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かんばんのないコーヒーや
文・絵 かめおか あきこ
出版社 ほるぷ出版 2024年
この物語は、森の喫茶店でどんぐりコーヒーにまつわるお話し。
オオカミくんは、森の古本屋を営んでいる。お客さんは、毎日来るが、その目的は本ではなく、オオカミくんが淹れるどんぐりコーヒー。オオカミくんが、工夫してこだわって淹れていた。
ある時歩いていると、どんぐりを焼く香りがして、誘われるがままに森に入っていった。でも、どこから香りが漂って来るのか分からない。
キツネがやって来て、「ぼうや ちょっとごめんなさいよ」と言って、緑の壁を開けて中に入っていった。
そこは、看板のないコーヒー屋さんだった。
オオカミくんも、勇気を持って中に入ってみたが、くまマスターと常連客からギョロッと睨まれた。コーヒーの注文もギクシャクして、頭に来たオオカミくん。「ひとくちのんだら でていってやる」と思っているところにコーヒーが出された。
一口飲んだら、衝撃的な美味しいどんぐりコーヒーに、ドキドキが止まらない。
それからは、コーヒー屋さんに通い詰めて、美味しい秘訣を探ろうとする日々が続く。弟子になる事を申し出ると断られ、レシピを聞くと同じにやっても同じものは出来ない!とけんもほろろ…
コツを聞き出そうとしても、マスターは素っ気なく、「あとは自分で考えろ。」と最後の大事なところは教えてくれません。
一見冷たく突き放すけど、静かに見守るくまマスター。
その後、オオカミくんは…!
今の時代は、何でも簡単に知ることができ、手取り足取り教えてくれる時代。
でも、本当に大切なことは、自分で感じて、考え抜いて、体得しなければ身に付かず、ましてや、技を極めたとしても、本当の完成はなく、挑戦の日々が続くと名人と言われる方は、皆さん同じことをおっしゃいます。
また、そのためには、人と人が、心の底でしっかりと繋がることが不可欠なんだと思いました。
人間にとって大事なことは、時代が変わっても変わらないということを気付かせてくれる物語でした。
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