金価格の下落は、セオリーからは説明できない!どう考える?
金価格が急落しています。
金価格上昇の条件である
金利低下、ドル価格が下落しているにも関わらずです。
金価格下落、金利低下、ドル価格下洛のうち
2つが共存することはあっても、
3つが共存するのは筆者の経験上でも稀なことであり、
そこは、はかないリスクを感じます。
通常であればどれか一つは間違っているはずですが、
3つの共存が長引けばリセッションを
織り込みつつあると言えます。
金価格の変動要因
そもそも金価格はなぜ変動するのでしょうか。
2月17日付けの記事
『金価格上昇の意味するもの』で
紹介した通り大きく3つ、
1、金利低下
2、インフレ低下
3、ドル相場
3つの要因があります。
1、【世界経済減速・金利低下】~金利が下がれば金価格は上がるが・・・
金は金利のつかない資産です。
金融商品の金利が低下すると、
金利のつかない金の相対的な価値が上昇し価格が上昇します。
反対に金利が上昇すると、
金利のつかない金の相対的な価値は下落し価格は下落します。
足もとは世界的に中央銀行が金融緩和を実施し、金利が低下しています。
米国では10年債利回りが
2019年の年初2.5%台から2月28日にはついに1.1%台まで急低下しました。
この水準は米国のインフレ率を下回っています。
国債での運用利回りは、
名目金利<インフレ率によって実質的にゼロ、
更にはマイナス化しているため、
金利を生まない資産である
金保有の機会コストが低下し続けています。
金利が低下しているにも関わらず金価格が下落しているのは違和感があります。
2、【インフレ懸念】~ハイパーインフレ⇒金価格は上昇
一般的にインフレ率上昇は、金価格にポジティブだ
と言われています。
しかし、この説明には注意が必要です。
通常の景気拡大によるインフレ上昇(≒金利上昇)は、
名目金利>インフレとなり実質金利が上昇するので、
金利のつかない金の価値は下がります。
インフレ懸念で金の需要が高まるのは、
ハイパーインフレのように、通貨の価値が激しく低下する場合です。
ハイパーインフレになれば、
実物資産である金価格が上昇します。
3、【ドル安】⇒金価格上昇がセオリー、しかし・・・
世界の基軸通貨はドルです。
世界各国の外貨準備に対してドルの比率は約60%を占めています。
また世界経済活動の大きな部分は
ドルそのものとドル資産に依存しています。
一般的にドル安になれば
連動してその資産価値は減価するので、
影響を回避するため他の通貨や資産の需要が高まることになります。
その候補先のひとつが金です。
直近では複数の主要通貨に対する
米ドルの為替レートを指数化したインデックスは急落しています。
ドルの価値が低下しているにも関わらず
金価格が下落しているのは違和感があります。
今回は金価格下落はリセッション(景気後退)を織り込む動きか
足もとの環境を確認します。
米国、世界で金利低下、ドル安と
金価格の上昇要因が揃っています。
しかし、金価格は下落しています。
一方で、中国製造業の景況感を表す指標である
PMIは35.7と前月の50.0、予想の45.0を下回り過去最低を記録しました。
PMIは50が景気の拡大・縮小の分かれ目となるため、
35.7は衝撃的な景況感の悪化です。
金価格の下落は中国発の世界景気後退を織り込む動きかもしれません。
根拠となるニュース
金価格チャート
https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-DXY/
米国10年債利回りチャート
https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-US10Y/
ドルインデックスチャート
https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-DXY/
中国、2月製造業PMIは過去最低-新型ウイルスの影響深刻
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-02-29/Q6FVAODWX2PU01
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