マスコン2

ARA2E 大規模戦闘デザインのテクニック その2 《戦闘・FS判定のサイクル》

大規模戦闘はプレイヤーに常に「戦闘を行う」「FS判定を進行させる」の二択をつきつけます。これが大規模戦闘を通常のアリアンロッドRPGの戦闘との大きな差別点であると言うことができるでしょう。

ゲーム的にはこの二択のうちいわゆる「正着」と呼べるような選択肢が進むにしたがって変化するのが良さそうです。どちらか一方だけをやり続けるのが正着であるならば、大規模戦闘ではなく通常の戦闘やFS判定をやってもあまり変わらないわけですからね。

恐らくデザイン時点での意図としては「モブエネミーを倒して敵の戦力値を削り、進行判定の結果修正を有利にした上でFS判定に入る」という戦闘からFS判定への一方通行の移行が本線であると考えられます。

戦力差によるFS判定結果への修正は大ざっぱに言って戦力差による判定一般への修正の2倍の効力があるので、相手の戦力値を減らした時(=戦闘を選んだとき)に戦闘へのボーナスよりもFS判定へのボーナスの方が必ず大きくなるから。

しかし大規模戦闘をこの通りにデザインしても、上手く正着の変化を起こせない場合があります。例えば、《ブレッシング》のような強力な判定補助のあるパーティで敵を攻撃することなくFS判定でクリティカルを出し続ける戦略が成立してしまうパターンや、範囲攻撃で毎ラウンドモブエネミーを一掃できることが初ターンに判明し以降モブ狩りをしているだけで戦力値勝ちが確定するパターンなどです。これらは極端なアンチパターンですが似たような状況はいろいろ考えられると思います。

これはプレイヤーが選んだ行動によって起きる、以降の行動のメリットへの影響が上手くデザインできていないことに起因します。試しに戦闘・FS判定を行うことはそれぞれその後の行動のメリットにどのような影響を及ぼすか考えて見ましょう。

- 戦闘を行って
    - 戦闘のメリットが
        - 増える -> 戦力差修正の増加。戦線崩壊によるボス攻撃チャンス。
        - 減る -> 敵を倒してしまい的の数が減る。
    - FS判定のメリットが
        - 増える -> 戦力差修正の増加(効果大)。
        - 減る -> あまりない。
- FS判定を行って
   - 戦闘のメリットが
       - 増える -> 攻撃に有利になるイベントの発生。
       - 減る -> あまりない。
   - FS判定のメリットが
       - 増える -> 判定内容の変化。
       - 減る -> 制限人数に達する。判定内容の変化。

前回の話にもでてきた通りプレイヤーのアクションの結果としてもたらされるものはポジティブな内容であることが望ましいです。そして戦闘・FS判定を行った結果、反対の行動を取るメリットが相対的に増えて欲しいので、この中で重視すべきは「戦闘を行ってFS判定のメリットが増える」ものと「FS判定を行って戦闘のメリットが増える」ものであると分かります。

(a) 戦闘を行ってFS判定のメリットが増える

上記の通りこの点はシステムのデザイン段階で大規模戦闘に組み込まれているため多くの場合で上手く機能します。ただし低レベル帯で大規模戦闘を行う場合は必然的にエネミーのレベルも低くなり、結果的に戦力値の変動幅も小さくなるためこの機能の影響も少なくなります。これを避けるためには戦力値を持った副官NPCを敵軍に配置したり、モブエネミーをやや多めに配置したりして戦力値の変動に下駄をはかせるとよいでしょう。

1~10レベルのエネミーを倒した時の戦力値変動は3なのに対して21~30レベルのエネミーを倒した時は9。先手《トルネードブラスト》でモブエネミーを3体倒した時に前者はおおよそ戦力-10(戦力差修正+1)なのに対して後者はおおよそ戦力-30(戦力差修正+3)の価値がある。
アリアンロッドRPGの(命中判定を除く)一般的な判定値はほぼ線形で伸びるので戦力差修正までレベルによって変動すると、実は通常の判定値と合わせてレベルが達成値に影響する部分が累積していることになる。
目標値をそれに合わせて高めにしてもいいのだが、「フェイトを使って無理矢理不利をひっくり返す」という安全弁は使いづらくなる。

(b) FS判定を行って戦闘のメリットが増える

こちらがシナリオを準備する人の腕の見せ所になります。上記の通りFS判定を進行させた時にPCの攻撃を補助するようなイベントを起こせばいいのです。分かりやすい所では戦場オブジェクトの配置・撤去でしょう。「味方の[攻撃艦]が戦線に到着する」「味方のトンネル部隊が相手の[砦]を破壊することに成功した」などです。

逆に「敵の頭数を減らして火力を削ぐ」というモチベーションを奪ってしまうため味方の[塹壕]配置などはあまり多用すべきではないかも知れません。シナリオ上導入が必要な場合は大規模戦闘開始時点ですでに配置するかFS判定の後半にイベントを動かせないかを検討する余地があります。

また[大砲]などのPCが手番を使わずに攻撃を行う戦場オブジェクトは必ずしもプレイヤーを戦闘へと駆り立てるとは限りません。例えば前線・中衛メンバーが全員で総攻撃しないと敵前線のモブエネミーを毎ラウンド殲滅できなかったのが、大砲が出現することで攻撃の手が空きよりFS判定を進めやすくする結果になりうるからです。

これら戦場オブジェクト配置のデメリットは総じてパーティの構成によるところが大きいです。踏み込んだ点について一般化できないのは口惜しいですが、PCたちのデータをよく見て考えましょうと締めさせていただきます。

ex.
FS判定の進行イベントで「強力な地術士の儀式魔法が完成した。[塹壕]を前線に配置する」→
「[塹壕]を前線に配置する。味方本隊の到着まであと少しだ!」
「強力な地術士の助力を得ているため前線に[塹壕]が配置されている状態で大規模戦闘を開始する。」
([スリップ]付与のシナジーが見込めるパーティで)「強力な地術士の儀式魔法が完成した。前線にアースエレメンタル1体が配置される。このキャラクターは可能であるかぎり味方キャラクターをかばおうとする。」

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