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【5/11更新】毎日新聞5/8付、入管法改正関連記事に抗議しました

2024年5月8日付で、毎日新聞は「永住者、税金など未納は1割 厳格化めぐり国が初公表」という記事を配信しました。
この記事のタイトルと内容は、日本に住む永住者に対する偏見を煽るものであり、誤報である可能性もありますので、毎日新聞社の問い合わせフォームでお問い合わせ・抗議をさせていただきました。

毎日新聞社に送付したお問い合わせの文面を以下となります。
何とぞご一読いただき、ご賛同いただける場合は拡散にご協力ください。

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貴社所属の三上健太郎記者が、5月8日付で、以下の記事を執筆し、配信されました。

「永住者、税金など未納は1割 厳格化めぐり国が初公表」
https://mainichi.jp/articles/20240508/k00/00m/010/205000c

この記事を拝読したところ、看過できない内容(誤報やミスリードの可能性あり)があると考えましたので、お問い合わせさせていただきました。

【質問1】

本記事のタイトルに「永住者、税金など未納は1割」とあります。これは「永住者の1割は税金などを払っていない」というふうに、永住者にとってマイナスな印象を読者に与えるものです。
しかし本文を読むと、この数字の根拠となるのは「23年1~6月に審査を終えた1825件のうち、未納は235件(12・8%)あった」という記述だけです。
【23年1~6月に審査を終えた1825件】のうちに【未納は235件】というサンプリング結果は、なぜ「永住者の1割は税金などを払っていない」という結論になるのでしょうか?
未納の235件を含め、「審査を終えた1825件」にすべて永住許可が下りたのでしょうか?(これは記事からは読み取れない事項です)
もし税金などの未納があった235件の申請に永住資格が下りなかったのなら、これらの申請者はそもそも永住者ではないので、「永住者の1割が税金を未納」というタイトルは、統計上のミス、つまり単なる誤報ではないでしょうか?

【質問2】

かりに1825件はすべて永住申請が許可された事例であり、そのうち235件に税金等の未納があったことは事実だとしても、そこから言えるのはせいぜい「永住者の1割は税金等の未納・滞納歴があった」ということだけではないでしょうか?
永住許可の申請時点で税金や社会保険料の未納があれば、ほとんどの場合、永住許可は下りないと思われます。永住許可が下りたということは、未納や滞納をした人たちも未納分をきちんと追納したのではと推察されます。
この記事のタイトル「永住者、税金など未納は1割」は、あたかも「今日本に住んでいる永住者の1割は現在進行形で税金の未納を続けている」という誤った印象を読者に与えるものであり、明らかにミスリードではないでしょうか?
このように永住者への偏見を煽るのは、貴社の意図することでしょうか?

【質問3】

かりに「永住者の1割は税金等の未納・滞納歴があった」というのが事実だとしても、このことだけを取り上げる意味はどこにあるのでしょうか?
「永住者の1割は税金等の未納・滞納歴があった」と言われても、1割というのは高いのか低いのか、にわかに判断がつきません。この数字は、日本国籍者との比較を通して、はじめて意味を持つのではないでしょうか?
お尋ねしたいのですが、日本国籍者で、税金・保険料・国民年金の未納・滞納歴がある人は何割でしょうか?
日本年金機構の発表によれば、国民年金の納付率は70%~80%です。つまり日本国籍者でも、年金を払っていない人は2割か3割います。
かりに日本国籍者で未納・滞納歴がある人は2割または3割だとしたら、永住者の1割は際立って高いとはいえず、むしろ低いというべきです。
したがって、この数字を入管法改正の立法事実として持ち出すこと自体に論理的な誤りがあるということになります。

記者として、第四の権力たるマスメディアとして、真に追及すべきはこちらではないでしょうか?

私を含め、ほとんどの永住者は税金や社会保険料をきちんと納め、普通で安穏な生活を送っております。
偏った数字だけを取り上げ、永住者への偏見と誤解を煽るような記事は出さないでいただきたい。本件記事の問題点を猛省してほしいと考えております。

宜しくお願い申し上げます。

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問い合わせ内容は以上となります。

正直のところ、疲れています。
なぜこんな基本的な統計上の問題について、このようにいちいち時間をかけて抗議しなければならないのでしょうか? これをきちんと調査・確認をし、誤解のない文章で伝えるのはメディアの仕事ではないでしょうか?

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【以下、5/11更新】

前述の問い合わせの後、毎日新聞から以下の返答がありました。

毎日新聞社の広報担当をしております。
お問い合わせいただき、ありがとうございました。
 
ご指摘の記事は、5月8日の衆院法務委員会で、「統計もなく、法改正の根拠がない」という野党側の指摘を踏まえて出入国在留管理庁が初めて公表した数的データを報じたものでした。どのようなデータだったかについての記述に不足があったと考えており、この点については11日付朝刊に掲載予定の記事でも丁寧に説明していきます。
 
永住者が税金や社会保険料を故意に支払わなかった場合に永住許可の取り消しを可能とする関連法改正案を巡っては、今後も議論が続きます。今回の貴重なご指摘を踏まえ、「共生社会」とはどうあるべきなのかという視点で、議論の推移をしっかりと報道していきたいと思います。
 
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

この返答はとても十分とは言い難いと思いましたので、私からは以下の内容を返信しました。

今回の記事に、「どのようなデータだったかについての記述に不足があった」という問題があったのは明らかですが、問題点はそれだけではありません。
曖昧なデータに基づいて、あたかも「永住者の1割は税金を払っていない」という印象を世の中に与え、結果的に外国人に対する差別・偏見・ヘイトを煽ったのが、最大の問題点だと考えております。
 
事実、今回の記事を引用する形で、SNS上では永住外国人に対するヘイトに溢れています。
以下はただの数例です。
(URL省略)
 
このようなヘイトを引き起こすことが、貴社の目指すことでしょうか?
今回の件については、報道機関として恥を知り、猛省すべきだと考えております。
 
また、記述に不足があったと認められた以上、ネット記事については訂正または削除をする必要があると考えております。
この記事をネット上に掲載したまま放置すると、ヘイトを煽る結果にしかなりません。
https://mainichi.jp/articles/20240508/k00/00m/010/205000c
 
組織の広報に携わる人間の立場として、社外からの問い合わせへの応答の仕方に制約があるのは理解できますが、
上記内容は、執筆した三上記者と、担当した社会部にきちんとフィードバックしていただけますよう、お願い致します。
 
宜しくお願い致します。

このメールに対する返信はありませんでしたが、5/11(土)の朝刊に、補足の記事が掲載されました。執筆したのは同じ三上記者です。

ネット版はこちらです:

こちらの記事のほうが、データについて詳細に説明されています。
国内全体の国民年金の最終未納率が2割弱であることからも、永住者の未納率(1割強)が高いとはいえず、むしろ低いことが分かりました。

永住者のほうがむしろ納付率が高いのに、なぜ永住許可の取り消しをしようとするのか、その論理的な根拠がどこにあるのか、政府から説得力のある論拠はまったく提示されていません。
毎日新聞の記事は、そうした政府の曖昧で無責任な姿勢への掘り下げがまったく足りていません。

また、「永住者、税金など未納は1割 厳格化めぐり国が初公表」というタイトルのミスリード記事は無料で全文閲覧できる状態でネットで公開し続けているのに、補足記事のほうは有料になっていることも問題だと考えます。

私は毎日新聞の報道姿勢を基本的には信頼しているからこそ、今回の件は残念でなりません。

いずれにしても、永住許可取り消し制度創設のための論理的な立法事実は、現時点ではまったく存在しないことがよく分かります。
本来なら、毎日新聞をはじめとするマスメディアはそこを追及しなければならないはずですが。

ちなみに、未納率の正確な実態把握のための調査をするなら、私も反対しません。
ぜひ、永住外国人と日本国籍者の未納・滞納率を網羅的に調査してみようではありませんか。
そして、もし永住者の未納・滞納率が社会問題になるほど、日本国籍者より際立って高いのなら、そのとき私は永住許可取り消し制度創設に賛成しましょう。

逆に言えば、そのようなデータすらない状態で、永住許可取り消し制度を作ろうとする政府は、非論理的で反知性的のみならず、端的に排外的なのです。
はっきり言って、今回の法改正案は、排外的な差別主義者どもの排外感情を満たすという点以外に、何のメリットもありません。

そのようないい加減な法改正案は、断じて可決されるべきではありません。

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