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賃貸住宅トラブルになる前に、、   -借地借家法・消費者契約法・失火責任法の要点- 知ることで根拠がわかる

こんにちは、Libroソリューション倶楽部です。

賃貸住宅トラブルには、物件の欠陥近隣トラブル原状回復のトラブル等があり、特に貸主側とのトラブルが多いようですね。
行政は紛争防止のために「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を作成したり、昨今では民法が改正されました。
それでもなかなか利益が相反する貸主側とのトラブルは減らないようです。

減らない賃貸住宅トラブル

賃貸住宅のトラブルはなぜ少なくならないのでしょうか?
トラブルの原因の一つは、貸主側と借主との知識・情報の差から生まれる猜疑心や不信感です。
不動産業者は当然、賃貸住宅の仲介や管理の知識・情報が豊富です。
一方、借主の方は起きるかどうかわからないトラブルの為に準備をする気になれませんよね。
トラブルが生じたら、、と思っても、引っ越しの前後はすごく忙しいし、知識を得ようとしても専門用語や法律の理解が難しく、結局、貸主側との差は縮まりません。

賃貸住宅トラブルの防止、対処はどうしたら?

地方公共団体では無料の相談窓口もありますし、お金を出せば弁護士さんに対応してもらえるでしょうが、一番良い対処法は専門的な知識を持ってる知人に相談することです。

元も子もないこと言ってしまいましたね。

賃貸住宅は、入居する時も退去する時も多額の費用が生じます。
自分のため友達のために納得できる賃貸住宅の借り方について考えてみたいという方は、少し時間はかかると思いますが、賃貸住宅トラブルの知識を身につけてみてください。
きっと他に役に立つこともありますよ。

ここでは、そんな殊勝な方に向けて、用語の解説・法律の知識・トラブル対処法など賃貸住宅トラブルに特化した情報を発信したいと思います。


わかり難い語句があれば、用語の解説をご覧ください。



民法の特別法

賃貸住宅に関する民法の特別法には宅地建物取引業法、借地借家法、消費者契約法、失火責任法などがありまます。民法は一般法に位置づけられていて、特別法は一般法に優先します。
東京都には賃貸物件のトラブル防止のための東京都紛争防止条例(東京ルール)が制定されています。

ここでは借地借家法、消費者契約法、失火責任法をについて見ていきたいと思います。

民法と見比べながらの方がわ易いかもしれませんね。



借地借家法

借地借家法は立場の弱い賃借人の保護を目的とした法律で、一般法の民法に優先した特別法です。
旧借地法適用の借地権者は強い立場ですけどね。

ここでは借家(賃貸住宅)に関するものを取り上げたいと思います。


第26条(建物賃貸借契約の更新等)

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

出典:借地借家法

賃貸契約の更新には合意更新法定更新があります。
合意更新は一般的な契約更新のことで、合意更新手続きが行われなかった場合は法定更新となり、この法定更新が借地借家法で規定されています。
法定更新は強行規定なので変更はできません。

家賃の値上げや条件変更により双方の合意が得られないまま契約が満了してしまう場合などは、法定更新となってしまいますね。
法定更新では、契約に定めがない場合は更新料の支払い義務はないという判例がありますね。


第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

出典:借地借家法

貸主は正当事由がなければ賃貸借契約の更新を拒絶することができません。
主たる正当事由の建物使用の必要性としては、貸主の自己使用の必要性となります。貸主と借主それぞれの建物使用の必要性を比較して判断されることになります。
又、老朽化が非常に激しく倒壊の危険などの問題があれば、正当事由が認められる場合もあるようです。
立退料の提供は、正当事由を補完する要素となりますね。


第32条(借賃増減請求権)

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 省略
3 省略

出典:借地借家法

特約がない場合、貸主及び借主は契約の条件にかかわらず家賃の増減を請求することができます。
入居中であっても、家賃が周辺相場より高かったり、空室が目立つような場合には家賃の減額をお願いしてみてもいいかもですね。

家賃の増減は交渉がスムーズに成立することが少ないので、2項及び3項で裁判が確定するまでの処置を規定しています。


第33条(造作買取請求権)

建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
2 省略

出典:借地借家法

造作とは、建具やエアコンなどの建物に不可されたものです。
貸主の同意を得て、建物に不可した借主所有の造作で有益なものは、契約終了時に時価で買取を請求することができます。


第36条(居住用建物の賃貸借の承継)

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

出典:借地借家法

借主が死亡した場合、民法896条により相続人は借主の権利義務も相続します。
相続人がいない場合は、同居人は借主の権利義務を承継します。



消費者責任法

第1条(目的)

この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

出典:消費者契約法

賃貸借契約は、当事者が契約内容を十分理解した上で合意し契約を締結するのが基本です。
しかし、借主(消費者)は貸主(事業者)と比べ、知識・情報・交渉に劣り、契約内容を十分に理解したとは言えないことが多いようです。
そこで、借主(消費者)保護の観点から消費者と事業者との契約については消費者契約法が適用されることになっています。
消費者間、事業者間での契約には、消費者契約法は適用されません。
宅地建物取引業法は消費者契約法の特別法なので、宅地建物取引業法が優先になります。


第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に
反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

出典:消費者契約法

契約は、消費者と事業者の間の約束ごとですが、消費者の利益を不当に害する内容については、その契約条項は無効になります。
裁判では消費者契約法第10条の適用を受け契約条項が無効になるかどうかが争点になっていることがあります。敷金や更新料、原状回復などについて、消費者の利益を不当に害しているかの判例も出ています。



失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)

民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときはこの限りではない。

出典:失火責任法

条文は口語訳にしています。

日本では木造家屋が隣接して建てられていることが多く、火災の延焼により多大な損害が生じることがありました。
民法では故意または過失により、他人に損害を与えた場合は損害賠償責任を負うことになりますが、自分の家が焼けてしまった上に損害賠償しなければならないのは、あまりに酷いのではと、加害者の賠償責任が発生する要件を限定した失火責任法が制定されました。
とはいっても、重大な過失(重過失)の場合は責任を負わなければなりません。
寝たばこや石油ストーブに火をつけたまま給油を行って火災が発生した場合などは重過失に該当する可能性がありますので注意しましょうね。
刑事上の責任は「失火罪」で規定されていますので過失であっても罪を問われる可能性があります。

借りている部屋で、重過失でなく火災が発生し、延焼した場合も同様に損害賠償責任は負いませんが、貸主に対しては原状回復義務が履行できなくなりますので、損害賠償責任を負うことになります。
そのような時のために火災保険があり、借家人賠償責任保険が含まれている場合は貸主への損害賠償を補償してもらえます。


要点のまとめ

  • 貸主は正当事由がなければ賃貸借契約の更新を拒絶できない

  • 貸主及び借主は、家賃の増減額を請求できる

  • 貸主の同委を得た造作の買取を請求できる

  • 借主の利益を不当に害する契約条項は無効になることがある

  • 借主が原因の火災でも重過失でなければ延焼による損害賠償責任は負わない。但し、貸主に対しては賃借部の損害賠償責任を負う




賃貸住宅を借りる上で、一般的には法律を知らなくても賃貸借契約書や重要事項説明書により判断すればよいと思います。
しかし、現実には誠実でない貸主(不動産業者)も存在していて、彼等に対抗するために法律の知識が必要になることがあります。
又、専門家に依頼するような事態になってしまった場合には、専門家との意思疎通がスムーズになると思いますよ。

蛇足ですがこんな法律もあります。

消費者基本法 第七条 
消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。
 消費者は、消費生活に関し、環境の保全及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない。

出典:消費者基本法


一つの知識が無限の知恵を生みます。

知ることで問題を解決していきましょう。


記述事項は、一級建築士、宅地建物取引士(未登録)が監修しておりますが、発信情報に間違いがありましたらご指摘ください。
直ちにそっと修正いたします。



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