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福島ユナイテッド2024備忘録⑨【まだまだ尖る槍の穂先】
リーグ中盤~終盤へ-深化
ここで福島が3バックの攻略としてどんな戦術を採ってきたかを軽く見てみよう。
3バックのチームのストロングポイントは縦への速さと5レーンの攻略の容易さである。
攻めではカウンターと5トップ化による崩しが可能になり、守備では5バックでスペースを完全に埋められる。
ポゼッション主体のチームが苦手とするのはこのスペースのないアタッキングサードの攻略に手間取りカウンターを浴びやすいからである。
ユナイテッドは攻め切ってシュートで終ればカウンターは浴びないというところを目標に攻略方法を組み立てているはずだ。
依然として比重は中央が多い。そこには強いこだわりを感じる。
だがWBの裏のスペースの有効活用はもちろんだが、3CBとサイドバック(SB)の間のスペースをショートパスで崩してディフェンスラインを下げさせ、その結果空いたペナルティーエリア内のスペースにマイナスの折り返しを通すシーンがよく見られるようになる。
大きなサイドチェンジで揺さぶるよりもストロングポイントである
ウイングのスピード、
パスの出し手に呼応した動き出しの速さ、
ショートパスの精度
で敵守備陣を崩す『らしさ』が活かされた攻略法と言える。
選手たちの戦術理解度のさらなる深化がそこにある。
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リーグ終盤に入って福島の攻撃の先鋭化はさらに進む。
ライトインサイドハーフ(RIH)をバランス型の針谷からレフティーでドリブラーの城定幹大に変更し、そしてその針谷をアンカーに移すシステムが採られた。
針谷は166cm 56kgの小柄な司令塔タイプだ。アンカーに司令塔を置くシステムと言えばかつてのブレシアやミランだが福島のシステムではピルロのように闘犬を護衛にはべらせる事はない。
ユナイテッドの3センターは全員どちらかというと攻撃寄りの選手で構成された事になる。
プレーオフ圏内を目指して攻める福島に対して守備を固めてくるチームへの対抗措置でもあっただろう。
「相手が退くなら攻め倒せばいいじゃない」そんなどこかの国の王妃が言いそうな高飛車なセリフが思い浮かんでしまうほど魅惑的で危険なシステムだ。
イビツァ・オシムが相手が2トップならCB3人、1トップなら2人という風に論理的に対処していた事も思い出させる。
要は攻め手と守り手の数合わせだ。
過剰に守って来る相手に過剰に神経質になる必要はなどない。
攻めのリスクを負う事を忘れたらサッカーは恐ろしくつまらない試合になる。
だがノーガードというわけでもない。
ユナイテッドの守備はそれに合わせて前輪駆動の配分をさらに上げる。