南の島も笑ってる 第2回
空港に降り立った我々に、石垣島の太陽は派手な歓迎をしてくれた。
東京・羽田空港からの所要時間は5時間余り。毎日が肌寒い東京のボンヤリした夏に比べ、ここは強烈な日差しと爆裂な暑さがどっかりと腰を下ろしていた。
既に体中から汗が噴き出ている。
それにしてもこの気候の急激な変化はすごい。新宿の歌舞伎町を歩いていて角を曲がったらいきなり山奥に出たようなもんだ。
我々は激しく戸惑いながらも石垣港へ向かうべくタクシーに乗り込んだ。
「東京は今年は寒いんだってね。けどこっちは記録的な暑さだよ。」
「今年は台風が全然来なくてねえ。水不足になっちゃって。ほら、農作物も枯れちゃっているでしょ。」
とにかく地元のタクシーの運転手もボヤくぐらいの暑さなのである。
暑い暑いと100回ぐらい連呼しながら、タクシーは石垣港に到着した。
西表島には空港がない。島に行くにはここ石垣港から船に乗る必要がある。まだ出航までには時間があったので昼食をとることにした。
港のそばに食堂があったのでそこに入ることにした。沖縄郷土料理の店である。
エガさんはゆうな丼(豚の三枚肉丼)、俺は沖縄風塩焼きそばとミミガー(豚の耳肉の和え物)を注文。沖縄と言えば豚肉である。どれもおいしく我々は夢中になって平らげた。
この日の夜からはキャンプ生活に入るので、これでしばらく豪華な食事とはお別れである。
沖縄料理に満足し、さあいよいよ西表ですぞと店を出る我々。ところが外から何やらビチャビチャと水の流れる音が聞こえてくる。
不思議に思い外へ出てみると、さっきまでの灼熱の太陽はどこへやら。滝のような雨がじゃあじゃあと降り注いでいた。
もうすぐ船の出航時間なので雨宿りをしているわけにはいかない。文字通り雨に打たれながら我々は船に転がり込んだ。
まるでこれからの苦難を暗示しているかのような波乱の幕開けなのであった。
西表島は沖縄でも2番目に広い島である。端から端まで車で移動すると2時間かかるぐらい大きな島なのであるが、そのほとんどがジャングルで、人々は海岸にそって生活している。
開発がされていないのであまり観光客も来ない。要するに田舎、よく言えば手つかずの自然が残されている秘境である。
50人乗りくらいの船は40分ほどで船浦港に着いた。ここは島の玄関口、石垣島とを結ぶ島の生命線なのであるが、港には見事なくらい何もない。店一軒もない。
去年ここに降りた時、あまりに何もなくて心細くなったことを思い出した。
雨はとっくにあがっており、また太陽がうるさく照り付けていた。
(続く)