原油価格がマイナスに!この意味を解説します。
元外資ファンドマネージャーの西出滋です。
原油市場で価格がマイナスに
4月20日の原油市場で
価格がマイナスになったことが話題になっています。
マイナス金利は聞いたことあるけど、
原油価格もマイナスになるの?
と思うかもしれません。
なるんです!
ただしこれは現物ではなく先物での話です。
先物取引って?
先物取引は、
世界で初めて大阪堂島の米売買で
導入されたと言われていて、
将来の売買について、あらかじめ、現時点で約束をする取引のことです。
現時点では、
売買の価格や数量などを約束だけしておいて、
約束の期日が来た時点で受け渡しを行います。
前もって売買の価格を決めて、
必要の数量を確保できるので、
価格変動の激しい商品のリスクを回避できる
というメリットがあります。
先物で一時マイナス40.32ドルまで下落
20日にWTIという
北米の原油取引の指標価格となる先物は、
5月限で一時マイナス40.32ドルまで下落しました。
なぜこのようなことが起こったかというと、
理由は大きく3つあります。
1.新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が原油需要の減少を招く
2.産油国の減産が充分ではない
3.米国の原油貯蔵能力の限界が近づいている
世界的な経済活動、外出自粛により
原油需要は30%減少しています。
また、WTI先物の現物受け渡し場所である
オクラホマ州クッシングの原油貯蔵施設は
あと数週間で満杯になると予想されています。
米エネルギー省のデータによると、
クッシングの貯蔵施設は
現在は69%が利用済みとなっており、
4週間前の約50%から急増中です。
産油国による減産が決定されていますが、
減産量は充分ではなく需要の減少を補うようなレベルではありません。
そのため世界中で膨大な量の
余剰原油の貯蔵場所が不足する事態に
なっているようです。
クッシング原油在庫推移
https://jp.investing.com/economic-calendar/eia-weekly-cushing-oil-inventories-1657
しかしそれだけで
原油先物価格が大幅にマイナスになるとは考えづらいです。
投機的なマネーも流入がマイナスの原因
なぜここまで急落したかというと、
先物市場には実需といって
実際に原油の現物を取引している人だけではなく、
ただ単に儲けを得るための個人投資家も含めた
投機的なマネーも流入していたからです。
実際に原油を必要としていない投機筋にとっては
21日の受け渡し日を前に
①権利を持つ人(先物を買っていた投資家)は
モノを受け取らなければいけない
②コロナ影響で原油需要が減っており、
売ろうとしても実需の企業が買ってくれない
③原油を受け取って、保管して、精製して販売するのは
投機筋や個人だと困難
④お金払ってでも権利を手放したい
⑤マイナス価格になる
このような流れで
価格がマイナス圏まで暴落しました。
先物でも受け渡し期日が
先の6月限は 1バレル=20ドル程度で取引されていますが、
状況に大きな変化がなければ
1ヶ月後にはまた下落することがあるかもしれませんが、
今回の相場動向で学んでいるので
ここまでの急落はないのではないでしょうか。
恐らく来月は期近(当月決済)から期先(次月決済)への
ロールオーバー(乗り換え)が積極的に進むと思われます。
いずれにしろ、充分な知識がないまま
金融市場で投機的な取引をすることは危険ですね。
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