賃貸住宅退去時の前に必ず知るべき『原状回復』-知ることで退去費用が減る-
こんにちは、Libroソリューション倶楽部です。
賃貸住宅を引っ越しすることになったら、退去・解約手続きをしなければなりません。
退去・解約の手続きはだいたいこんな感じですね。
①契約上の解約予告期間前に退去通知(一般的に1~2か月前)
②解約通知書(退去届)の提出
③転居手続き(住民票、郵便物、電気、水道、ガスなど)
④お部屋の掃除
⑤引っ越し
⑥退去立ち会い
⑦敷金の精算
⑥退去立ち会い時に貸主側と現地で立ち会い、お部屋の現状を双方で確認し、修繕費の負担を判断することになり、退去費用が請求されます。
引っ越しは期間内にやらないいけないことが多く、大忙しですね。
今回は、そんな大忙しの方の為に、退去時のトラブルで多い『原状回復』について、国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を基に説明したいと思いますが、ただこの「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は169ページもあり、引っ越しされる忙しい方にはちょっとベビーですね。
なので、「原状回復」でどうしても知っておくべきポイントをご紹介したいと思っています。
さらにお忙しい方は、末尾の「まとめ」だけでもご覧になってください。
わかり難い語句があれば、用語の解説をご覧ください。
【不当な退去費用を請求されないために】
以前から退去費用に関するトラブルが多発していた為、2011年に国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を作成し、2020年には民法改正で原状回復について明記されました。
ただ、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には強制力はなく、一般的なルールをまとめたものですし、民法の原状回復に関する条項は任意規定ですので、契約書で変更することができます。
民法では、経年変化による損傷は借主負担ではありませんが、契約の特約で「経年変化による損傷は借主負担とする」とした場合は契約が優先になってしまいます。契約自由の原則ってやつです。
なので、契約書を締結する時も原状回復に関する知識が必要なんですね。
不動産会社はプロなので、もちろん「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や民法については理解しているはずですが、利益が相反する場合はあえて正直に説明してもらえないことも多いと思います。
不当な退去費用を請求されない為に、借主自身が知識を得ることで、妥当な交渉ができることが重要と考えます。
妥当な退去費用にする為に、弁護士や敷金診断士などの専門家に依頼する方法もありますが、費用対効果がどうか、考えてしまいますね。
【原状回復の定義】
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン及び民法では、各々「原状回復」を以下のように定義しています。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
民法第621条 (賃借人の原状回復義務)
原状回復とは、入居時の状態に戻すことではなく、基本的には借主の故意・過失等による損耗等について復旧すればよいことになります。
注意して通常の使用をしていれば、退去費用はほぼ負担しなくてよいはずですが、通常の使用といっても範囲が広く、認識の違いによりトラブルになることがあります。
又、特約で「ハウスクリーニング代は借主の負担とする」などの記載がある場合は退去費用として借主の負担になりますので、契約書を再確認しておく必要があります。
【経年劣化・通常の使用とは?】
賃貸物の経年劣化や借主が通常の使用をした損耗等は、貸主の負担で修復することになります。
基本的な負担区分については、このような感じです。
タバコによる汚損は範囲が広くなりますので、喫煙者の方は気を付けた方がいいですね。私は、必ず屋外で黄昏ながら一服します。(余計なことでした)
詳しくは「貸主と借主の義務と負担」をご覧ください。
この負担区分でも以外に借主に有利な区別になっていると思いますが、借主が費用負担しなければならない場合も有利になることがあります。
【耐用年数と残存価値】
経年変化・通常損耗の分は、家賃に含まれているとして回復費用は貸主の負担になるので、借主の不注意で原状回復費用を負担しなければならない場合でも、残存価値について負担すればよいこととしています。
又、修復範囲については、最低限可能な施工単位で修理するのが妥当としています。
といってもちょっとわかり難いですね。
例えば、借主の不注意で壁のクロスの一部にキズをつけてしまった場合に、貸主からその部屋の4面のクロスの張替費用を5万円請求されたとします。
壁のクロスの耐用年数は6年とされていますので、経過年数が3年の場合は残存価値の50%を負担すればよいことになります。
張替範囲についてもキズをつけてしまった一面分が妥当と考えられます。
そうなれば借主の負担費用は
5万円×50%(残存価値)×30%(一面分の想定面積割合)=7500円となります。
42500円も費用削減ができましたね。
本来、経過年数は新品時が起点となりますが、新築でない場合は貸主側も何時新品にしたか把握できていないこともありますので、入居時の状態を契約当事者で確認し、起点時となる年数を協議しておく必要があります。
例えば、洗面台の耐用年数は15年ですが、入居時の年数が10年と協議した場合は、入居後5年で耐用年数を超えることになり、残存価値は1円となります。
ここで注意していただきたいのですが、耐用年数を超えた洗面台を不注意で壊してしまった場合、残存価値の1円を負担すればよいということにはならないんです。
借主の善管注意義務違反がなければ、貸主はそのまま使用することも可能となり公平ではないので、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得るとしています。
ここは原状回復を有利にする考え方なので、あやふやにせずシッカリ理解するようにして下さいね。
各部位の耐用年数と借主の負担単位は下の表によります。
【原状回復トラブルを予防するために】
トラブルが発生してからでは、対応するのが大変ですので、面倒でも契約時及び入居時に対処しておくことをお薦めします。
契約時に国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が基準になっていることを確認する。
契約時の原状回復に関する特約を理解する。
契約時に原状回復工事施工目安単価を確認する。
入居時に貸主・借主の双方立会で現状を確認し記録を残しておく。
日常や退去時の清掃を行う。
【まとめ】
退去費用に関するトラブル防止の一つの基準として、国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と改正民法があります。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には強制力はなく、一般的なルールをまとめたものですし、民法の原状回復に関する条項は任意規定ですので、契約書で変更することができます。
原状回復とは、入居時の状態に戻すことではなく、基本的には借主の故意・過失等による損耗等について復旧すればよいことになります。
賃貸物の経年劣化や借主が通常の使用をした損耗等は、貸主の負担で修復することになります。
借主の不注意で原状回復費用を負担しなければならない場合でも、残存価値について負担すればよいこととしています。
修復範囲については、最低限可能な施工単位で修理するのが妥当としています。
一つの知識が無限の知恵を生みます。
知ることで問題を解決していきましょう。
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