見出し画像

赤十字国際委員会が都市の戦争の傷跡伝える巡回展


【6面ディスプレイを用いて、日本に送られた戦地の映像による3Dモデル化コンテンツの背景を説明する東京大学大学院教授の渡邉英徳さん】


赤十字国際委員会(ICRC)が企画した世界巡回展「War in Cities〜戦争の街を体感する」が12月25日まで、みなとみらいギャラリーA(横浜市西区みなとみらい)で開催されている。戦争が市街地や人々の暮らしに与える影響をテーマにしており、さまざまな展示を通じて都市で行われる戦争の現実を考える場となっている。

この展覧会は、ICRC、日本赤十字社と在日スイス大使館が共催している。2017年からスイスを皮切りに世界を巡回してきたこのシリーズが日本で開催されるのは初。

激しい戦闘が繰り広げられたイラクからは、破壊された住居に残されたテディベアや日常品が発見され、展示されている。また、八王子平和・原爆資料館が協力し、広島と長崎に投下された原子爆弾の被害を伝える収蔵品を展示している。焼けた瓦や手りゅう弾として使われる予定だった陶器、被爆した14歳の少年・豊嶋長生さんの学生服など、原爆がもたらした甚大な被害と家族の悲しみを感じられる内容となっている。

さらに、東京大学大学院の渡邉英徳教授の研究室がデジタル技術を駆使した3Dコンテンツの展示を行っている。これまで広島・長崎に投下された原子爆弾による被爆者証言を3Dデータマップとしてまとめた「ヒロシマ・アーカイブ」や「ナガサキ・アーカイブ」を地域の人たちとともに作ってきた同研究室が、ウクライナやガザ地区から送られた映像・写真をもとに現地の戦争被害を再現した。

特に「ガザ地区3Dマップ」は今回が初公開となる作品で、アルジャジーラ・メディア・ネットワークスや国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と共同で制作されたもの。3Dデータを活用して、戦争による被害を視覚的かつ立体的に再現しており、戦争が地域社会に与える影響を体感できる内容となっている。

12月21日には、渡邉さんと研究室に在籍する研究員の小松尚平さんによるデジタルコンテンツの解説や、VRコンテンツ体験会が開催された。

渡邉英徳研究室に在籍する小松尚平さんが中心となって制作したVRコンテンツでは、ロシアに攻撃されたウクライナの都市の中にいるような体験ができる

渡邉さんは病院・学校などが攻撃され、瓦礫となった跡を紹介しながら「都市が戦争の現場になる時、民間人、特に声をあげることもできない子どもが最も被害を被ることがわかる。また、都市は攻撃されても復旧が早く、今記録しておかないと『なかったこと』になってしまう」と、戦地の理不尽な現実を生々しいコンテンツとしてアーカイブする意義を語っていた。

展示は会期中、11時〜19時まで。入場無料。詳細やパンフレットのPDF版は公式ウェブサイトから確認可能。問い合わせはICRC駐日代表部で受け付けている。


東京大学大学院教授 渡邉英徳さんのコメント

【関連リンク】


いいなと思ったら応援しよう!