ある覚者の話


「悟った」という状態がどのようなものかについて、
ある覚者と思われる人の文に次のようなものがあった。

「すべての存在との一体感を持つようになります。草木や花、小鳥や虫、石ころに至るまで、それは自分自身と何も変わらないのだと実感するのです。自分も他人もなくなり、すべてが自分であるとわかるのです。森羅万象、宇宙との一体感です。そのため、相手とのへだたりが消えますから、とてつもなく深い慈愛の気持ちに満たされてきます。自分がいないので、自分にまつわるいっさいの悩みも苦しみもありません。肉体の痛みは当然ありますが、肉体が痛むからといって心までは痛みません。肉体の痛みは肉体の痛みだけに終わります。自分がいないので、死もおそれません。自分はすでに死んで、もういないのですから、死などはあり得ないのです。肉体は死んでも、わたくしは、宇宙とともに永遠です。」

「私」というものが実際はでっち上げの幻想、あるいは物語であることを見切った状態であることがこの一文でよくわかる。ただ私が疑問に思う点はこの覚者は宇宙というものを神秘化している点である。彼は次のようにも書いている。

「人生とは、神が仕組んだ壮大なドラマなのです。ここでいう神とは、宇宙そのもの、宇宙の摂理ともいうべきものです。創造物そのものが創造者なのです。この宇宙、そして私たちの人生というものは、神の夢、神の作り出したイメージ、幻想のようなものなのです。」



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