「小林さんちのメイドラゴン」で学ぶキリスト教知識
■はじめに
ご無沙汰しております。ここのところバタバタしていて、なかなかnoteの方には手を付けられていませんでした。
更新頻度は今後もまちまちだと思いますが、まあ気楽に書いていきたいと思います。どんな時に書くか?というと、「これは記事にできる!面白い!はまった!」という作品を観たとき、これに尽きます。(まあ、余裕があるときというのが大前提ではあるんですが)
まさに今回はそんな作品との出会いが執筆のきっかけになりました。
■アニメ「小林さんちのメイドラゴン」とは?
今回取り上げる作品「小林さんちのメイドラゴン」は、今月から第2シリーズが放送を開始した、今まさに旬なアニメです。しかしながら、僕はこのアニメの第1シリーズ(2017年放送)を見ていませんでした。タイトルくらいしか認知していませんでしたが、ネット上でも盛り上がっていたし、なにしろ制作があの名門・「京アニ」こと京都アニメーションですから、これを機に最初から追いかけてみようと思い、ほぼ予備知識もなく、動画配信サイトで第1シリーズを視聴したら・・・
ドンピシャでハマった。
日常アニメに萌えとギャグ、そして時たまシリアスが入るなんて、私が最も好きな、大好物なジャンルではないですか!もう一気に全部観てしまいましたよ。
そして京アニ制作とだけあって、とにかく作画がきれい。ぬるぬる動く!なぜ私は第1シリーズを観なかったのかと小一時間問い詰められても、何も言い返せません。
またこの作品は、第1シリーズの監督や多くのスタッフがあの放火事件で犠牲となり、第2シリーズはそのスタッフたちの魂を受け継いだ、渾身の作品となっています。1期をリアルタイムで視聴していたファンにとっては様々な思いがあったことでしょう。本当に2期が帰ってきてくれてよかったですね。
<あらすじ>
毎日せわしなく働くOLの小林さんのもとに、突如として異世界からやってきたドラゴンのトールがやってきます。以前、ひょんなことから命を助けられたトール、、小林さんに恩を返すべく人間のメイドに姿を変え、共同生活を送ることに。その後も異世界から様々なドラゴンたちが人間に姿を変えてやってきて、小林さんの生活は次第ににぎやかになっていきます。
■キリスト教とドラゴンの関係性
というわけでこの作品にはドラゴンがたくさん登場するわけですが、ドラゴンはキリスト教においてはどのような立ち位置なのでしょうか?
聖書においてドラゴン、つまり龍が登場する箇所といえば、新約聖書の大トリを飾る「ヨハネの黙示録」でしょう。
また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた(新共同訳12:3)
などといった外見的特徴や、
また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。 女は身ごもっていたが、子を産む痛みと苦しみのため叫んでいた。また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた。 竜の尾は、天の星の三分の一を掃き寄せて、地上に投げつけた。そして、竜は子を産もうとしている女の前に立ちはだかり、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた。女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖ですべての国民を治めることになっていた。子は神のもとへ、その玉座へ引き上げられた(新共同訳12:1-5)
のような具体的な行動、さらには、
さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。(新共同訳12:7−9)
天使との戦いの様子などが書かれています。
詳しい内容や解釈は省きますが、要するにキリスト教においてはドラゴンはサタン、悪魔の仲間として、神と敵対する存在であるということです。「メイドラゴン」の作中でのクリスマスの話でも、トールが「クリスマス・・・アイツ(神)の息子の誕生を祝うというのは癪ですが・・」というセリフを口にしてがいたりします。
つまり、クリスチャンがドラゴンが描かれたアニメを見るなど言語道断!ましてやドラゴンに萌えの感情を抱くなどけしからん!
なので、今回の記事はこれにて終了~
・・・ってそんなわけないじゃない!
いいですか、これはフィクションですよ!フィ・ク・ショ・ン!
もしそんなことを言う偉そうな信者さんや神父や牧師がいるのなら、その人達からは逃げてください!大至急!今すぐに!
■キャラクターでキリスト教知識を学ぶ
さて、大事なことを強調したところで、いつものようにキャラクター紹介といきましょう。
主人公の小林さんは、システムエンジニアとして働くOL。26歳の独身女性です。
ある日、酔っぱらった勢いでバスを降り山の中へ迷い込むと、そこで剣を刺されて瀕死の状態のドラゴンを見つけます。剣を抜き、命を助けてあげたそのドラゴンこそ、のちに小林さんのもとへやってくるトールなのです。酔っていたこともあり、ノリで「帰るとこがないなら、うちに来る?」と言ってしまったのがすべての始まり。
外見は地味で、どこか気だるげで覇気がありませんが、仕事はしっかりこなしますし、異世界のドラゴン達とも分け隔てなく接する優しさや器の大きさは一目置かれています。
小林さんの職業、システムエンジニアには守護聖人がいます。それはあの聖ヨセフ。言わずと知れたイエスの育ての父親であり、マリアの夫です。IT業界という点でいえばおなじみセビリアのイシドールスも守護聖人。あらゆる書物を収集して百科事典を作り上げた天才であり、それを現代に置き換えれば情報収集、つまりコンピューターや!よし、ITの守護聖人にしてしまおう!というカトリックの臨機応変さを知るのにはうってつけの聖人ですね。
そんな小林さんのもとへやってきたのがトール。ドラゴンです。
元ネタはスラヴ神話に登場する恐ろしいドラゴンらしいのですが、人間の姿になると御覧の通り、かわいくてスタイルの良い女の子になります。
異世界では、ドラゴンとしては人間と敵対する立場でした。ことあるごとに人間を「滅ぼす」と言ったり「下等生物」呼ばわりしていますが、根はとても明るく優しくて気配りのできる良きメイドさん。命の恩人である小林さんのことが大好きで、その愛情表現は時に暴走しがち。小林さんと仲良くしている者に対しては敵意をむき出しします。いいですよね。僕もこんな風に愛されてみたいものです。
メイドにも守護聖人がいます。それは聖マルタ。イエスが死からよみがえらせたあのラザロの姉です。彼女はイエスを自宅へ招いてもてなしたと聖書にあることから、おもてなしのプロ、すなわちメイドの守護聖人となったわけです。
余談ですが、実はこのマルタの象徴にはなんとドラゴンがあります。マルタの聖遺物が発見されたフランスのタラスコンという町に「タラスク」というドラゴンが現れた際、マルタが聖水を飲ませて捕まえたという伝承があるからです。つまり、メイドとドラゴンはめちゃくちゃ深い縁があるってことです。作者の方、もしかしたらこのネタ知ってたのかなあ?
トールの次に小林さんちにやってくるドラゴンがカンナカムイ、通称カンナ。
もう「かわいい」という言葉以外思い浮かばないでしょ、このフォルム。
まだまだ幼く、いたずら好きなドラゴンです。それが災いして、お仕置きに人間の世界へと飛ばされてしまいます。同じく人間界で暮らすドラゴンであるトールを頼って、小林さんの家に一緒に住むことになります。小林さんのことは母親のように、トールのことは姉のように慕っています。
カンナちゃんは学校に通う小学生たちを見て興味を持ち、実際に学校へ通うことに。画像はランドセルを買いに行った時のもの。ランドセルといえば革製品。それを作る革製品の職人の守護聖人が聖バルトロマイです。十二使徒の一人でもある聖バルトロマイは、全身の皮を剝がされるという、想像するだけで痛そうなとんでもない方法で処刑され、殉教しました。それにちなんで皮職人の聖人になったわけですから、何とも面白いですね。
カンナは食欲旺盛で、その辺にいる虫なども捕まえて食べてしまうほど。虫を食べる聖書の人物といえばご存じ洗礼者ヨハネ。彼はイナゴと野蜜を食べて生活していたと聖書に書かれています。
続いてのドラゴンはエルマ。
異世界では人間に対しても一定の理解を示す立場をとるドラゴンです。トールを人間界の脅威となりうる危険な存在と判断し、異世界へと連れ戻すためにやってきました。しかしひょんなことから彼女も人間界で人間として生活することになり、小林さんの働く会社に就職しました。基本的にまじめな性格ですがどこか抜けていて、そんなところもファンから愛されています。
エルマは大食い、それも甘いものが大好物。とにかくスイーツには目がありません。エルマを改心させてキリスト教に導くなら修道院に連れて行くといいかもしれません。というのも修道院ではクッキー、ガレット、マドレーヌ、ケーキ、キャンディーなど、甘いお菓子をシスターたちが心をこめて作っているところがたくさんあるからです。「私も、ここで働かせてくれっ!」と、お決まりのぶっきらぼうな口調で懇願されたら許可しちゃいますね。少なくとも僕が修道院長だったら。
つづいてはケツァルコアトル。通称ルコア。
とんでもないプロポーションの持ち主で、露出度が高い服装ばかりしているドラゴンです。はしたないにもほどがあります。穏やかで物腰柔らかな性格ですが、肉体の方はちっとも穏やかではありません。
そんなルコアさんは、魔法使いの家系に生まれた少年、翔太君(画像右)と同居しています。翔太君の使い魔としていわば僕の立場であるのにもかかわらず、極端なスキンシップで翔太君を困惑させてしまいます。
翔太君よ祈れ!「私たちを誘惑に陥らせず、悪からお救いください」(主の祈り)と祈るんだ!プロテスタントで使われている文語だと「われらを試みに遭わせず、悪より救い出したまえ」だ!とっちでも好きなほうでいいぞ!
最後にファフニール。数少ない男性キャラクター、雄のドラゴンです。
執事の格好に扮したドラゴンです。基本的に不愛想で気難しい性格ですが、ひょんなことから小林さんの同僚・滝谷と共同生活を送ることになります。オタク趣味の滝谷の影響を受け、ファフニール自身もかなりのオタクと化してしまいます。特にゲームが好きで、四六時中オンラインゲームに興じています。また同人誌を作ってコミックマーケット(コミケ)で販売したものの、まったく売れずに落ち込んでしまうことも。なんだかんだで人間界での生活をエンジョイしています。
本を作り、売る。出版ですね。出版関係の守護聖人といえばドン・ボスコこと聖ヨハネ・ボスコですね。サレジオ会という修道会の創設者で、日本でもサレジオ学院などで有名です。さすがにここまでくるとネタ切れ、ごり押し感が否めませんね(笑)
■おわりに
いかがでしたか?メイドラゴンのキャラクター達。どれも個性的な面々ですね。基本的にはファンタジー要素よりも、日常アニメとして肩の力を抜いて観れる作品です。まあ、深夜アニメですから若干の下ネタやオタッキー要素はありますが・・・
とにかく今は、現在放送中のメイドラゴン第2シリーズが楽しみすぎて、それだけを励みに生きているといってもいいほどです(笑)とりあえず、アニメが終わる9月までの間は、なんとしても生き延びてやろうと思います(笑)
それではまた!