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令和6年行政書士多肢選択式の解き方  行政法問42を素材に解説

以下の内容は、YOUTUBE動画と同じ内容です。
令和6年行政法多肢選択問42 解き方 本試験分析
https://youtu.be/WhGKSfDPoRw

1 行政書士の行政法多肢選択式問題は解き方がある

 行政書士試験の多肢選択式は、選択肢として用意されている多数の用語の中から文章中の空欄を補充するタイプの問題です。素材となっている文章は行政法の判例や制度の全体像を解説した文章(出典不明)が多いので、判例や用語の単純な知識問題と考えがちですが、実は試験委員側は、多くの受験生が見たことがない文章(例えば、地裁レベルの判決・最高裁判例の補足意見・受験生が学習していないであろう判例等)を素材にして問題を作ることがあるため、事前に覚えてきた判例のキーワードを思い出せれば簡単に解けるような問題ではない場合が少なくないです。制度全体像・基本用語・判例の事例・争点等が何だったかを知っていることを前提にしつつ、あとは読解力と日本語力で解くことが求められるのが特徴です。つまり、長文読解の法律版であり、空欄前後の文章に調和するように日本語を正確に使い分けて穴埋めする力が試されています。

2  令和6年問42を素材に行政法多肢選択式問題の解き方を解説

問42
では、ここからは、読解力と日本語選択を緻密に実践して解いてみましょう。
空欄アの直前は、「特定の公益事業の用に供するために、私人の特定の財産権を強制的に取得」することと記載されていますので、憲法や行政法で学習しているはずの「収用」という基本用語が浮かび、さらなるヒントとして空欄アの後に「代表的な法律として土地収用法が存在する」とあり、もろに「収用」という言葉が出てくるので、「収用」が入るとわかります。語群から探すと13の「公用収用」しかないので、これが入ります。

空欄イは2か所ありますが、どちらの空欄も確信をもって入らない作りになっているため、用語の確定は後回しにしますが、ヒントだけは見落とさないように読み進めます。最初の空欄イは、「( イ )損失」となっているので、「損失を修飾する形容詞的役割」を果たす言葉が入るとわかります。

語群から無理やり入りうる日本語を取り出すと、

3 受忍限度内の、4 財産的、5 適正な、9 合理的、12絶対的、15反射的、18通常受ける、 19精神的

となりますが、解答を絞り込める決定的ヒントがまだ出てきていないので、ここで確定させてはいけません。ここで解答を決めてしまった方は、多肢選択式の解き方を無視したやり方をしており今後も得点力が下がってしまうため、解き方を変えた方がよいでしょう。

2番目の空欄イを含む文章の全体構造を見ると、
「「 ( イ ) 損失」とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・ ( ウ ) な損失をいう」
簡略化すると、「 ( イ ) 損失」とは、経済的・ ( ウ ) な損失
となり、空欄イ=空欄ウとわかるため、イとウは同じような意味になることから、こういうパターンは、イとウに似た用語が入るため、イとウに入れる用語を逆にしても自力で気づくことは困難で、最悪イとウの両方を間違える可能性が高くなりますので、この時点でも、まだイとウに入れる用語を確定させてはいけません。まだ我慢。空欄イの用語が特定できなくても、この後2番目の空欄ウの後ろを見ると、空欄ウに入る決定的なヒントがあります。
「歴史的・学術的な価値は、」
「当該土地の不動産としての経済的・ ( ウ ) 価値を何ら高めるものではなく」という日本語表現になっていることから、空欄ウは不動産の価値として説明しうるもので、かつ、「~を高める」との表現に違和感なくはまるものでなければなりません。

先ほど絞っておいた空欄に入る候補は次の用語です。
3 受忍限度内の、4 財産的、5 適正な、9 合理的、12絶対的、15反射的、18通常受ける、 19精神的
2番目の空欄ウは、4 財産的、12絶対的のどちらかに絞れます。
なぜならば、「3 受忍限度内の、5 適正な、9 合理的、18通常受ける」は、価値の高低のバランスをとるときに使われる日本語で、価値を高める方向で使うのは日本語として違和感があります。次に、「19精神的」は、不動産としての価値という空欄ウの直前の日本語とかみあいません。また、「15反射的は」、2つのものを対比し、一方に働きかけた結果、間接的に他方にも影響があるときに使う用語ですが、そのような関係性を説明する文章が空欄ウの前後に見当たらず、ヒントもないため入れにくい状況です。ということで、2番目の空欄ウは、4 財産的、12絶対的のどちらかに絞れます。最後の2択でどちらが入るかというと、「不動産としての経済的・ ( ウ ) 価値」に一番違和感がないものとして、「4財産的」が入ります。空欄ウは「経済的」と並列する構造になっていて、「経済的」と似た性質をもつ「財産的」が入りやすいですし、また、財産価値が様々な要因で変動することがある不動産に、絶対的価値があると表現するのは行き過ぎですから、空欄ウの前後に「絶対的」を入れるヒントがない以上は選択できません。

空欄ウに「財産的」が入ることを手がかりに、空欄イに入る用語を導きます。
2番目の空欄イの後に「客観的社会的にみて収用に基づき被収容者が当然に受けるであろう~損失」とあるので、その直前にある2番目の空欄イには それを言い換えた言葉が入るはずです。
そこで、2番目の空欄イに入る用語を語群から探すと、3「受忍限度内の」か、18「通常受ける」になります。ただ1番目の空欄イには     「「( イ )損失」を補償する」とあるので、損失補償の基礎知識からして、受忍限度内のもの(=我慢すべき 範囲内のもの)は、公権力側が損失補償しなくてよくなるはずですから、受忍限度内は入らず、18「通常受ける」が入ります(ちなみに解答の根拠となる条文は土地収用法88条)。

最後に、空欄エの1つ目を見ると、
「文化財的価値」が、当該物件の取引価格に反映し、
その(  エ ) を形成する」とあるので、
価値が取引価格に反映し、その結果、形成されるものということなので、空欄エは取引の世界の価値や価格に関する名詞が入るとわかります。
語群から探すと、価値や価格に関する名詞は10の市場価格しかないです。
17国家補償は、取引の世界の話ではなく、空欄エには入りません。

3 行政法多肢選択式の解き方まとめ

  憲法同様、見慣れない長文が出題されることが少なくないため、行政法の基礎知識(テキストの目次の用語の意味・各制度の全体像・重要判例のロジック)を活用しつつ、緻密に長文読解をしていく姿勢でないと解けません。逆に空欄の前後にヒントがあり、同じ空欄が複数ある場合は、2番目以降の空欄の前後にヒントがある場合が多いので、我慢してヒント探しができれば正解率は高まります。多肢選択式は長文読解の法律版という意識で問題を解く訓練を事前にしておくことが必要です。

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講師とよた
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