【旅】旅の恥はかきすて、、られるのか?
ネパールを旅していた時、無知が故のこっぱずかしい体験をした。
ネパールはその時2回目で、インドと合わせて3ヶ月ほど滞在していた。
ネパール人の友人もいたし、同じように旅する仲間が日本人含め何人かできたので、心配事が何一つない平和な日々を過ごしていたのだ。
(まあ、この後しばらくして本投稿とは別の大事件が起こるのだが。)
しかし、観光もひとしきり終わるとさすがに暇になってくる。
ふと、ネパール映画を観てみたくなった。
ネパール語は理解できないが、インド映画同様、勧善懲悪モノが多いから映像を観ていたらわかるだろう、と休憩挟んで4時間の映画を観ることにした。
ネパール人の友人が、ネパールで映画を観るならこれを買って食べなきゃ!と勧めるので、
なるほど。映画といえばポップコーン!のネパール版?
と、張り切ってそのお菓子を買ってみた。
ものすごくまずかった。
めちゃ固くなったゴムのような食感に、土埃の味。
何コレ?
と責めたい気持ちを抑えてネパール人の友人に訊く。
その頃には、その土埃味のゴムを吐き出していた。
チベットのギーというお菓子だよ。
しれーっという友人に
ってチベットかい!
と超絶突っ込みたくなったが、不完全燃焼に終わる。
道すがらベンダーから買ったから古くてまずかったのかもしれない。
ちゃんとしたものではなかっただけかもしれない。
しかし、友人はギーを美味しそうに食べる。
全部あげた。
あんたが食べたかっただけかいっ!
とまたも突っ込みたくなる衝動に駆られながら、とにもかくにも、映画が始まった。
案の定、わかりやすいストーリー展開と、映画の5分の4は歌と踊りという構成。
途中、20分ほどの休憩になる。
そこそこ大きな映画館で観客も多かったので、混まないうちにとトイレへ急いだ。
この時はまだインド旅の前だ。
インドでの洗礼を受けていたら、今から話す経験なんて可愛いものだっただろう。
女子トイレの扉を開けると、まだ誰もいない。
やったあ、混んでなかった!
・・・ん?
そう、私の頭の中には日本のトイレのように個室が並びその前に皆が順番待ちするいう、女子トイレおなじみの光景を想像していた。
しかし、目の前はまるで禅寺の講堂みたいな伽藍堂。
遮る壁もドアもなく、とにかくスペーシー。
こんなにも悟りが開けそうなトイレは初めてだ。
と、感動している場合ではない。
はて。どうしたものか。
なぜか一度トイレから出てみる。
一応、女子トイレである旨を再確認。
今目にした光景が幻であるようにと祈りながら再度中に入る。
三歩進んで二歩下がるとはこのことだ。
それは幻ではなかった。
私はまるで近未来型人間か何かみたく、トイレの中の情報を目で見て脳内で素早く分析した。
壁にそって和式(というかネパール式?)便器が並んでいる。
トイレ全体の真ん中スペースが無駄に空いている。
隅に取ってつけた感いっぱいの簡素な手洗い場。
分析結果からどっち向きですべきかを素早く判断した。
間違いない。
壁を向いてすればいいのだ。
自信をもってしゃがみ、事が済もうという頃、ざわざわと大量のネパール人がトイレに押し寄せてきた。
彼女たちは壁に向かうとくるり反対をむいてしゃがんだ。
えーーーーーーーーーっ
私は恥ずかしさで顔から火が出そうになる。
つまり、入り口から入ってくる人と用を足している人が向き合うわけだ。
それはすなわち、入り口から入ってきた人は全員、私のお尻と向き合ったということでもある。
何とも恥ずかしい珍事である。
やれやれ。
旅の恥はかきすてとは言うけれど、今でもやっぱり恥ずかしい思い出である。
しかし、旅女子にとっては重要な情報だろう。
とにもかくにも、かくして、私はネパールの映画館のトイレで、ある意味悟りを開いたのであった。