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【北米エンタメニュースまとめ】SLJの選ぶ「ベスト漫画2024」、「神の雫」が国際エミー賞受賞、広がる米学校図書館での漫画の「検閲」、セーラームーンのパフォーマンスショーがロンドン公演、ラウンドワンの米国展開成功から考えるアメリカでウケるビジネス
日々の北米エンタメ市場のニュースなどのまとめです。拾い切れていないものもあるのでぜひリクエストお待ちしております。感想も大歓迎です。
書籍出版社のためのAIライセンシング入門編
AIの広がりとともに、トレーニングのために既存の書籍などのテキストを使いたいIT企業。無断での利用はクリエイターの反感を買いますが、最近では米国の出版社で著者の許可のもと、有料でトレーニングのために書籍のテキストを提供するところも出てきたようです。
SLJの選ぶ「ベスト漫画2024」 「正反対な君と僕」など
https://www.slj.com/story/best-manga-2024-slj-best-books
米国の学校図書館向け雑誌School Library Journalが選んだ「ベスト漫画2024」。「MANGA」のカテゴリーなので日本の漫画の翻訳が多いのですが、すでに米国の作家とみられる方々の作品も選ばれています。日本の漫画の翻訳だと「正反対な君と僕」「気になってる人が男じゃなかった」など。このようなリストは全米の学校図書館が自館の選書に使うとみられます。
ドラマ版「神の雫/Drops of God」、連続ドラマ部門で国際エミー賞受賞
日本とフランス、米国の共同制作で漫画「神の雫」が原作となったドラマ「神の雫/Drops of God」が連続ドラマ部門で国際エミー賞を受賞しました。しかもかなりキャラクターなどを原作から設定を変えて作られたそうです。こういう点でうまく漫画というIPが活用されてくれると嬉しいです。
オンラインとリアルで普及するMANGA IMART2024セッション
IMART2024では、漫画やアニメの海外展開についてのセッションがいくつか開催されました。そのひとつが集英社の「MANGA Plus by SHUEISHA」編集長とアメリカ紀伊國屋書店の責任者、AIでの翻訳を手掛けるオレンジ社長が登壇したセッション「マンガの世界展開の現状とスピードアップに向けて」。この記事を読むと、オレンジの翻訳はAIといいつつ、かなりコストをかけているのだなと思いました。週刊少年ジャンプの原稿料同様、翻訳料全体の水準を引き上げるぐらいの気概を期待します。アメリカ紀伊國屋書店の動向も気になります。利益率の高さに加え、日本語を読めないであろう人も日本語版を買ってくれるとのこと。日本のファンが楽しんでいる限定盤や書店特典も海を渡ってほしいです。
アルジェリアでアニメ・漫画関連展示会
JETROによるアルジェリアでのアニメ・漫画関連展示会のリポート。北アフリカ最大級のポップカルチャーのファンが集うイベントとのことで、料金が所得に比べて高めにも関わらず若者が集まったそうです。まだまだ海賊版が多いようですがぜひ正規版が駆逐してほしい。
VIZ Mediaの作品、「BOOK☆WALKER」で配信
日本でKADOKAWAの漫画配信サイト「BOOK☆WALKER」で集英社の作品を配信するように、北米でもグローバル版のBOOK☆WALKERで集英社と講談社の作品の翻訳などを手掛けるVIZMediaの作品の配信が始まりました。KADOKAWAからするとグローバル事業の強化のひとつということになりそうです。
台灣角川、新事業展開など台湾の事業強化を発表
KADOKAWAの海外事業というと台湾でも存在感を高めています。こちらは台湾進出25周年を記念したイベントでの発表をまとめた記事です。日本のコンテンツのデジタル中心での配信強化、台湾コンテンツの映画化などへの出資が含まれます。
KADOKAWAとソニー、海外ビジネスに補完関係はあるか?
KADOKAWAの海外事業の分析についてはジャーナリストの数土さんの記事に詳しいです。
日本の特撮、ブラジルのオタク市場の要のひとつ
ブラジルでは日本の特撮が人気。そしてその人気の拡大に一役かっているのが日本にルーツをもつ日系人のひとたち。イベント企画などをされているようです。
そしてそのブラジルではメイド喫茶も人気、日本文化として体験できる場所ができているそう。メニューが気になる。オムライスがあるのか。
日本の書籍市場についての入門ガイド
今年のグローバルな書籍出版市場のトピックのひとつは、英語圏での日本のフィクションの人気だそうです。海外で日本語の書籍の版権獲得を考える人向けの日本の書籍市場の解説記事まで出ました。純文学とエンタメ小説の区分、漫画やライトノベルというジャンル(ライトノベルはやはりヤングアダルトに近いとされています)についての説明に加え、日本の作家の存在感の大きさによりグローバルなロマファンタジー、エロティカ、ホラー人気がいまいち浸透していないことがまとまっています。
最後には海外の出版社が日本の出版社に版権を売りたいときのヒントも。確かに日本で翻訳される海外の書籍ではノンフィクションのほうが目立つかもしれません。あと日本人、海外の人の描いたニンジャとかセップク好きですよね。
https://www.waterstones.com/blog/asako-yuzuki-on-butter-bookshops-and-biscuits
この「日本小説ブーム」の一翼を担っているのが柚木麻子さんの「BUTTER」。なんと英国の書店チェーン、ウォーターストーンズで「BOOK OF THE YEAR」に選ばれました!
オタク女がドイツで「推し活」してみたら…グッズ予約に敗北し、イベント視聴できずショックで寝込んだ。痛バつくるのもめっちゃ大変!
オタクはとうとう海を渡り始めました。こちらはオーストリアに住むオタクの方による現地のオタク活動のリポート。ドイツ語圏で尾推し活といえばコンベンション。ドイツが数が多いからありがたいですよね。
ドイツのアニメ・漫画市場についてはいつもKatahoさんのリポートが勉強になります。こちらはドイツで「怪談」というイベントが開催され、和風ホラーが再び人気になるかもという記事です。
こちらは欧米のファンが漫画・アニメをどう楽しんでいるかの一面です。この写真のONEPIECEとかのファンブックは私も旅行で見かけてすごい気になりました。もちろん日本のファンもリアル・オンラインで好きなものを共有することに熱心ですが、より数の少ない海外のファンは同じものを好きな人を見つけると語りたくなるのでしょうね。
丸尾末広氏の「薔薇色ノ怪物」英語版出版へ
このKatahoさんが指摘した「和風ホラー」再燃ですが、ドイツだけではなく伊藤潤二先生ふくめ、英語圏でもあるようにみえます。こちらの記事は日本のエログロ漫画の代表者のひとり、丸尾末広先生の「薔薇色ノ怪物」が英語に翻訳されるという話。オーダーは「大人限定」とのこと。
テネシー州一部学区、「暗殺教室」など漫画を学校図書館から撤去
米国の「検閲」の動きのひとつです。テネシー州の一部の学区が、「暗殺教室」や「炎炎ノ消防隊」を学校図書館から撤去しました。ほかのテネシー州の学区では大友克洋氏の「AKIRA」も撤去候補のリストに入っているとのこと。このリストは約400タイトルで「呪術廻戦」なども入りました。(この候補のリストみると「これもだめか」と思えてきます)テネシー州の法律がかわり、卑猥な言葉が含まれている作品も、学校図書館でどのようなコンテンツが提供されるべきかを定めた州法の制限の対象になるようになったためです。もちろん言論の自由を理由にこれらの「検閲」を反対する声もあるのですが、学区のBOARDで決められていっています。
実際の子供はどう思っているのかがすごい気になります。日本のようにこっそり読めるのだろうか。
このあたりの「検閲」の動きについては日本語でもいろいろ記事が出てきました。
ラウンドワンの米国展開成功から考えるアメリカでウケる「マイルドヤンキー」型ビジネスモデル
「検閲」も含めて「アメリカっていったいどんな国なの?」と思った方に是非お勧めしたいのがこの記事です。とてもいい記事です。米国の解像度が上がります。
日本のラウンドワンが米国で大成功している背景を分析したものなのですが、成功が単なる「日本文化好き」ではなく「広大な米国という土地で、遊ぶところ集まるところがない若者が集まる場所をお手軽価格で提供した」というのがポイントです。もちろんラウンドワンのゲームセンターのグッズには日本のポップカルチャーが入り込み、フードコートではTAKOYAKIが提供されています。
どうしても日本企業や外資系企業に勤める「日本人」は西海岸というかサンフランシスコと東海岸というかニューヨーク市とワシントンDCの話をしますが、その姿は米国という国のほんの小さなパーツにしかすぎません。(あとは旅行先としてのハワイ)それ以外の米国には上記の記事のように娯楽もなく、出かける手段もない人たちが住んでいるのです。かつては教会に集まったり近くの店でアルコールなどを楽しんだりしていたのでしょうが、それがいまラウンドワンに集まり、元気に日本エンタメを楽しんでくれているのです。ありがたい限りです。
NYCの感謝祭パレードにルフィ、悟空が登場
LIVE: The captain of the Straw Hat Crew, Monkey D. Luffy, is flying at the 98th Macy's Thanksgiving Day Parade!
— Toei Animation (@ToeiAnimation) November 28, 2024
Share your experience live by taking a pic of Luffy and posting with #ThanksLuffy2024! 🏴☠️🦃🗽 #ONEPIECE #MacysParade @macys pic.twitter.com/GqOMOtZhnz
LIVE: Goku is now soaring through the streets of New York City in the 98th Macy's Parade! Take a pic, whether at home or in the Parade, and share this incredible moment with #ThanksGoku!
— Toei Animation (@ToeiAnimation) November 28, 2024
Happy Thanksgiving everyone! 🐉🦃🎈🗽 @macys #MacysParade #DragonBall pic.twitter.com/ZednHVMEJ7
2024年、サンクスギビングデイのNYCのパレードに、ルフィと悟空のバルーンが登場しました。すっかり日本の顔ですね。ミニオンとかスパイダーマンと並ぶのだね。
動画はこちら。
ウェブコミックスのファン、紙の本の買い手に
漫画の市場を語るときどうしても「デジタルVSアナログ」になりやすいのですがそうとも言い切れないと指摘するのがこちらの記事です。グローバルでウェブコミックスの読者が増えている中、彼らの中にはその作品の紙の本を買う人が出てきているとのこと。そのため出版社もいいウェブコミックスのIP獲得の競争が厳しくなってきています。フリーのコンテンツが熱心なファンコミュニティを作り、彼らがコレクターになってきているのです。まあ、ウェブ上のコンテンツは永遠ではないですからね。
バンダイナムコ、景気悪化でも中国に照準
中国の動きはなかなか見えてこないので貴重な記事です。景気が厳しい中国ですが、日本のアニメ・漫画を含むコンテンツへの支出は堅調なよう。将来への投資も含めてバンダイナムコは上海でイベントを開催しました。ヒーローショーから歌手のライブ、フードトラックと全部盛りという感じです。
美少女戦士セーラームーン、ロンドンで「"Pretty Guardian Sailor Moon" The Super Live」上演へ
https://sailormoon-official.com/stage/news/superlive25_1129.php
とうとう日本のアニメ・漫画人気が、舞台芸術にも。NYCで「ミュージカル 進撃の巨人」が大ヒットしましたが、こちらの「Pretty Guardian Sailor Moon" The Super Live」はそれより前に、東京、パリ、NYCなどで人気を集めたステージ。満を持して演劇の本場、ロンドンでロング公演です。ロンドンでの公演もですがある程度の期間である「ロング公演」なのがうれしい。欧州中からセーラームーンファンを集めていただきたい。
欧州を覆う「世界的なアニメーション危機」
欧州のアニメーション産業の関係者が集まるコンベンションで「世界的なアニメーション危機」が話題になりました。子供向けアニメにお金が集まりにくくなっていること、ストリーミングプラットフォームの規制の強化、AIの規制などが話題になりました。
【おまけ】ヒプマイ「Femme Fatale」を英語で歌ってみた
完全に趣味です。荒廃した世界でラップで歌って戦うというIP「ヒプノシスマイク」があるのですが、この曲のひとつの女性チームが歌う「Femme Fatale」を英語でカバーしたもの。元の曲ももちろんかっこいいのですがよりかっこよさとパンチがきいてめちゃくちゃかっこいい。なんか全部英語でライブいけるんじゃない?と錯覚しました。
追加
この企画を始めるきっかけになった菊池健さんのマンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。
IMARTの基調講演の冒頭、これだけでも非常に面白いです。フルでアーカイブ見るの楽しみにしております。KADOKAWAについては、意外に近年のKADOKAWAは出版社の中では北米、アジアでかなり存在感を高めていました。特に北米のライトノベル市場では強いです。
菊池さん、マンガバルセロナに行かれるということ。スペインのイベントはどのような雰囲気なのか。感想楽しみです。
今週はここまでー。引き続きよろしくお願いいたします。