利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当
令和元年(行ヒ)第333号 法人税更正処分取消請求事件 令和3年3月11日 第一小法廷判決
争点
1 利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当はその全体が法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの)24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当する
2 法人税法施行令(平成27年政令第142号による改正前のもの)23条1項3号の規定のうち資本の払戻しがされた場合の当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分の法適合性
納税者及び申告内容等
当社(被上告人を当社とする)
KPC社(子会社 米国デラウェア) 当社が100%出資
KC社 (KPC社の子会社)
24年11月12日
KC社→KPC社 約6.44億ドルの配当
24年11月14日
KPC社→当社 約6.44億ドルの配当(本件の配当)
資本の払戻し 1億ドル
利益の分配 5.44億ドル
本件申告に係る配当の処理
簡略化のためドルベースとしています。
当社におけるKPC社の株式簿価 2億ドル
資本の払戻し
現預金 1億ドル / KPC株式 2億ドル
有価証券譲渡損 1億ドル
利益の配当
現預金 5億ドル / 受取配当 5億ドル
当社は資本の払戻しと利益の配当は同日に行われているが別々の配当として処理
KPC社
直前資本金 2億ドル
前期末純資産簿価 9,700万ドル
みなし配当
(1)交付金銭等 1億ドル
(2)2億ドル×1億ドル÷9,700万ドル(1を超えるので1)
(3)(1)ー(2)がマイナスとなるのでみなし配当は生じない
有価証券譲渡損益
2億ドル×1億ドル÷9,700万ドル(1を超えるので1)となるので、保有するKPC社の簿価(備忘価額を残して)を100%減額
2億ドルー1億ドル=1億ドルの譲渡損が発生
上記申告に対する税務署の更正処分
本件配当は資本の払戻しと利益の配当を総合して処理すべきとして、下の処理であるべきと更正
現金預金 6.44億ドル /KPC株式 2億ドル
/ みなし配当 4.44億ドル
(有価証券譲渡損が約40億円生じているが為替差損と思われる)
最高裁
利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当
利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当 は,その全体が法人税法24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するものと いうべきである。
法人税法24条1項3号
前期末簿価が直前資本金額より少なく、かつ、利益剰余金及び資本剰余金の 双方を原資として
行われた配当については、減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出され、その超える限度で法人税法の趣旨に反し委任の範囲を超えて違法なもとして無効とした
簿価純資産価額が直前資本金額よ り少額である場合に限ってみれば,上記の計算方法では減少資本剰余金額を超える 直前払戻等対応資本金額等が算出されることとなり,利益剰余金及び資本剰余金の 双方を原資として行われた剰余金の配当において上記のような直前払戻等対応資本 金額等が算出されると,利益剰余金を原資とする部分が資本部分の払戻しとして扱 われることとなる。 そうすると,株式対応部分金額の計算方法について定める法人税法施行令23条 1項3号の規定のうち,資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の 計算方法を定める部分は,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた 剰余金の配当につき,減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出 される結果となる限度において,法人税法の趣旨に適合するものではなく,同法の 委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?