お江戸2022の戦い
時は来た
政宗は迫りに来る年の瀬に思いをはせていた。
「日の本。足りぬ、目指すは世界じゃ!!」
一方、忍びの里の半蔵も政宗と同じ行く末を見ていた。
「日の本同士の争いなど笑止!世界にしか興味ござらん」
思いを同じくした政宗と半蔵、しかしこの世は乱世。
かたや「侍」かたや「忍び」手を取りあってとはいかない世界だ。
図らずもお江戸史上最強の強者同士の決戦!
お江戸2022ツイッタ決戦はこうして始まった。
政宗
うぇーい
ツイッタ地方で政宗が声を上げる
片手には酒、もう片手には犬を抱え。
全国にその名を轟かせた政宗の愛称は「うぇーい侍」
東に飢えた民が居れば駆けつけて「うぇーい」
西に病んだ民が居れば駆けつけて「うぇーい」
北に争いが起れば駆けつけて「うぇーい」
南に…「うぇーい」
日の本一の強者と後に語られるこの侍
実際には民に分け隔てなく接するがゆえ、民衆から絶大な支持を得ていた。
街を歩けば町民や子供にまで気軽に声を掛けられる様は、歴史書から受ける「強者」の印象とはかけ離れたものだった。
そんな政宗が「世界じゃ!わしは世界をとる!」と言ったとき、民衆達はまた始まったと半分冗談めかしに笑っていた。
そんな事は何処吹く風、
政宗はいつもと変わらず、やる事をやる。
そして日が経つにつれ、噂が広まって行く。
「うぇーい本気らしいぞ」「退路を断った」「船も造っているやしい」
「うぇーいは、本気だ!!」
お江戸ツイッタ地方の熱がじわじわと上がっていく。
そして…
「わしもやる!」
「私も!」
「ボクも!」
1人、また1人と歩く政宗の後ろには、名だたる侍から商人、果ては女子供までもが、続いて歩く。その数、数百、いや数千の群集だ。
その足音はお江戸を揺らす。
そして先頭を歩く政宗がビタと足を止め振り返る。
「ごくり」と唾を飲む音が響いてしまう程の静寂が訪れるのを待って、政宗は数千人の群集を見据え声を上げた。
うぇーい!
これが政宗と言われる侍だ。
半蔵
跡を残さず。
この半蔵と言う忍びによって度々歴史が動いている。
しかし、その姿を見たものは少ない。
お江戸では「おいなぷぅ」と言う謎の言葉が残されている。
富める者と貧しき者の差が大きく、貧しき者はいつまでも貧しいから抜け出せない時代。
「もうおしまいだ」
明日を見る事無く命が簡単に消えてしまう。そんな貧しき者の間で語り継がれた「おいなぷぅ」と言う言葉。
その謎を解く資料が残されている。
後に名だたる武将となった者の武家屋敷から見つかった文章はこうだ。
「明日の食い物もなし、命が今宵までと思うた夜半、物音もなく枕元に現れた大判に命救われし、おいなぷぅ。」
そう書かれた謎の巻物を現代ではこう訳している。
「命がつきそうな貧しい民に大金をそっと置いて行った者がいた。その大金の上に置かれた紙においなぷぅと書いてあった」と。
しかし、あくまでも憶測であってなんの証拠も残されていない為、半蔵とおいなぷぅとの関係は謎のままだ。
そんな謎多き半蔵が歴史の表舞台に現れたのが、このお江戸2022ツイッタ決戦だ。
始まりは悪名高い大名屋敷に放たれた1本の忍びの矢
「民を苦しめ私服を肥す者共へ
お江戸いや、全国の民衆を世界へ放つ
民衆は富み、主らは歴史の遺物となるであろう」
忍びの矢に貫かれた書簡にはそう記されていた。
大名達は怒り、町中に忍び狩りの手配書を立て、ついに首謀者が半蔵と知る。
それと同じくして民衆達は奮起する!
姿も知らぬ半蔵を称え「おいなぷぅ」を旗印に数百、数千の群集がお江戸の街を練り歩いたのだ。
忍びを滅する為立てた大名達の手配書が、民衆の心に火をつけ、更には名だたる武将達までもが「おいなぷぅ」しまじめてしまった。
大名屋敷から人は離れ、街にはおいなぷぅが溢れていく
そしてとうとう大名達は屋敷に引きこもってしまう。
お江戸中に響く数千の足音と「おいなぷぅ」の雄叫び!
ただ先頭を歩く者がいない群集はまとまりがない。
その様子を見ていた半蔵は暫く考えたのち、群集の前に姿を表す。
「半蔵どの!」
忍びとゆかりの深い武将が半蔵を見つけ声を上げると、数千の群集の視線は一斉に半蔵に向けられる。
「あれが半蔵様…」
ザワつく群集を見据え半蔵はぐいと覆面を下げ顔を出す。
そして静寂が訪れゆっくりと半蔵は民衆に語りかけた。
「おいなぷぅはやめて」
照れながらそう言った忍び
それが半蔵である。
一触即発
政宗が「うぇーい」
半蔵が「おいなぷぅ」
と数千の軍勢を引き連れ世界へと歩いていく。
行先が同じ2人
真っ向から出会ってしまうのも必然であった。
ザッザッザと数千の足音がピタリと止まる。
政宗の赤
半蔵の青
それぞれの群集が向かい合っている。
政宗にも半蔵にとっても世界への道に立ちはだかるものは全て払い除けなければならない存在だ。
政宗軍の武将が雄叫びを上げる
「うぇーい」
半蔵軍の忍びが悟られないうちに政宗軍を取り囲む。
誰かが小声で叫ぶ「おいなぷぅ」
こうなれば流血は避けられない、しかし両者の軍勢には戦になれない女、子供も多数いるのだ。
緊張が走る。
次誰かが動けば合戦が始まってしまう。
数千と言う人間が向き合っていると言うのに、呼吸の音さえ聞こえない静けさが続く。
仲間を守れずに何が世界か。
向き合う大将、政宗、半蔵の考えもまた同じであった。
総勢数千の軍勢を率いてきたのは、戦の為ではなく共に世界を見るためなのだ。
ここで仲間に傷を負わせ相手の軍勢の命を奪えば、それはもう目指したものではなくなってしまう。
しかし時代がそれを許してはくれない。
勝つか負けるかそれしか進む道がない時代なのだ。
ぐぬぬと政宗は考え半蔵に提案を出す、
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政宗、半蔵の提案は静けさを更に加速させた、1ミリも受け入れられていないのだ。
命のやり取りが必要な事を政宗も半蔵もよくわかっていた。
ならば!
1対1の対決だ!!
初めからわかっていたし、そうするつもりだった2人が同時にそう叫んだ。
明朝、1月3日。ツイッタ地方にて1対1の果し合いとする!
ついに最終決戦の始まりである。
後には引けぬ命のやり取り、行く先を同じくした群集を引き連れ世界を目指すのは政宗か、半蔵か、
「明朝まで互いに争いを禁ず」
そうしめくくり夜が更けていった。
裏切りと真実
「政宗殿お耳を」
明日の決戦を控えた政宗が耳にしのは、自軍に半蔵の忍びが紛れ込んでいるという内容だった。
戦の裏に忍びあり
政宗はニヤと笑うと
「問題ないうぇーい、我が軍の武将も半蔵軍に送り込んでます」
と言ってのけるとぐびぐびと酒を流し込む、明日の決戦の緊張がまるでない。
緊張感がないのは大将政宗だけではない、政宗軍の全員が飲み、食い、火を炊きお祭り騒ぎなのだ。
一方半蔵軍
「半蔵様、我が軍に見慣れぬ者が紛れ込んでおります」
鬼気迫る側近の報告に
「捨て置け、はなからわかっておる、それよりももっと火を炊け、酒と食べ物で体を温めておけ」
そういった後、様々な武器を1つ1つ丁寧に手入れをする半蔵、政宗軍とは違い明日の決戦に向けベストのコンディションを整えている辺り、真面目な忍びと言う印象だ。
夜はさらにふけ
政宗は酒樽を抱いたまま、半蔵は手入れ済の武器を身につけたまま眠りについていた。
そんな暗闇の中、両軍を行き来するもの達がいた、その姿は武将、忍びや女子供と様々であった。
何かが起きている。
それを確かめる時間もなくやがて朝が訪れた、決戦の朝だ。
決着
1月3日の朝
決戦の場に政宗、半蔵、両者の姿があった。
ついに始まった1対1の対決
今まで時折あった緩い空気はどこにもなく、ただ命のやり取りを前にした2人の大将のピリリとした緊張感だけが漂っていた。
強者同士、相手の力量は戦わずともわかっている
5分だ。よくて相打ちといったところか。
両者構えの姿勢をとったままピクリとも動かないのはそのせいなのだ。
時間だけが過ぎていく、両軍の軍勢も初めこそ同じ空気感を持っていたが、余りにもの動きの無さにあくびをする者まで現れた。
そして半蔵の小指がピクリと跳ねた
政宗はそれを見逃さない
政宗の眉が少し上がる
仕掛けるしかない
半蔵がそう判断した微かな動きが小指に現れたのだ
来る
政宗がそれを受け、刀に手をかけようとしたその瞬間。
昨日うぇーいと飲んでしまった酒が胃を喉を込み上げて来るのを感じる。
なぜあんなに飲んでしまったのか、それを抑えようとして政宗の眉間にシワがよる
来る
半蔵は政宗の1度上がった眉がギュッと険しくシワが寄るのを見て「この一手で全て決まる」と悟っていた。
まさに命懸けだ。
が、次の瞬間政宗が手を前に突き出す
何事か!
半蔵は混乱し最終奥義分身の術を使った。
すごい速さで動く半蔵の残像が1人、また1人と増えて行く
それを目で追う政宗「うぇぇぇ…」
限界だった…極度の二日酔いからの分身の術を、つい目で追ってしまい更に酔ったのだ。
何より今は優しく背中を撫でて欲しい、これまでか、半蔵お前は強い。
そう言って政宗が膝をつく。
半蔵は訳が分からず膝を着く政宗をみながら、ある事に耐えていた。
数年ぶりに出した奥義分身の術。
それはぐるぐるバット並に三半規管を狂わせる。
政宗覚悟!昨日手入れしたかばかりのピカピカの刀を振り上げ政宗に近づこうとするも真っ直ぐ歩けずバタと倒れてしまう。
立ち上がろうにもセカイがぐるぐると回り止まってくれないのだ、
策に溺れるとはこの事か…。
半蔵は死を覚悟する。政宗お前は強い…。
政宗、半蔵があと数歩でお互いの致命的な攻撃範囲に入るという距離で倒れている。
政宗は酒に酔い、半蔵は自身の技に酔った末の自爆だ。
それを見た両軍の猛者たちがお互いに、にじり寄る。
ついに血で血を洗う戦いが始まってしまうのか!
「なー言うたやろこーなるって」
「うぇーいとおいなぷぅやもんな……」
そう言い放った猛者たちは昨夜、両軍を行き来していたもの達だ、よく見ればツイッタ地方で有名な者ばかりであった。
「そやし、昨日の打ち合わせ通り両軍の人数で勝敗決めよ、」
群集が賛成とばかり足踏みをする
その音はツイッタ地方を大きく揺らした。
地鳴りとなったその音は引きこもった大名屋敷揺らす。
そして地鳴りは連鎖を続け各城をも揺るがした
名も無き者達がお江戸を日の本を揺るがした瞬間であった。
歴史的戦いはこうして一滴の血を流すこと事無く幕を降ろしたのです。
そしてこれからが始まりです!
お江戸は世界をとる!
政宗、半蔵から始まった思いは今
数千、いや数万の群集に受け継がれていったのです!
後書き
政宗、半蔵、そしてこの合戦に参加した猛者達
彼らは自慢の武器を振るうのではなく、愛でるのが好きな人達ばかりなのです、合戦で武器が欠けなくて良かったと半蔵は言ったとか、政宗は背中をかくのにちょうどいい武器を無くさなくて良かったと言ったとか。
お江戸2022ツイッタ合戦は一滴の血を流すことなく、勝敗が着いた合戦として今後も語り継がれるでしょう。
私はその端っこでこの世界が大好きになった1人です。
いつも楽しい時間をありがとう!そしてこんな妄想ダダ漏れなnoteを見てくださってありがとうございました。丸1日楽しく妄想させて頂きました!
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