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クマタカに出会う

バードウォッチングをしていて見分けが難しい鳥の種類は、一般的に水鳥(カモ類)と猛禽類(ワシタカ類)と言われています。

鷲や鷹は空を滑空している姿を見るのが殆どで、上空を翼を広げている姿はどれも同じに見えるし、逆光で色が分かりづらく、大きさも比較するものがないので掴みにくいという理由があります。
そしてもう一つは、数が少なくてそもそも出会う機会が無いこと。
近くの枝に止まっていれば判別もできますが、山奥だったり崖地だったりと人が足を踏み入れるのが困難な場所で生活しています。

猛禽類で私が今までに出会ったのは、どこにでもいる鳶(トビ)と丘陵の住宅地でも見られるチョウゲンボウくらいです。

鳥見を始めた頃は、宮崎学さんのこの写真集を何度も眺めて想いを馳せていました。猛禽類はとにかく、カッコいい!

この写真集の表紙になっているのがクマタカです。絶滅危惧種に指定されています。この精悍な眼差しと佇まいに惚れ惚れとしてしまいます。
写真家が何日も山に篭り、何回も足を運んでようやく出会える鳥です。



今年(2024年)の8月。上高地から奥穂高岳への登山に行きました。
お盆の時期ということもあって、上高地とその周辺は観光客と登山客で溢れていました。

人で溢れる河童橋

河童橋から1時間ほど歩いた場所に明神池という場所があります。
遊歩道が整備され歩き易い地域なので多くの観光客が訪れます。
自然も豊かで、たまにクマも出るほど…。

それは登山を終えた帰り道でした。
明神橋付近で何やら人だかりがしています。皆がカメラを向ける方向を辿ると……我が目を疑いました。
細い木の枝に巨大な鳥が!

一目見てワシタカの仲間だろうと確信しましたが、その大きさに圧倒されました。今まで見た鳥類で最大の大きさです。
日本で最大級の猛禽類といえば、まずオオワシとオジロワシですが、これは北海道に生息する種。
となると、イヌワシかクマタカということになります。イヌワシでないことは何となく分かりました。消去法でクマタカという事になりますが、私が図鑑で知っているクマタカとは少し違う気がしました。
いや、そもそもこんな観光客だらけの場所にクマタカが居るのか??
ハチクマという猛禽類もいます。雰囲気は似て居ます。見たことがないので確信が持てません。
結局、この場で種の特定をすることはできませんでした。

距離は数メートルほど。本来なら大きな望遠レンズでなければ撮影できないような写真が撮れました。ご覧ください。

この精悍な眼差し。太く大きな足と鋭い鉤爪。まさに森の王者の貫禄です。
観光客のシャッター音響く騒々しい状況でも動じない堂々とした風格。

一度地面に降りて何かを啄む仕草をしたあと、大きな翼を器用に操り再び舞い上がり枝に止まりました。
凄い迫力です。


ずっと見ていたかったのですが、帰りのバスの事もあり、その場を後にしました。本当に偶然このタイミングでこの場所で出会えたことに感謝。

自宅に帰ってから検索してみると、上高地でクマタカの幼鳥の目撃情報がありました。まだ若鳥だったから雰囲気が違って見えたのでしょう。改めてクマタカに出会えたことを実感しました。

クマタカに出会えたことはとても嬉しいのですが、危惧もあります。
本来なら、こんな場所に居てはいけません。観光客に撮影サービスなどしてはダメです。
この幼鳥がどう大人になってどういう場所で生活していくかはとても興味があるのですが、願わくば人目から遠ざかり、奥深い山岳地で悠々と空を滑空してほしい。

図鑑や写真集でしか見れない鳥がいてもそれはそれで良い。
人前に出ず、ひっそりと生命の営みを続けてくれる方が何倍も嬉しい。

複雑な想いが交錯するクマタカとの出会いでした。



追加情報 上高地ビジターセンターのインスタより

もりのこえより。

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