勝手にハロプロ楽曲大賞'19 第11-20位 〜そういう考え全然おしゃれじゃない〜

昨日は宮本佳林ちゃんのバースデーイベント、今日はBEYOOOOONDSの初単独ライブを堪能。ライブはやっぱり全くの別物ですね。一応このランキングも外部情報を書き連ねつつ、順位は音源を中心として(じゃないとアンフェアだしver違いとかめちゃくちゃになるので)評価しようとしてはいたんですが、一人イヤホンで聴く音楽と、送り手と受け手が共有する音楽って実は全く違うものなんじゃないかと思ってしまいました。優劣の問題ではなくてね。

ということで音源という楽曲の一側面と僕というつまらぬ個人の独断でお送りする勝手にハロプロ楽曲大賞'19。いよいよ第11〜20位の発表です。ここからは本当に僅差でどの曲もトップ5候補でした。まぁ全部僕一人の脳内の話なんですが。

第20位 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて/CHICA#TETSU

BEYOOOOONDSのグループ内ユニット、CHIKA#TETSUによるロマンチック地下鉄ポップス。しっかり者だけどいじられキャラの高瀬くるみを中心としたスーパー芸達者集団、雨ノ森川海に比べるとちょっと地味でどことなくギスギスした空気が漂っていた結成直後。春の風の如くそんなモヤモヤを吹き飛ばしたのがこの名曲でした。

清水信之氏によるエッジなシンセが鳴り響くメルヘンな編曲がたまりません。これを上位に持ってくるビヨヲタはかなり多いはず。

第19位 Come with me/こぶしファクトリー

2ndアルバム辛夷第二幕より、広瀬彩海フィーチャーのアップテンポなジャズナンバー。アプカミで公開されたドラムレコーディングも超絶でしたが、そのタイトなリズムにしっかりついてくこぶしも流石の一言。あやぱんの歌唱力ってどうも過小評価されてる気がするんですが、この曲の歌いだしでそのテクの確かさが分かるかと思います。この難解な曲を余裕を持ってクールに歌いこなすのを聴いてしまうと、苦境をパワーで乗り切るようなこぶしのイメージは、もう完全に過去のモノと言わざるを得ません。こぶしの進化について行かなければ。

第18位 Une idole/和田彩花

和田彩花のソロ名義初の楽曲。まさかのフランス語という不意打ちはあったけれど、どこまでもあやちょらしく、それでいて新鮮さもあり、上手いポイントをみつけたなという印象です。

アンジュになってからはその強さや鋭さが前面に押し出されカッコいいリーダーとして活躍したあやちょ。一方、打算の一切ない天真爛漫な人柄こそ魅力の核でもあったわけで、MVではそんな世界を不思議そうに見つめる好奇心旺盛な少女のような一面を垣間みることができます。

呟くように紡いでいく自作の詩には、今の彼女が立つ地平、すなわち一方的に消費されることをはっきりと拒みながらも己を表現する道を追い求める旅人としての姿が記録されています。

アイドルとして扱われる自分とアイドルとして扱う人々への疑問を胸にハロプロを巣立っていったあやちょですが、<Une idole >を巡る探究はやがて<和田彩花>とは何か?という問いへと接近していくでしょう。

第17位 帰りたくないな。/アンジュルム

和田彩花卒業のタイミングでつんくが書き下ろした、ちょっぴりセンチだけれど不思議と明るく、無性に泣けてしまうバラード。最近のつんく曲では胸躍るようなメロディやキレキレの韻踏みはあまり見られなくなった代わりに、1音1音の発声に対する偏執的なまでのこだわりが強化されているように思えます。

直接の歌唱指導や仮歌がなくともその精神はアンジュメンへと伝わっていてAメロではカミコパート"たくさん"にて件のmmが炸裂。脳を直接振動させられるようなハミングは性癖ど真ん中。これにて一発KO。

歌詞の内容についてはあやちょ自身の言葉を借りるのが一番良いでしょう。

卒業を意識させるような歌詞は1つもないのに、歌っているときにいろんな思い出が蘇ってくる。でも、悲しいものじゃなくすごく温かい感情になったから、それは本当にすごい経験をしたなと思いました

「ぁまのじゃく」からスタートしたあやちょのラストに相応しい、素直だけれど語りすぎない優しい曲です。

第16位 Be lonely together/アップアップガールズ(2)

アプガ(2)によるつんく連続プロデュース曲第4段。あ・い・し・て・るを一文字ずつ伸ばしていく点はモーニング娘。の「One・Two・Three」と全くおなじフレーズですが、きっちりと短調を降りていくOTTに対して、wowを挟んで半音ずつ下降していくこちらは字面にあまりにも不釣り合いで不穏な空気を醸し出します。このベタ塗りのような詞の載せ方はその後、「人生ブルース」において更にドラスティックな形で展開されるのですが、これは声を失ったからこそたどり着いた境地ではないでしょうか。

当たり前に語り、歌うことのできる状態、すなわち発話や歌を内側から捉えている状態から、自由に操ることができない異質な存在として、外側から捉えざるを得ない状態への変化。

それが元々あったリズムへのこだわりやEDMへの傾倒ともリンクして、言葉を一度<モノ>へと分解して音と等価に扱いつつ再構成するような作詞へとつながっているように思います。

この世の僕ら以外全部敵にみえた
それでもいいさ それでもいいさ
孤独は味方なんだ

芸術家が作品を産み出すのは恐ろしいまでの孤独な作業だと言われますが、この一節はそんな孤独を真っ向から肯定。音楽から引き離されそうな絶望的な状況においてなお、音楽を追い求める修羅の道への賛美にも聞こえます。

これは音楽そのもの、いかに孤独に陥ろうとそこにある音楽へと愛を贈ろうとする超人チックなラブソングです。

第15位 LOVEマシーン(アカペラVer.)/こぶしファクトリー

アカペラファクトリーこぶしがハロプロ史上最も多くカバーされてきたであろう楽曲「LOVEマシーン」に挑戦。イントロを生歌でやれるだけで鳥肌モノなのですが、リードボーカルのハマちゃんのどこか懐かしく女の子らしい声質がラブマと絶妙な相性の良さを見せます。のむさんベースのトゥルルトゥトゥルルもだんだんと癖になる。

そして一番のテンション爆上げポイントはオラつきまくりのイケイケさこラップ。

理想の二人から私らは
生まれてきたんだ待たしたな

2001年、すなわちLOVEマシーンの大ヒットで国民的グループへとなったモー娘。の黄金期の最中に生まれた彼女が、今こうしてハロメンとしてラブマを我が物顔で歌っている事実がイカし過ぎ。

第14位 トウキョウ・コンフュージョン/PINK CRES.

衝撃的なべーやんの使用方法で話題をかっさらったPINK CRES.のMVですが、何より曲が素晴らしかった。ラテンなギターやエスニックな二胡が響く攻撃的でボーダレスなトラック、ニュアンス力抜群のひかラップ、迫力満点のにへ。そして児玉雨子が繰り出した今年最強パンチラインがこちら。

そういう考え全然おしゃれじゃない
もうそういう考え全然時代じゃないわ

この台詞を他の誰かに言われたらちょっとムカッと来てしまうかもしれないですけど、雅ちゃんに言われればもうひれ伏すのみ。このかっこよさは何なんでしょうね。どんな服を着てもどんな場所にいても雅ちゃんは雅ちゃん。混沌とした世の中で己を失わない雅ちゃんこそが本物。

世の中に物申すのがダサイとか、誰かが我慢のすることによって回ってる社会とか、世の不条理を全部"オシャレじゃない"の一言でぶった斬れそうな強さに痺れます。

第13位 DREAM GIRL/中島卓偉

もし卓偉のバーイベで抽選にあたって、鈴木啓太に「卓偉の一番好きなところを教えて下さい」って言われたら、コーラスの美しさと答えます。次点は写真写りの悪さ。

これはそんなコーラスワークをこれでもかと堪能できる志向の逸品。多重録音により一人ゴスペルクワイヤーと化した卓偉が分厚いハーモニーを繰り広げる様は壮観で、ぜひアプカミで手拍子以外のレコーディング映像と、卓偉がひとりでボヘミアン・ラプソディやってるMVを配信してほしいものです。

ビタスイに提供した原曲も改めて聞くとなかなかの良曲なんですが、卓偉の天へと突き抜ける歌唱力は、その遥か上空を舞います。

第12位 シン・ジュク/道重さゆみ

打ち込みのカッティングギターが飛び回り、唸りを上げるエレクトロファンクロックナンバー。そんなジャンル多分ないけどね。大森靖子らしさ全開の詰め込みまくりの歌詞と、大久保薫第先生の跳ねまくりメロディラインに乗っかってさゆが完璧にスウィング。最強カワイイ。漂う無根拠でも確かな全能感。良いとこも、そうじゃないとこも全肯定して歩く。無敵に可愛いさゆが歩けば街まで光だす。新宿は交通の要衝。ここからどこでも行ける。どこまででも行ける。シングルとして売り出しても全く問題のない出来栄え。

第11位 GIRL ZONE/雨ノ森 川海

同じビヨーンズのCHIKA#TETSUが鉄道ネタのレールに沿いながらも伝統的な可愛らしいアイドル路線を行くのに対して、雨ノ森川海は激情的なパフォーマンスを武器とする現代ライブアイドルを志向します(もはやネーミングと楽曲が何もリンクしていないところは触れてはいけません)。

アンビバレントなエネルギーに満ちたこのユニット曲は地を這うようなベースリフで幕を上げると正拳突きを繰り返すような攻撃的な掛け声、バキバキのスラップが炸裂。その上で自意識の氾濫をビビッドな色彩で抉り出す大森靖子の歌詞世界が展開されます。

ってか、なんか、
ってか、なんか、
ってか、"なんか"のニュアンスわかってよ
女子力とかじゃないところで女を感じて よ

っとかね、僕のような鈍感な感性でもしっかり言葉に突き刺され、ハッとさせられます。女子力みたいな均一化された要素、誰かにとって都合の良い枠を押し付けられることへの嫌悪感。もっと歪で複雑な<私>は自分自身でも測りきれなくて、それでも湧き上がってくる"なんか"をそのまま受け取って欲しいという欲求。

その歌詞世界を即座に表現しうる雨ノ森川海の新人離れした実力にも驚かされます。持ち前の憑依力ともとのキャラクターそのものを使ってあらゆる"なんか"を爆発させるくるみん、エースとして場を持っていくゆは。体の小ささを全く感じさせずにダイナミックに踊り狂う鬼才桃々姫。同じくダンスに定評がありながら、ハスキーな地声とは裏腹の正統派の歌を響かせる前ここ。

そして何より常にとびっきりの笑顔でみんなの心のオアシスになっているみいみが、オアシス全部焼き払う勢いで豹変し、ドスの聴いた声で睨みを聞かせる様には度肝を抜かれました。

ただ、レコーディング時にはまだそこまでの凄みに達していなかったのでこの順位。これもぜひライブで体感して欲しい一曲です。

さて、ここまで書いておいてなのですが、ライブが素晴らしすぎて一人部屋でこねくり回した戯言なんか全く無価値に感じてきてしまったので今回はこのへんで。



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