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【北米エンタメニュースまとめ番外編】「カグラバチ」の世界展開の軌跡

普段、北米を中心に海外のエンタメ(主に漫画・アニメ)のニュースをまとめています。今回はその番外編として外園健氏の「カグラバチ」の海外展開の軌跡をまとめてみようと思います。2020年代の日本発の漫画の世界展開のケーススタディになるかもしれません。


「カグラバチ」とは

カグラバチは2023年に週刊少年ジャンプで連載が始まった少年漫画です。

刀匠を志す少年チヒロは、父の下で日々修行に励んでいた。おちゃらけた父と寡黙な息子。笑いの絶えない毎日がいつまでも続くと思っていたが…ある日悲劇が訪れる…。血塗られた絆と帰らない日常。少年は憎しみを焚べ、決意の炎を心に宿す…。

ジャンプ+より

少年が刀ふるってバンバン人を切り刻んでいるので、世界観はすごくダークです。血はどんどん景気よく流れます。白黒なので血は黒く描かれているので私はまだ読めるのですがこれアニメ化したらどうするのだろうと思っています。

英語圏で人気爆発 人気が世界へ

連載開始と同時に、ジャンプ+の海外版「MANGA Plus by SHUEISHA」で英語版の連載が始まりました。するとすごく人気。

こちらの記事によると第1話は「2023年9月時点で最も世界で見られたエピソード」だったようです。アプリから人気が出るというのは「SPY&FAMILY」に近い動きをしているようにみえます。

MANGA Plus by SHUEISHAはアプリ内でそれぞれの作品がどのぐらい見られているかが数値化されていますが、カグラバチは瞬間的に「ONEPIECE」や「BORUTO」を上回る場面があったようです。

こうした正攻法の人気を集めつつネット上では「ミーム化」もしました。

日本版のマクドナルドの広告に出ていた男性キャラが、主人公のチヒロに似ていたらしい。

各国語に翻訳されていき、日本のファンの熱(もちろん最近始まった作品の中では非常に高い)を上回る熱意を日本語圏以外のファンが見せます。

「父親の意思を引き継ぎ、悪の組織と戦う少年の成長譚」という点では「ドラゴンボール」以来の少年漫画らしい物語です。ポイントがどのあたりかなとみると

  • マフィアっぽい組織が出てくるフィルム・ノワール

  • 映画的構図のかっこよさ

かなと思いました。

刀は強いですよね。日本刀は魅力的。私は実物の日本刀も好きで美術館などに見に行くのですが、カグラバチの刀の描き方はすごい日本刀の鋭さや美しさを感じます。たぶん切られても痛さを感じる前に死ねる。

そしてその刀が存分に力を発揮するかなりダークな世界観。もともとチヒロのモチベーションが「父親の敵討ち」なのですが、未成年なのに躊躇なく人を殺していく。(そしてそれを本人も自覚していることが最近分かりました)

こちらも私はなるほどと思ったのですが、とにかくバトルシーンの構図がかっこいい。このあたりは映画をよく見ているのだなというセンスを感じさせます。

外園氏のインタビューをみると「NARUTOが好き」ということなので「NARUTO」「BORUTO」ファンも引き継いでいるのかなと思います。

あとこれは完全に個人的な好みなのですが、おそらく編集の方と外園氏の話のまとめ方がうまくて、週刊で漫画を読んでいて「漫画を読むうえでの」ストレスを感じません。(人が死に、血が流れるストレスはあるのですが)

1話を読んで「これは何?どうなるのだ?」と思ったひっかかりが多くの場合次の話で解説もしくは解消されます。ひっかかりなく読み続けられる。漫画としてのうまさがあるので、箸休めの話がなくてもなんとか読み続けられます。この辺りは感じ方の個人の差があるのでなんともいえないのですが。

インドネシアのイベントに作者が参加

この海外人気の波を受けて、2024年に4月インドネシアで開催された「Anime Festival Asia」に外園氏がオンラインで参加します。おそらくインドネシア語で人気だったのだと思われます。連載開始から1年ぐらいだったのでペースが速いなと思いました。


カグラバチ、フランス上陸

ほかの漫画でも作者が直接現地のファンとオンラインとはいえやり取りするのは貴重な機会です。当然ほかの地域のファンが黙っているわけはなく。

ということで2024年7月にはフランスの「Japan Expo」に再びオンラインで外園氏が登壇されました。この時点でまだフランス語では配信されておらず、イベント中にフランス語版の配信開始が公表されました。(みな、英語で読んでいたのだろうか?)

当日現地ではサイン入り単行本とか色紙も販売されたようですね。


フランスで単行本発売へ 出版社も力を入れるPR

フランスでは2025年2月14日に単行本第1巻が発売。これに合わせて現地の大手チェーン店にPOP-UPショップが作られました。お買い上げの方には色紙のプレゼントも。

さらに見ものなのがおそらく出版社主催で、発売記念イベントが開催されたこと。広告掲出ももちろんすごいのですが「あなたのほかにもこんなに楽しみにしている人がいるよ。存分に楽しもう!」というのは心強いですよね。

どうやら刀匠体験も行われたようです。

カグラバチは主人公のチヒロの父親が刀匠という縁はあるとはいえ、遠いフランスで刀づくりに興味を持つ人を生んだのはすごいなと思います。

もちろん町中の広告もすごい。ここまで出版社がPRに力を入れたのって「怪獣8号」以来ではないだろうか?

ドイツでは第1巻で紙の限定版発売

やはり情報発信大事ですね。
ドイツ在住の方から、ドイツ語版では現地出版社から第1巻で紙の限定版が出るとお伺いしました。

これ、限定版の表紙はカラーページとかで使ったイラストなのだろうか。さすがに描きおろしではないと思いますし。

そして作品説明が「血、復讐、そして魅惑的な刀 チヒロの容赦ない復讐が始まる」という感じで始まっているのがいい。bloodyなイメージですね。

推奨年齢は15歳以上で、映画的なので「JOHN WICK とかQUENTIN TARANTINOが好きな人向け」とのこと。わかってるなー。おまけでついてくる「exclusive metal plate」って何だろう?

2025年2月時点ではここまで。このほかにファンの方々を見ていると、わざわざ海外から日本語版を通販で取り寄せたりほかの言語の単行本を買ったりとコレクターも出ているので、ちょっと熱意がすごいなと思っています。

なおカグラバチのファンは「bachibros」と呼ばれています。

また動きがあったら加筆するかもしれません。

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