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【通信制高校あるある】レポートの締切日

冬の冷たい風が窓を叩く11月のある日、通信制高校の教室では珍しい光景が広がっていた。
普段は静まり返っている教室が、今日は活気に満ちている。
それもそのはず、この日は「レポートの提出締切日」だったのだ。

通信制高校では、生徒は定期的にレポートを課され、それが成績に反映される。
提出方法はオンラインで、期限までに専用のシステムにアップロードする形だ。
しかし、締切が迫ると、通信制高校の自習室やコミュニケーションスペースには「追い込み組」と呼ばれる生徒たちが集まる。
今日も例外ではなかった。

教室の隅では、佐藤くんがスマホに文字を打ち込んでいる。
彼は提出期限を「明日だ」と思い込んでいたが、実際には今日が締切日だった。
「嘘だろ!?」と朝一番でLINEを見て顔面蒼白になった彼は、大急ぎで学校に向かった。
カバンの中にはスマホと、コンビニで買ったエナジードリンクが入っていた。

佐藤くんは、必死にタイピングを続ける。
隣には友人の田中くんが座り、彼もまた同じくレポートと格闘中だ。
田中くんは、1週間前から取り組んでいたはずだが、「どうしても最後の感想部分が書けない!」と悩み、放置していたという。
「佐藤、ここどうやって書けばいいと思う?」と聞きながら、半ば泣きそうな顔だ。
佐藤くんは、「まずは教科書を読めよ」とアドバイスしつつ、自分の手も止めない。

一方、教室の中央では、少し違う光景が見られた。
髪をツインテールに結った森下さんが、なぜか楽しそうにレポートを書いている。
彼女は締切ギリギリになると「最高のアイデアが降りてくる」と信じていて、わざとギリギリまで作業を始めないタイプだ。
周囲の焦りがまるで他人事のように見えるのだが、その一方で仕上がる内容はいつも優秀。
「あ、これ名案かも」と言いながら、スラスラと書き進めていく姿に、周りからは「天才かよ…」とため息が漏れる。

時間は刻一刻と過ぎていき、教室には緊張感が漂う。
提出の最終受付は午後4時。壁にかかった時計の針が3時を指すころ、田中くんがついに完成した。
「やった!」と小さく叫び、提出ボタンを押す。
その瞬間、佐藤くんのスマホが突然フリーズしてしまった。

「マジかよ!」と声を上げる佐藤くん。
周囲の生徒も一瞬固まるが、すぐに森下さんが「ちょっと貸してみて」と駆け寄る。
「この状況でフリーズするの、あるあるだよね」と言いながら、手際よく再起動の操作を始める。「大丈夫、時間はまだある!」と励ましの言葉をかけ、佐藤くんを落ち着かせる。
再起動後、作業中だったデータが自動保存されているのを確認し、佐藤くんはようやく提出に成功した。

最終的に、全員が無事にレポートを提出できたのは午後3時56分。
ギリギリで間に合った生徒たちは、安堵のため息をつきながら、「次こそは余裕を持ってやろう」と言いつつ、次もまた同じ状況になることを心のどこかで感じていた。

通信制高校にはこんな風景が日常的に広がっている。
そして、締切日には毎回のように奇跡が起きる。
生徒たちは締切のプレッシャーの中でこそ最高の集中力を発揮し、一晩でレポートを仕上げるというスーパーヒーローのような力を発揮するのだ。

先生たちはいつもそんな生徒たちを見守りながら、「またやってるな」と微笑む。
通信制高校では、締切日こそが青春の1ページなのかもしれない。


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