【子育て】ヒゲと痛シャツ
11歳になる娘はヒゲが濃い。
生まれてからずっとヒゲが濃い。
いや、生まれてからずっとというのは語弊があるが、言いたいのはつまり、ヒゲがずっと濃いということだ。
この4行で何度ヒゲが濃いと言っただろう。
いや、数えないでもいい。
そんなことはどうでもいいのだ。
彼女以上に私が悩んでいるのにはワケがある。
私の方が本人よりも彼女の顔を見る機会が多いから気になって仕方がないのだ。
こんな話がある。
被験者の大学生が超いけてないTシャツを着て、周りの反応を見る、というアメリカで行われた実験の話だ。
あまりにもいけてないTシャツだったので、着ている被験者たちは恥ずかしさでいっぱいだった。
しかし、実験後、この『痛シャツ』に気付いていた人は実はさほどいなかったそうだ。
親になった今、娘が毎日洋服を並べてはどちらがいいか聞いてくるたびに私はこの話を思い出す。
そして、「自分が思うほど人は気にしてないから大丈夫」と言うのだが、その反面、私は娘のヒゲがどうしても気になって仕方がない。
ネットで検索すればいろんなことが書いてある。
剃れば解決するだろうと思われるかもしれないが、そんなに単純ではない。
子どものヒゲ問題は奥が深いのだ。
これから娘が気にし始めたとしたら、「人はさほど気にしてない」なんて言えない。
なにせ1番気になっているのはこの私だ。
ところが、先日娘と中3の息子のケンカを聞いていたらその悩みが一瞬で解決してしまった。
2人のケンカがクライマックスに向かった時、娘が息子に言ったのだ。
「この、ちょびヒゲ!」
すると、そのちょびヒゲは
「お前の方がヒゲ濃いくせにうるせえ。」
と言った。
気付いていたのは私だけではなかったようだ。
私は娘の反論を固唾を飲んで見守った。
「ちょびヒゲよりマシだからいい。」
娘はクールにそう言う。
なぜか誇らしげなのだ。
まさかのちょびヒゲ攻撃に兄は反論しなかった。
いや、できなかったのだろう。
彼らが言う『ちょびヒゲ』というのは、下唇の下、中央にちょびっと申し訳なさそうに生えている息子のヒゲなのだが、それが絶妙にマヌケなのだ。
兄を打ち負かした娘を誇らしげに思った瞬間だった。
いいぞ、娘。リアルに#Metooではないか。
その後、息子にちょびヒゲを処理してほしいと言われたことは言うまでもない。
ヒゲが生えてようと生えてなかろうとお母さんはあんたたちが大好きだよと伝えた私は、同時に、ちょびヒゲというあだ名を息子につけた張本人だ。
すまん、息子。
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