歪んだ関係から美しい関係へ
「りかさん、恋人から関係やり直しませんか」
時が止まった5月10日 午前5時10分すぎ。
唐突な一言に、時間が止まった。
相手は私が「お兄ちゃん」と呼んで親しくしている9歳上の友人。
なぜこのような経緯になったのかはいまいち覚えてない。私が兄の足枷の鍵を投げたのは確かだった。
「ここまで相談乗ってさ、距離感近いのに、なんで恋愛感情わかへんのやろ」
そう毎回のようにSkypeやLINEで電話をする度に口にする。
わたしも「この人とはないな」と思っていた。
私の壮絶ともいえる過去の交際経験も知っている。その時に、兄の静かな怒りと嫌悪を感じた。
「私みたいな穢れている子は好きじゃない」
そう理解した。だから距離をとって、離れようとした。
なのに、それでもしっかり相談に乗ってくれる。何かと連絡をくれる。
「お兄ちゃんは、鏡に映ったもう1人の自分だもんね」
これは私の口癖。お互い、妙に気が合う。
そして感覚でモノが伝わる。それも気味が悪いくらいに、正確に。
話している限り、理想は高い。本人は「チョロいから」と言うけどそんなことは無い。
足枷を外すきっかけはとても簡単な質問だった。
「綺麗なものは綺麗なままであるほど美しいのか、それとも綺麗なものは穢した方が美しく見えるのか」
兄なら迷いなく「綺麗なままが美しい」と感じる人。「わたしは過去の経験上、綺麗な人では無いから無い。もちろん、相手がどんな人かにもよる。そう自己解釈した」
「それなら俺はりかのこと好きな人だと思う」
なんて曖昧な返事だろうか。弱気にも程がある。
そして2分待って、と言われて2分後、冒頭のような感じ。あまりの動揺と驚きで記憶が無い。
ほとんど口にしたことが無いフルネームを覚えていてくれてて嬉しかった。紛れもない「特別感」がそこにはあった。
ずっと「お兄ちゃん」と呼んでた9歳上の友人がいきなり彼氏になった。なんだこれ。
「前からいいなって思ってた」
そう話し始めた。
「目を合わせて話してくれるところ」
「話をしながら見せる笑顔が綺麗なところ」
「心から嬉しそうにしている笑顔」
「さりげなく寄り添ってくれるところ」
どれも、いままで言われたことの無い「私の魅力」だった。そして、どれも、私が意識しているポイントだったから尚更嬉しかった。
「目を合わせる」は幼い頃から「話す時は人の目を見る、話している人の目を見る」と教えられてきた。
「話しながら笑顔」は大学で人前に立って授業する時にアドバイスされたから。人前に立つって大変だけど、その時に笑顔を忘れないと言われてたから。
「さりげなく寄り添ってくれる」は、人の気持ちに立って物事を考えてるから、なのかな、これも親から言われてきた。
全部、過去の私にアドバイスくれた人がいたからそれが魅力になってる、当たり前を「凄いね」って褒めて貰えるの嬉しくないですか?私はとっても嬉しかった。
兄は関西に住む。私は関東。長いこと遠距離恋愛が始まる気がする。ここで縁がなかったら最後、くらいのきもち。
呼び方も「お兄ちゃん」とはもう呼べない、頑張って下の名前に「さん」を付けて呼ぼうと努力してるけど「〇〇さん」ってなんか人妻感が出るからとても呼びにくい……。これが、特別感なのか、と言われたら分からないけど多分そうなんだろう。知らんけど。
遠距離恋愛、頑張るよ。この時期になんでこうなってるんだろう。
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