薄桜鬼風華伝プレイ感想(前)
※ゲーム『薄桜鬼 風華伝 for Nintendo switch』のネタバレを含みます
※ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計編のネタバレを含みます
0. 経緯
推している梅津瑞樹さんがミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計編で主演をされていたので見に行きました。
大変楽しい舞台だったのですが、シナリオ中に出てきたほかの隊士さんが生きる道はないのか…!!!!となり、他ルートのシナリオがとても気になりました。
有識者に尋ねたところ、所持しているハード(Nintendo switch or PS4)では、薄桜鬼風華伝がよいだろうというで、人生初の乙女ゲーム作品にチャレンジすることになりました。
流石10年以上愛されている作品なだけあって、とても楽しかったのと、たくさんのルートをやっていく中で頭の整理をしたいなということで、プレイ感想をルートごとに書いていきます。
といっても二周目以降はシナリオを追うのを優先しているので、攻略情報をがっつり見ています。悪しからず。
あとはときめいた~という感想もあまりないです…すみません…
順番はプレイした順になります。
1. ノーマルエンド(誰のルートにも入らないまま華の章を迎えるルート)
最初は攻略情報は見ずにやってみよう!と思ってやったら、このルートになりました。キャラの掘り下げがない分、風の章で鳥羽伏見の戦いまで、華の章で鳥羽伏見後から五稜郭までの戊辰戦争を追うストーリーという構成がわかりやすかったです。
新選組から離れ、実家で風の便りに新選組の隊士たちが散っていく様を聞き届けていくという終わりでした。
このルートは藤堂さんと山南さん以外は羅刹にならなさそうなので、羅刹として生きるなら人間として死ぬほうがいいなと思っている私は、最大多数の最大幸福が是という観点ならば、これが最良では…と思いました。
一方で、主観でいえば風の章までで新選組のキャラクターがすごく良くしてくれたので、みんなの終わりを近くで見たかった!という思いや、信念に死ぬことが美徳とされていた時代なんだろうなという理解もあり、このモチベーションまでプレイヤーをもっていってくれるシナリオの強さに感動もしました。
あとは、これは、ミュージカルへの感想になりますが、劇中でアクセントが置かれていたセリフが、ゲーム中で選択肢を選んだときのセリフだったりするところにプレイしながら気が付きました。ゲームシステムをうまく劇に取り入れていているんだなあと感心しました。
2. 斎藤一ルート
個別ルートの攻略を始めていきます。まずは、ミュージカルを観劇したときに、会津城での別れのシーンと、日替わりの「誰が一番強い?」のシーンなどで印象に残っていた斎藤さんを選びました。(あとは1周目で選んだ選択肢が比較的斎藤さんが登場しがちな選択肢だったというのもある)
相馬さんではないのは、こちらについては全部のルートを知ったうえで改めてやりたいので、最後にやると思います。
相馬編の内容と、1周目のエンドも相まって、「この話は攻略対象以外死ぬのか…」と思っていたので、原田さんと永倉さんが生きたというのがびっくりしました。じゃあみんな生きてよ
ラストバトルで助太刀してくれた原田さん、永倉さん、藤堂さんと笑顔でじゃあね!とした直後に藤堂さんだけ死んだと知らされて情緒がめちゃくちゃになりました。みんな生きてよ…
「変わらぬものをこそ信じている」と斎藤さんが言ったシーンで、主人公が受け取っていた桜の花の押し花を、最終決戦前に二人で眺めるシーンでは、そうくるか!と膝を叩きました。うますぎる。
あとはずっと命令だから、と、たとえ立場が悪くなってもどんな仕事も受ける斎藤さんを丁寧に丁寧に描いていたおかげで、自分の命令でこうすると言うセリフの、斎藤さんの想いの説得力が裏打ちされているのも上手かったです。
一方で一周目が人づてに事実だけを聞くというながれだったのをふまえると、あの一周目の新選組のみんなも、こんな強い想いを抱えていただろうなとも思いました。
でも彼らは負けていて、賊軍なので、ずっと後世の時代の研究でしかこういう想いが人々に知られる可能性がないんだろうなと考えるととてもしんどくなりました。官軍は盛ってでも武勇伝として語られやすいので。
3. 山南敬助ルート
舞台を見て気になっていた人その2。一周目のルートで山南さんが変若水を飲むまでのやり取りを見ていたので、なおさら幸せになってほしいし、斎藤さんルートでついに寝返っていたのでそこでも気になり選択しました。
いい話でした…!!
変若水を幹部に配るシーンで、「彼らにも責任を取ってもらう」と言っていたことと同様に、変若水の研究を進めた責任として、羅刹が生きていく場所や時間を用意するのが山南さんの行動原理だったんだなと、読みながらしみじみしました。
責任を取るという信念のために、必要があれば鬼ともつながるし、千鶴と別れて新選組を出ていくという選択もする。
そして、何があっても山南さんを信じぬくという千鶴の姿勢がかっこよかったです。
山南さんがいなくなった後に喧嘩別れで江戸にとどまる選択をした、という描写で、"土方お兄さんと喧嘩する千鶴ちゃん"の図を想像してなぜか和みました。相馬編で土方さんが仲人お兄さんやっていたのもあって、なんとなく土方さんと千鶴ちゃんを兄妹的に見ているところがあるのは否めません。
ラストの吸血鬼伝説を探しに外国に行くというエンドも良かったです。ルーマニアかな。
あと山南さんはいろいろとしぐさが紳士的だなーという印象です。歳と立ち位置によるものだと思います。
そしてこのルートでは、薫さんが千鶴の双子の兄だということが判明しました。この薫さんがすごく悲しくて。
自分が欲しくてももらえなかったものを全部持っている妹への憎しみと、そこに埋もれた唯一の肉親である妹へのひとかけらの愛情。
(時代の流れはどうあれ)民のため国のため恩のためにと戦い、そこに信念を置く新選組の利他的な考え方に対して、薫さんは利己的な考え方なので、対比がいい。
正義と存在理由の戦いという感じでとてもよかったです。
肉親同士なので恋愛関係はないとしても、兄妹仲良く暮らすようなルートはないんでしょうか。ないんですね…
4. 沖田総司ルート
だって毎回病で亡くなるから
糖度高めだなという印象でした。特に華ノ章。千鶴が圧倒的鈍感ヒロインで、王道だ!となりました。
しかしこの沖田さんは余命が幾ばくもないので、毎回ラブコメしてるなあと思った直後に「でも…」としんどくなりました。
羅刹化が結構早くてびっくりしました。相馬編でも斎藤さんルートでも鳥羽伏見あたりだったので、山南さんと藤堂さん以外はそこなのかなと勝手に思っていたので。
羅刹になったのに結局寝込んでしまい戦には出られずに終わるというところが切なかったです。
このあたり、タイムトラベルの親殺しのパラドックスに対する、イベントの自己修復の証明を彷彿とさせて、そちらの方面が好きな人間としてザワザワました。
宇都宮での土方さんとの対面シーンでの土方さんの慟哭、三木さんの演技含めてよかったです。思わずスイッチを放り投げて、顔を覆いたくなりました。どこをどうしたらあんな苦しそうな声が出るんだ…一番好きなシーンです。
あとは最初から変なことしたら殺すよと言っていた沖田さんが、最終戦前に「(もし千鶴が揺らぐことがあれば)その時は俺が殺してあげる」と言うのがよかったです。重みと信頼関係がビシバシ伝わってくる良セリフ。
斎藤さんルートの「自分の命令で」もそうなのですが、鮮やかな回収はオタクが好きなやつですね。良いものを見ました。
若干のヤンデレ感も感じつつ、からの、日向ぼっこで他キャラの情報が一切出てこない二人だけの世界エンドもよかった。
それから、沖田さんルートでは山崎さんが華ノ章でも生きていて!!!!!生きて!!!!!いて!!!!!!!!!
一周目と斎藤さんルートでは鳥羽伏見の戦いで死んだと聞かされ、山南さんルートでは死の間際に羅刹として生きる決意をしたけど間に合わず。
そんな山崎さんが生きて華ノ章で姿を見せてくれたのでとてもうれしかったです。沖田との掛け合いもとてもよかった。
そのうえで宇都宮直前で亡くなってしまうのがつらかったです。また救えなかった…
周回のたびに山崎さんにクソデカ感情を抱いてしまうので、山崎さんルートやるタイミングに悩んでいます。
5. 伊庭八郎ルート
そろそろ新選組外の人のルートをやろう~と思って選びました。
シナリオの面白さが今までで一番刺さりました。
特に箱根でのクライマックスに崖から飛び降りるシーンなんか、映像でやって!!!!!と深夜にもかかわらず思わず立ち上がってしまうほど興奮しました。
いままでプレイしたルートは、羅刹としてどう生きるかとか、人間と羅刹の折り合いとか、人間同士の信念のぶつかり合いというのに重点を置いて描かれていたと思っているのですが、伊庭さんルートは対である鬼の腕を持つ者同士の対比であったり、鬼の本能と己の本能のせめぎあいであったり、これまでとは違った側面でこの薄桜鬼の世界観にアプローチしているなと思いました。
言ってしまえば、伊庭さんVS武田さんの構図に持っていく流れって、新選組側で否定された『羅刹に羅刹をもって対抗する』ことでもあるんですよね。
人間と鬼の見ている世界観の違いをとても感じました。
伊庭さんが「千鶴ちゃんは普通の女の子だから」と何度も言い聞かせるように、千鶴の普通の女の子さが強かったなと思います。
戦いの中にあれば仲間の死を乗り越えてでも前を向くような強さよりも、たった一年前まで一緒に暮らしていた人たちの死を知って、夜に泣いてしまうような普通さがある。どの千鶴ちゃんも好きです。
あとは、今まで何度もめぐってきた新選組の戦いを外側から見るというのがよかったです。
それこそ、特に戊辰戦争に入ってからは新選組が坂を転げ落ちるように死に向かっていく雰囲気があって、毎周しんどくなっていたのですが、
「新選組が旗を掲げてくれるから戦える人がいる」
「いまこうして戦うことで、幕府のこれまでの戦いについて後世の人の感じ方が変わるかもしれない」
といった感じの伊庭さんのセリフで、あの悲しさは無駄にはならないんだなと救われた気持ちになりました。
薄桜鬼の世界観への違うアプローチだったり、外側から見た新選組だったりというのを抑えつつ、幼馴染補正で風ノ章からかなり甘さのある恋愛パートの展開になっているのも上手かったです。話がうまくまとまってた。
サブキャラクターだとやはり本山さんがよかったです。親友の恋路を見守りつつ、まじめさに辟易したり茶化したり。本当にいい人だった。
いい人だったのでなくなってほしくなくて、箱館入ったあたりからずっと「本山さん死なないで下さい」「生きて」「後生だから」と言い続けながらプレイしていたのですが……はい…………。
井上さんとか本山さんとかが生きるルートが欲しいです。みんな生きてマジで
6. 永倉新八ルート
これまで毎回戊辰戦争中に途中離脱していた永倉さんルートです。
鳥羽伏見の戦いの中で羅刹化する永倉さんが、羅刹としての自分を受け入れられずに葛藤するという展開でした。
プレイ済みルートでは、羅刹化した後はそんな自分も受け入れつつやるべきこと・したいことをするという傾向だったと思うので、大きく違うところだと思います。
永倉さんは王道的なヒーローというよりかは、近所のお兄ちゃんというか、もう少し普通な感じだったかなと思います。自分で変若水を飲んだわけではなかったり(ここ、源さんもつらかった)、羅刹として扱われて荒れたり落ち込んだりするところだったりが特に。
そういう永倉さんらしさが、兄と妹分という中盤まで続く千鶴ちゃんとの関係ともマッチしていて、説得力がありました。
この兄と妹分について、華ノ章の途中、靖兵隊において千鶴を弟分とするといった永倉さんに、「妹分から格上げになったんじゃなかったっけ…」となるところ、面白かったです。私もそう思っていたんだけどね。
自分自身と羅刹化のせめぎあいの中にいる永倉さんが、自分らしさに向き合って羅刹の力を使わないで千鶴と生きていく、守っていくと決意するまでが、それこそ平助が羅刹になって、親友への想いと羅刹への感情のせめぎあいになったあたりでのやり取りから丁寧に丁寧に重ねられていっていました。
前述の通り、私は永倉さんを普通に近い人として見ていたので、ラストバトルや天霧との一騎打ちで見られた永倉さんの強さに、少年漫画的な文脈を見出してしました。強い。本当に強い。いい最終回だった。
千鶴をそばで守っていくために、すっぱりと戦いから手を引いて、手段を選ばずに足元を固めていったプロローグも、守るというところに重点を置いた、また別の戦い方でよかったです。
終わりも幸せになれよ!というよりかは、幸せになってくれてよかった!という気持ちでした。
切ないのは近藤さんとの関係ですね。
永倉さんと近藤さんは似ているからぶつかる、という文脈でのフォローや、近藤さんを偲んで原田さんと酒を飲みかわすシーンがあったとはいえ、あの喧嘩別れで攻略ルートも終わるんだな、思いました。それはそれでいいんですが。
7. 山崎烝ルート
各ルートでクソデカ感情を抱いてしまっている山崎さんルートです。
沖田さんルートで華ノ章でも山崎さんに会えた時に大喜びしていたのは前述の通りなのですが、山南さんルートで江戸に戻る船の中で羅刹になり損ねて亡くなったのもつらくて……いや、あのシーン、羅刹になっていたらそれは幸せだったんだろうかみたいなところはあるんですけど。
そういう答え合わせも含めてという気持ちでプレイし始めました。重い。
監察方という立場のミステリアスさと、不器用さが感じられる物言いから、絶対いい人じゃん、とは思っていたんですが。いいひとでしたね。
序盤の、局長命令でお団子屋さんに誘うイベント、慣れていないからこそ出る照れにピュア…!!!!!!と思わず天を仰ぎました。このイベント、千鶴にちゃんと君は信頼されているよと改めて言葉にしてくれるところも素敵でした。
前線でなくとも、それぞれの立場での戦いに全力を注ぐ。
そんなお互いを尊重しあい、いつしか惹かれていく。
やがて行き着く人ならざる道と、黒幕である父の存在。
歴史に残らなくとも、互いと大切な仲間のために闇で生きていこうと手を取り合うのだった。
みたいな風ノ章、めちゃくちゃオタクが好きなやつで風ノ章終わりの時点で拍手喝采でした。いい話だった…。
華ノ章に入ってからも二人の信頼関係が一切ブレずに問題に立ち向かっていく姿もカッコよかったです。
血をすするカットが手の甲なので、これはこれは…となったらちゃんとシナリオ中で回収された。好き。
キャラクターだと、土方さんがとてもかっこよくて。ラストシーンとかもう…かっこいいよお兄さん
山崎さんが土方さんをとても尊敬しているんだなというのも伝わってきて、少年漫画的にもとても熱かったです。
同じように沖田さんも。沖田さんが近藤さん救出に出てきたシーン、羅刹化したのだと思って思わず身構えたんですが、まさかの生身。化け物(誉め言葉)だ…これがラストの父様をぶん殴るシーンや、医者になるシーンにつながっているところがよかったです。
羅刹化をきっかけに影になった二人に、病によって表舞台を降りなくてはならなくなった沖田が、人間もやれるんだよと見せて、人間としての道を見せる。
あと江戸で井吹君が出てきましたね。頭の中にある歴史上に人物名リストいなかったので調べたのですが、黎明録の主人公でオリキャラだそうですね。黎明録、やってみたいけどハードの壁があります。
これはゲームのつくりに対しての感想になりますが。印象的だったのが、風ノ章での松本先生の登場シーンの選択肢です。松本先生への声掛けを「お願いする」or「自分でする」かを選ぶあそこです。(攻略の順番上)ここはずっと「お願いする」を選んでいたのですが、「自分でする」を選ぶと山崎さんの好感度が上がるというのを今回初めて知りました。
甘えるよりも自分でできることは自分でできる範囲でやる人に惹かれるのか、と思いました。
で、鳥羽伏見の戦いで千鶴の、「刀を振るわなくとも、けが人の手当てをするのが私の戦いです」という発言がある。
この考え方を羅刹になってからの山崎さんは意識していたので、好感度があがる選択肢の一つ一つもちゃんとシナリオにつながっているんだなと、ゲームのつくりに改めて感心しました。
7.5 一息
ここまでプレイしたところで、体調と仕事の関係で夜に時間が取れなくなってしまったので、一度感想を上げることにしました。
4月中には残りのルートができると思います。とてもとても楽しみです。