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不動産テック企業が知っておくべき、工務店が直面する課題~激動する住宅市場の変化とその対応について①【顧客の変化と価格の変化編】~


みなさんこんにちは。
リブ・コンサルティングの篠原です。

本日は、工務店が向き合わないといけない令和時代の”住宅市場の変化”とその”対応”についてお伝えしたいと思います。

この記事を読む事で、工務店が向き合い、適応していかないといけない顧客の変化や住宅市場を取り巻く外部環境の変化がどのようなものなのか。その中で住宅・不動産テック企業は何をすべきなのかをまとめさせていただきました。ご一読いただければ幸いです。


二極化の進む住宅業界の実状と工務店に求められること

現在、住宅市場においては、持家や分譲の需要が減少傾向にあり、業界には向かい風が吹いている印象があります。

人口の減少や不況の中でのリノベーションの台頭、ウッドショックや資材の高騰など、この流れをさらに大きくする様々な要因が襲ってきており、実際にこの減少傾向が起きているのは事実ではあります。

しかし、一方で目の向け方を変えてみると需要減少の新築市場の中でも、戸建て住宅の販売数は2022年度に39.2万戸が新しく建築されているという事実が存在し、需要の一部は継続しているという事も見てとれます。

つまり、全体の母数として数は減ってはいるが、全く需要が存在していないわけではなく、一定数の市場は存在しているという事です。

そして、この需要をしっかりと拾い漏らさずに売上に変える事で、この住宅・不動産業界に吹く向かい風を追い風に変えている企業が存在しているという事でもあります。

特に、棟数規模200~500棟の会社がその風をうまく捕まえている様子が見られます。

住宅・不動産業界全体としては、この3年間で3千戸の新築減少が起きている一方で、200~500棟規模の会社は、「1万4千戸」増加しています。つまり、規模の小さい会社が苦戦を強いられている中で、棟数規模の大きな会社はしっかりと新しい需要を捕まえており、このような二極化や寡占化の動きは今後も続くと予測されます。

では、二極化のどちらにいる会社なのかを決める差はどこで生まれているのか。要因とは何なのか。それは、大きく2点存在しています。

①顧客の変化への対応

まず1点目として、顧客の中で起きている”住宅の存在意義の変化”を正しく捉え、それを「価値」に変える事ができているか、が挙げられます。

例えば、終息の動きを見せ始めているコロナ禍での「おうち時間の過ごし方の見直し」やテレワークの普及による「働き方の見直し」などの影響への対応です。

顧客の”住まいに求めるもの”に変化や見直しがおきているという事を正しく理解し、それを着実に提案に取り入れ、「価値」として顧客に提示できていたかどうか、が差を分けた1つのポイントとなっています。

特に近年の住宅市場では、顧客の選択基準が従来の「間取り」だけでなく、より広範な視点に移行しているという変化が見受けられます。事実、6年前と比較して「間取り+α」を重視する人々が増えています。

弊社で実施したアンケート調査データによると、顧客ニーズが高まっている要素としてデザイン性、メンテナンスコスト、快適性、地震や災害への強さ、そして設備・使用性といった点が挙げられます。さらに、特徴的な点として長期的な視点から見た「資産価値」も重視する傾向にあります。

つまり、近ごろの住宅購入者は、単に家の形状や部屋数だけでなく、住まいの品質や耐久性、コストパフォーマンス、さらには自己表現としてのデザイン性や生活の質を向上させる設備等にも注目しています。

これは、住宅を単なる「居住スペース」としてだけではなく、長期的な生活品質や資産として捉える顧客の意識の変化として見てとることができます。

このような顧客の変化に対応するためには、事業者側も新しい視点でサービスの提供や商品開発を行う必要があり、従来の間取り中心のアプローチから、「間取り+α」を提供することが求められているのです。

②価格の変化への対応

2点目として、木材や資材の価格高騰といった外部環境の変化による住宅価格の単価向上に対応できているかが、が挙げられます。

資材の価格高騰により、従来通りの利益を上乗せして商品を販売しようとすると、当然住宅の販売価格が上がってしまいます。

例えば、購入予算が2,500万円前後がボリュームゾーンの客層に対して、2,500万円の商品を売っていた工務店が、今まで通りの商品を、特に販売方法を変えずに2,800万~3,000万円の住宅価格で販売しなければならなくなっているのです。

値段の上がった商品を今まで通りの客層に、今まで通りの販売方法で売っていく事が難しくなっているのです。

現に、注文住宅を検討していたが、分譲住宅を購入したという顧客は、購入者の約4割に見られ、そのうちの約8割の方が、当初の検討予算額と最終的な建物本体の費用とで予算オーバーを経験した事があるという結果になっています。

最終的に注文住宅ではなく、建売住宅を選ぶことになったこの顧客層からした時に、上昇した値段以上の価値を注文住宅では感じる事ができなかったという事が言えると思います。

原価が高騰した事を受け止め、自社の強みをどのように再定義し、今までとは異なるターゲットに訴求するのか。価格の変化に対応するという事の意味を考えていく必要があります。

ここまでを総括すると、住宅環境の変化としては、大きく「顧客の変化」と「価格の変化」の2つです。

この変化に対応できるか否かによって二極化の寡占市場で生き残っていけるのかが決まってくるのです。


住宅市場の変化に対応するための方法について

それでは、これらの変化に対応していくために、住宅会社は一体どのような動きを取っていく必要があるのか。そのポイントを深ぼっていきたいと思います。

①顧客の変化に対応する方法

住宅業界において、単に間取りだけでなく、「間取り+α」を重視する顧客が増えているという現状を踏まえ、工務店としては今後、この間取りに組み込む+αを何にするかが重用になってきます。

しかし、この+αの差別化がどの工務店でも取り入れる事ができてしまうような内容では差別化にはなりません。例えば、自分たちが根を張る地元にフォーカスした戦い方を行うなどによって、自社だからこその差別化が行えるようになります。以下に具体例を記載してみます。

  1. 地域特性を踏まえた提案
    地元に根差した工務店としての土台を作るうえでは欠かせないのが地域特性を踏まえた住宅提案です。供給のしやすい差別化のない住宅建築が進行している日本の住宅市場の中で、しっかり地域特性を踏襲した提案をしながらの差別化を図れると良いと思います。

    例えば、石川県と鹿児島県の違いで考えてみます。
    石川県は、日本海に面していて、冬期には豪雪地帯となることもある積雪地域です。ですので、屋根はスムーズに雪の落とす事のできる急勾配の屋根が好まれます。そこに、昔ながらの合掌造りの住宅建築の考え方を取り入れた平屋をリブランディングしていくなども一つの考えです。

    また、鹿児島県は、九州の最南部に位置し、温暖な気候が特徴な一方で、夏場は強い日差しが降り注ぐ地域であり、また台風による被害も多い地域です。
    夏場の日差し対策と台風による強風対策を踏まえ、ランドスケープ(お庭)設計を住宅の一部として取り入れて、敷地内の樹木や植え込みで、直射日光を遮り、風の速度を落とし、建物を風や飛散物から守るバリアの役割を果たします。

    地域に対した住まいやすさを取り入れながら、ただの住宅ではない自分達らしい住まいの実現ができる。このような、オンリーワンを感じさせるような差別化が重用です。

  2. 地元のネットワークの活用
    地域に根差した工務店だからこそ広げていく事のできる地元のネットワークを中心に活用した自社のブランディングを構築していくと良いのではないでしょうか。
    具体例としては、地元の木材を活用し、柱や梁、できれば合板まで含めて、オール県産材で構成したり、地元だからこその味が出せる大谷石や御影石などの地方ならではの素材を用いて内外装に一工夫入れる差別化を図ったり、和紙や陶器といった工芸品を組み込むなど、その地域に住まうという意味を感じる事のできる空間を提供していく等がいいかと思います。

以上のような取り組みを通じて、工務店は現代の住宅購入者の多様なニーズに応え、自社の競争力を強化することが可能となります。

②価格の変化に対応する方法

住宅業界において価格の変化に対して、工務店が取る事の出来る対応策としては、大きく以下の3つになると思います。

  1. 販売商品を変えずに、ターゲット客層を変える。
    新たなターゲット顧客層へのシフトを考えます。この場合、従来とは異なる市場に焦点を合わせ、新たな顧客ニーズに対応するためのマーケティング&セールス戦略を策定します。

  2. ターゲット客層を変えずに、販売商品の価格を抑える。
    従来の顧客層を維持し、その予算範囲内で商品を提供し続けるためには、価格を抑制する取り組みが必要となります。このためには、効率化やコスト削減に努める必要があります。
    例えば、新しい仕入れ先の確保、工程の見直し、または廉価な代替材料の探求などを行います。

  3. ターゲット客層・販売商品を変えずに、顧客の予算を引き上げる。
    顧客層を維持しつつ、価格上昇を納得させるためには、販売方法の再考が求められます。
    その際、コストアップした分の費用を払う意義を顧客が納得できるように、商品の独自性や付加価値を強調する営業手法の確立や長期的なメンテナンスサポートやアフターケア、品質と耐久性の向上など、顧客にとっての価値が増すような取り組み販売方法の見直しをしていきます。

このような試みから、自社に適した"価格変化"に対応するための施策を取り入れていく必要があります。


住宅・不動産テック企業が今後取り組むべきこと

このような課題と向き合わないといけない工務店が多くいる中で、自社のみで顧客の変化を捉え、それを具体的な対応方法として落とし込みを行う事ができる工務店が少数である事こそが、二極化に向かっている大きな問題点です。

住宅・不動産テック企業としては、単なる業務効率化の文脈だけで訴求するだけでは工務店の課題を解決しきれないため、いかに上記の文脈に沿って提案できるかが重要になるでしょう。

例えば、下記のような2点は重要な要素として挙げられます。

①顧客の変化に対応した新たな付加価値提案

本質的なDXに近しいようなデジタルを活用することで今までになかった顧客体験を創造し付加価値をつけられることがこれからの工務店経営に求められる需要になるかと思います。

もう少し具体的な事例にすると、

地域特性を踏まえた住宅訴求を行う上で、その地域に起こり得る災害に対しての住宅強度を、AIやデータ分析を活用して、建築物の構造や使用材料の最適化を行い、建物の安全性を確保する。そして、顧客がそれを実感できるように数値化した上で、いつでも確認できるようにする事ができると良いかと思います。

また、地域ならではのデザイン性の訴求としては、競合が多く、差別化が難しいデザイン分野の中で、3DモデリングやVR技術を活用し、顧客がよりその特色のあるデザインを体験し、わかりやすく認識できるようなプラットフォームを提供する等の顧客体験を提供するなどが挙げられます。

不動産テック企業は、これらのような需要を見つけ、解決策を提供することで差別化を図ることができますが、特に今の時代においてポイントになってくるのは、顧客にどれだけ付加価値を感じてもらえる体験を提供する事ができるかが1つのポイントになってくると思います。

②一石二鳥の自社リソース活用

単なる業務の効率化だけではなく、それと同時に歩留まりを向上させる、利益率を可視化させコスト削減に繋げられるなど一つのソリューションでもう一個踏み込んだ提案ができないと厳しいということです。

例えば、見積もり作業で言えば、作業自体の生産性を上げるだけでなく、粗利を管理することで、粗利率を上げ、見積もりの精度を上げることで、無駄なコストを削減し、さらに粗利率を高めるといった内容が求められます。

また、プラン提案業務で言えば、プラン提案の生産性を上げるだけでなく、プランヒアリングの精度を高めて、顧客の要望をいち早く叶えるプラン提案に繋げる事で、プラン提案精度の改善を行い、契約率の向上に繋げることが重用です。

これらの取り組みは、工務店のビジネスパフォーマンスを全体的に向上させるとともに、実利に結びつける事で企業の持続的な成長を支えるための鍵となります。ツールと共にパートナーである工務店が成長していく。このような強固なパートナーシップの構築ができると、競争優位性を築くことが可能となります。


おわりに

いかがでしたでしょうか?

今回は、激動する住宅市場の中で工務店が取り組むべき対応についてと、それに対して住宅・不動産テック企業が今後取り組んでいくべきポイントについて触れさせて頂きました。

こうした目線で、サービスの改善や新技術の開発に目を向けてみると、貴社のプロダクトグロースに向けての活動のヒントの1つになるかと思います。

今回の情報が、皆様の展開している事業や手がけるプロダクトへの成長に貢献できていれば幸いです。

株式会社リブ・コンサルティング
住宅・不動産インダストリーグループ
マネージャー
篠原健太

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