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島田由美子さんのハルマキ

10年近く働いた銀座は、今でも大好きな街。
あちこち行きつけの店があったけど、もうずいぶんなくなってしまった。ひとりでもふらっと飲みに行ける店といえば、蕎麦屋と三州屋、そしてバーならもう、この店だけだ。新宿とか恵比寿とか、少し離れたエリアで仕事をしても、つい銀座まで行って、一杯飲んで帰りたいと思ってしまう。

銀座八丁目にある「ローゼンタール」。ワイン雑誌の編集者だった島田由美子さんがひとりで切り盛りする、ドイツワインと野菜料理のこぢんまりしたお店。
島田さんは、味のエッセンスを組み合わせるのが天才的だ。果物、和素材、スパイスなど、どの料理も、さすがワインに精通する人だなといつも感嘆する。
最近は果物のカプレーゼとか、あまじょっぱい組み合わせの料理をいろんな店で見るようになったけど、かれこれ20年くらい前から、島田さんは白和えに果物を合わせてみたり、味の研究者的なメニューをいろいろ提供していた。
そういえば広告の仕事で、「ヨーグルトを使った料理」を考えてもらったこともある。ヨーグルトに鶏肉を漬け込んで焼く料理だった。あれ、もう一度食べたいなあ。

このお店では、たくさんのおいしいレシピを教えてもらったし、笑ったり泣いたり、いろんな人と濃い時間を過ごした。30代から今まで、山あり谷ありだった私の人生のいろんなシーンに、欠かせない存在でもあるのだった。

春、京都で食べた島田さんの創作料理。いちごの白和え。山椒がよく合った。

「ハルマキ100本ノック」発売おめでとう


光文社から絶賛発売中!「ハルマキ100本ノック」

コロナ禍で、ローゼンタールも大きな危機に見舞われた。島田さんは、ワインと野菜、料理やスパイスなどのセットを通販するなどして、事態を乗り切ろうとしていた。私も都内への取材がなくなり、銀座からも足が遠のいていた。何度かこの通販は利用させていただいたが、いつ明けるともわからない不安な状況に、とにかく「お店が潰れませんように」と祈る思いだった。

その頃、同じようにこの店を愛する編集者の協力で、島田さんは雑誌「HERS」のウェブサイトにて、人気メニューであるハルマキのレシピの連載をスタートさせた。タイトルは「ハルマキ100本ノック」。これは今でも見られるし、具体的な作り方がYouTubeでも紹介されている。

今年は、コロナ禍もひと段落し、銀座のお店にも活気が戻った。

そして今月、この連載をまとめた一冊の本が、光文社から発売された。
これはなんとも嬉しいニュースだった。献本いただいた一冊がわが家に届いたときは、なんだか涙が出そうになった。

書籍発売のちょうど前日、新橋で撮影を終えたので、ローゼンタールに電話をして、ひとりで伺った。テーブルは満席で、私はおしぼりケースの前の小さなカウンター席へ。無理にでも入れてくれる店があるって、幸せだ。

デラウエアと万願寺のハルマキ

この夜私がいただいたのは、「デラウエアと万願寺唐辛子のハルマキ」。これは確か本には載っていない。デラウエアと万願寺だけ、ですよ。これが、想像の斜め上くらいおいしかった! ロゼワインとの相性も、ぴったりだった。
本には、ユニークな組み合わせのハルマキが目白押しだ。どれも簡単で、でも驚きがあって、飽きないおいしさ。このところわが家の冷蔵庫にも、春巻きの皮を常備している。

島田さん、出版おめでとうございます。
母と二人で泣きながら飲んだあの夜、島田さんのタコ踊りを見たあの夜、小さな子どもを連れたあの夜、たくさんの忘れられない夜をありがとう。また近いうちに、遊びにいきます!

※後日の追記。
HERSのHPは、「本でみてね」ということで、9月からは100本め以外はWEB上で見られなくなったそうです。
「デラウエアと万願寺唐辛子」のハルマキは掲載されていませんが、「デラウエアと獅子唐辛子」のハルマキは本書にあります。
「あの晩は、獅子唐辛子がなくなって、万願寺唐辛子で代用したのでした」と島田さんより。

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