声明:トランスジェンダー・ジャパン関係者が性加害告発を受けた件について
2023年11月2日
李 琴峰
過日、「東京トランスマーチ」の主催団体である「トランスジェンダー・ジャパン」(以下、TGJP)の関係者が性加害の告発を受けたことを、「一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ」をはじめとした団体の声明で知りました。
私はクィア・コミュニティの一人として、普段からトランス差別を含むあらゆる差別に反対・抵抗する立場を明らかにしており、自らの創作・言論活動でも差別解消に努めてまいりました。TGJPは限られた人数と資金で、手弁当で運営されている団体であると認識しており、当該団体の活動およびそのメンバーの方々に、私は敬意を抱いています。
しかしながら、性暴力は決して許されるものではありません。また、性暴力を軽視していては、ジェンダー平等は決して達成できないと考えています。
今年の「東京トランスマーチ」のクラウドファンディングに、私の著書のサイン本が返礼品として使われていることから、私もステークホルダーの一人と言えます。
性加害告発の件を知った後、私はすぐTGJPに連絡し、事情の説明を求めました。そして電話で、TGJPのメンバーから、TGJP側から見た事件の経緯の説明を受けました(この時に受けた説明の内容と、のちに被害を訴える方から伺った内容とは、大きな食い違いがありました)。
私は当事者ではないため、事実関係の判断はできないし、安易にジャッジすべきでもありません。その考えから、私はTGJPの方に、本件については組織としてちゃんと精査し、しかるべき対応を取るように求め、彼らの声明を待つことにしました。
ところが、10月31日付で出されたTGJPによる「ステートメント」は、TGJPとトランスマーチへの不信感を払拭できるものとは到底言えませんでした。
そこで私は個人として、以下の対応を取ることをここで宣言します。
近年、様々な国でトランスジェンダーに対する差別言説・憎悪犯罪・恐怖扇動・バックラッシュが起きています。それに対する抵抗として、「トランスマーチ」は日本のみならず様々な国で開催されています。人権回復とジェンダー平等への道において、トランスマーチが果たす役割はとても大きいと考えています。
だからこそ、今般の事件については本当に残念に思っています。TGJPには引き続き、しかるべき対応を取るよう、クィア・コミュニティの一人として、強く求めていきたい所存です。それは「運動を潰す」「コミュニティを分断する」などではなく、差別と暴力に抵抗するために必要なことだと考えています。
末筆ながら、本件を利用して、トランスジェンダーという属性全体への憎悪と恐怖を扇動する動きがあると予想されます(というかすでにあります)。差別言説を広め、憎悪と恐怖を扇動するためには性被害を利用することをも辞さないこの手の言動は下劣にして醜悪の極みであり、断じて許されるべきではないことを、ここに付言します。
以 上
(以下、画像版。転載可。)