ素の代替材の開発も進んでいます。

https://x.gd/IPRN1

最近は食料備蓄に一斗缶保存される方も多くなってきています。気になるなら、ポリエチレン袋にいれてコーティングと食料が触れないようにしてみたり食品グレードの缶を探すのがいいかもしれません。

→PFOS代替品とされる物質の例

出典:P61 https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf
  • 魚、野菜など・・・

あまり情報はないですが、まぁ何ともいえない水産物の調査がありましたので一応、掲載しておきます。個人的に魚は気にせず食べますが、内臓部分は控えるようにしたり、貝類や生物濃縮のリスクを考えて大型魚の過剰摂取には少し注意を払います。

出典:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/busitu/kagakubusitu/attach/pdf/index-4.pdf

野菜においても、細かく分析されたデータは見つける事ができず、一般論的な考えでいえば、高吸水性の野菜や葉物野菜などに、より蓄積されやすいのではないかと思われます。とはいえ、一番の要因は、生育環境中の水や土壌の汚染度に依ると考えられます。産地(都道府県)や野菜種、また無農薬や有機といった栽培法で選んでも完全回避は不可能に近いので、どの程度の残留性があるかなど、まずはデータの蓄積からといったところでしょうか。

  • かつての含有していた製品の含有量(PFOAの濃度)
    2009年のUSEPAの調査では、2007年3月から2008年5月の間に購入され、重量で少なくとも0.01%のフッ素を含むことが判明した116の製品を対象に、PFOAの濃度が測定されました。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Perfluorooctanoic_acid

直接的、或いは、間接的(付着等)に口に含むものに再度、意識を向けて留意してもらえればゼロ摂取は無理でも低減にはなるはずです。

  • 居住地区

居住地区の地下水が汚染されていれば、調査すらされていなかった数年前や暫定基準値すらなかった場合は、地産の農作物や水道水や地下水から…と無自覚に多く摂取しがちになります。ようやく、暫定目標値ができ水道水汚染の監視は強化されるとは思いますが、河川や地下水に水質汚染がある状態というだけで慢性的なストレスなど悪い影響を受ける人もいるかもしれません。

📝飲料水中のPFASの削減、家庭内浄水

摂取しないことが何より重要と前述しましたが、飲料水経由での摂取低減情報を、以下の米国環境保護庁(EPA)の「PFAS除去のための浄水手段」からまとめました。
https://www.epa.gov/sciencematters/reducing-pfas-drinking-water-treatment-technologies

活性炭処理(Activated Carbon Treatment)

  • 概要: 活性炭は高い吸着性を持ち、PFASを含む有機化合物や合成化学物質を水から除去するために使用される。特に粒状活性炭(GAC)が有効。

  • 効果効果あり – effective

    • 長鎖PFAS(PFOAやPFOS)に対しては高い除去率を発揮するが、粉末活性炭では短鎖PFAS(PFBSやPFBA)には効果が低い。

    • 効果は炭の種類、層の深さ、流速、温度、水中の有機物質の有無による。

  • 粉末活性炭(PAC): 小粒子サイズの活性炭で、水中に直接投入して使用するが、GACほど効率的ではなく、高濃度のスラッジ処理が必要。

出典:P19,24 https://www.jwrc-net.or.jp/docs/p-ken_report_rev.pdf

イオン交換処理(Ion Exchange Treatment)

  • 概要: 陽イオンまたは陰イオン交換樹脂を使用し、PFASを水から取り除く。

  • 特徴:

    • 陰イオン交換樹脂(AER)は、PFASのような負電荷の化合物を除去するのに有効。

    • pH が高い(>10)ほど 除去率が低くなる

    • 高い除去能力を持つが、GACよりコストが高い。

    • 使用後の樹脂を再生せず焼却する方法が有望で、廃棄物の二次処理が不要。

  • 効果: :効果あり – effective

    • 除去率は選択した樹脂や運転条件によるが、使用開始後一定期間はPFASを100%除去可能。

出典:P29 https://www.jwrc-net.or.jp/docs/p-ken_report_rev.pdf

高圧膜処理(High-pressure Membranes)

  • 概要: ナノろ過(NF)や逆浸透(RO)がPFAS除去に有効。

  • 特徴:

    • NFは硬度成分を除去しつつミネラルを保持する特性を持ち、ROは塩分を含むほとんどの物質を排除可能。

  • 課題:

    • 処理水の約20%が高濃度の廃液となる。

    • 廃液の処理が難しく、個人利用の少量処理向き。

  • 効果: :非常に効果的 – extremely effective

    • PFAS(短鎖を含む)の90%以上を除去可能。

出典:P38 https://www.jwrc-net.or.jp/docs/p-ken_report_rev.pdf


📝PFAS 地下水と公共用水域

※公共用水域…河川や湖沼、港湾、沿岸海域などの公共の用に供される水域

出典:P2 https://www.env.go.jp/content/000242268.pdf

このデータを単純にみると公共用水域より地下水の方が汚染度が高いように感じられますね。

なお、令和元年度の(PFOS及びPFOA)、令和2年度の(PFOS及びPFOA)と(PFHxS)全国存在状況把握調査結果一覧は以下にあります。
https://www.env.go.jp/water/pfospfoa/post_123.html
令和3年度公共用水域及び地下水のPFOS及びPFOA調査結果一覧は以下。
https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf(P20~)

出典:P21 https://www.env.go.jp/content/000242830.pdf

上記の3つのデータ(公共用水域、地下水、給水栓水)をグラフ化してみると以下の画像のような感じになります。日本の浄水場のPFOS、PFOAの除去能力がぼんやりながら…わかるような、わからないような。

地下水・公共用水域は令和4年度、給水栓水は令和3年度。調査地点場所の偏り、無調査地点の多さ等により分かる事は限定的。あくまで目安として

📝水道行政

新型コロナウイルスへの対応に関して、国のリーダーシップを発揮できなかった反省に立ち、岸田文雄政権は感染症に関する国の司令塔機能を強化する方針を表明。この余波を受ける形で、公衆衛生に関する厚生労働省の機構が大幅に見直され水道行政を国土交通省に移管させる方針が決まりました(水質に関する業務は環境省に移管)。政府は今年の通常国会で法改正し、2024年度から新体制に移行する見通しです。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73500

📝PFOA、PFOS、PFHxSの水質と法的規制、関連指針

PFOS、PFOAの水質調査は現在、注目されていますが、今後はPFHxSの調査にも注目が集まると思います。現時点で、日本の水道水中のPFHxSに関するデータは見つける事が出来ませんでしたが、水環境中のデータは見つける事ができました。

環境省が実施した PFHxS の水質調査結果(「平成 30 年度化学物質環境実態調査」及び 「平成 31 年度化学物質環境実態調査」)によると、全調査地点中の9割以上の地点で PFHxS の検出が確認されている。また、各地方公共団体等が実施した調査においても PFHxS の検出事例が報告されている。

P19 https://www.env.go.jp/council/49wat-doj/y4911-19b/mat03.pdf
出典:P15 https://www.env.go.jp/council/49wat-doj/y4911-19b/mat03.pdf

詳細なデータは以下
https://www.env.go.jp/chemi/kurohon/index.html
から
「化学物質と環境」(年次報告書)> 「令和3年度版 化学物質と環境」> 「物質別調査結果一覧」>モニタリング調査>[25]ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)>水質データファイル からみる事が出来ます

国際的な規制に関する動き等を踏まえて、水道水の要検討項目※1に追加することが適当と考えられる物質について検討を行い、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)を新たに追加することとし、令和 3 年 4 月 1 日から適用する。
※1 要検討項目・・・毒性評価が定まらない、浄水中の存在量が不明等により、水質基準及び水質 管理目標設定項目の何れにも分類できない項目であり、情報・知見の収集に努 めるもの。

2021年4月にPFHxSについて水道法の要検討項目に追加

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000754589.pdf

補足になりますが、日本の水道水に関する基準や指針は、水質基準項目水質管理目標設定項目、そして将来的に基準化を検討する要検討項目の3つに分類されます。この中で水道法に記載され罰則があるものは水質基準項目のみです。水質管理目標設定項目、要検討項目は関連指針ですので、法的拘束力もなく、罰則もありません。

また、PFOS、PFOAは水道法には記載されていない水質管理目標設定項目に該当しますので暫定目標値がありますが、PFHxSは要検討項目ですので暫定目標値はありません

※水質基準項目(51項目)、水質管理目標設定項目(31項目)、要検討項目(46項目)は以下で確認することができます。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/kijun/s_kijun1.html

※PFHxSは、水道法に基づく指針である要検討項目とは別に、2024年2月に化審法による第一種特定化学物質(「残留性、生体蓄積性、および長期的な毒性」の3つの特性を持ち、環境や人の健康に重大なリスクをもたらす化学物質)に指定され、6月から、原則として製造・輸入・使用が禁止です(罰則あり)。過去の化審法における PFAS の製造輸入数量は以下の55ページからみることができます。
https://www.env.go.jp/content/000140359.pdf(P55~)

第一種特定化学物質はPOPs条約に基づいて、日本国内での実施措置として指定されています。このため、ストックホルム条約で規制されている化学物質が化審法で第一種特定化学物質として指定されることが多いです。

📝考え方

さて、ここまで、いろいろ調べてみましたのでこの問題をどのような角度でみるのかも考察してみます。PFAS問題は15年以上前からありましたが、報道が多くなったのはここ数年で、特にここ4~5年の間です。そして、ここ1~2年の間にようやく水道水のPFAS汚染が改善されてきているように思います。

ただし、よく問題視されるPFASはその半減期の長さから蓄積毒物の類であり、多くの人が無自覚に摂取し続けたはずで、どう考えても国、メディア、行政、水道局の対応は遅かった訳です。情報の周知、法整備、罰則すらなく、ただただ、長期間、浄水なしで水道水を飲んでいた人も多いでしょう。

現在の日本の暫定目標値である50ng/Lにしても法規制はなく、また安全であるという証明でもありません。米国環境庁は「最終的な最大汚染レベル目標」として、ゼロ(2022年時の暫定的な生涯健康勧告値(Health Advisory Level,HAL)PFOSで0.02ng/L、PFOAで0.004ng/L)で、現在の米国の「法的規制値」は、PFOA、PFOSそれぞれ4ng/Lとしています。グランドデザインと現実的な法規制値があり、日本の政治・行政とは比較にならない程フットワークが軽いように思います。

https://www.epa.gov/sdwa/and-polyfluoroalkyl-substances-pfas
※最下部のMCLG:1(単位なし)は
(GenX/10+PFBS/2000+PFNA/10+PFHxS/10)の割合(合計値)が1という意味

そうした中で、果たして暫定目標値内であれば「当然、安全である」と考えるのか、「いやいや…蓄積毒の類だからできうる範囲で出来る限り減らすべきである」と考えるのかで、各々、対処法が異なる事でしょう。

後者のように考える人を対象に…ではありますが、安全な飲料水の選び方も遅ればせながら書いておきました。

📝安全な飲料水

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