【LFAメンバーズの履歴書vol.8】“居場所づくりを地域の力で。子どもが声を上げられ、聴かれる地域文化を作りたい” 子ども支援事業部 地域づくり事業マネージャー 塩成透さん
こんにちは!Learning for All 広報です。Learning for All で働くメンバーが、どのようにLFAと出会い、普段どんな想いで働いているのかを伝える【LFAメンバーズの履歴書】。今回は、子ども支援事業部で地域づくり事業マネージャーとして働く塩成 透(しおなり とおる)さんです。
塩成さんは、まちづくりに携わる仕事をする中でLFAの理念に共感し、2020年6月に入職しました。このインタビューでは、塩成さんが実現したい地域づくりのビジョンと、こども家庭庁「こども若者★いけんぷらす」での活動についてお話を聞きました。
LFAの求人を見て、「まさに自分がやりたいことだ!」と感じた
――まずはLFAに入るまでのお話を聞かせてください。塩成さんが大学院で学ばれた「公共経営」というのは、地域づくりにつながる学問なんですか?
公共経営は、公共にまつわる諸課題に対して、公平と効率を意識しながら政策評価や政策立案について学ぶ学問です。大学卒業後に民間企業に就職したのですが、学生時代から携わっていたまちづくり関係のNPOの活動を本格的に続けたいと思い、学び直すために大学院に入りました。学術的な研究もしましたが、フィールドワークをしたり、地方自治体に対して政策提言をしたりと、実践的な勉強も多かったです。
――塩成さんの興味関心の入り口は、「子ども」ではなく「まちづくり」だったんですね。
そうですね。大学院時代にはインターン、修了後はフリーランスとしてコミュニティデザインの会社で働いていました。その中で、地域住民の声、特に子どもの声が聴かれる機会や、反映される機会が少ないと感じていました。そこで子どもの声が聴ける仕事に就きたいと思っていたところ、LFAの求人を見つけ、「自分がやりたいことはまさにこれだ!」と思いました。
――以前、人事マネージャーの三友さんにお話を伺ったとき、「LFAの求人に完全にスキルマッチする人材はなかなかいない」とおっしゃっていたのですが、塩成さんの場合は理想に近い形ですね。ただ、子どもとかかわるお仕事は未経験ですよね。そこに不安はなかったですか?
入職後にe-learningで基礎知識をインプットできましたし、「子どもも大人も一人の人間であることは変わらない。これまでと同様お互いを尊重することは大切にしよう」という感覚だったので、実は配属される前は特に不安はなかったんです。ただ実際に現場に行ってみると、子どもならではの難しさと面白さ(保護や健全育成という側面があること、自分だけで意思決定が難しい場合があること、自身の権威性等)があることに気づきました。困ったときはチームのソーシャルワーカーの方に相談したり、研修を受講したりして、配属後にも必要を感じて勉強を続けました。
地域づくりを通して「地域に子どもたちを支える大人がいる」という文化をつくりたい
――塩成さんは今、地域づくり事業マネージャーという立場ですが、そもそも「地域づくり」とはなんでしょうか?
LFAでは、地域のあらゆる立場の大人たちのネットワークをつくり、子どもを支援する「地域協働型子ども包括支援」の仕組みを全国に広げようとしています。ですから地域づくりとは、その仕組みが整った地域をつくることですね。わたし自身も、「地域に子どもたちを支える大人がいる、という文化をつくりたい」というビジョンを持っています。
――LFAに入職したときから地域づくり担当ですか?
2020年の入職当初は、板橋で子ども・若者が放課後に過ごす居場所の拠点長をしながら、拠点と地域を結ぶ活動を自主的に行っていました。翌年、「地域づくりをやりたいけど担い手問題でできない」という課題を解決するために、LFAとして地域づくり担当を置くことになり、そのタイミングで地域づくり事業のマネージャーになりました。
――今は、どんなお仕事をされているんですか?
地域づくりを担当している戸田と葛飾に赴き、地域住民や地域団体、学校、行政の方々と一緒に活動することが多いですね。子どもと地域の方が関わるイベントを実施したり、地域団体の立ち上げ支援やネットワークづくりを推進したり、学校や行政が運営する委員会の委員を務めていたりします。
――地域の方々と直接かかわるお仕事ですね。でも、町会や商店街組合といった地域の役員は、地域住民の方が持ち回りで務めていることも多いですよね。地域づくりへの熱量が高い方ばかりではないと思いますが、どのように足並みを揃えていくのでしょうか?
誰しも、よく知らない相手と協働するのは不安を感じますよね。なので、自身のLFAとしての役割を説明するのもそうですが、個人としての自分もさらけ出すようにしています。また、子どもだけでなく地域全体で楽しめるイベントを企画するなど、一緒に活動したい方の想いにも心を馳せながら、こちらから地域に開いていくようにします。
そのように知ってもらうステップを踏むことで、理解が深まっていくといいなと思っています。
例えば、戸田の地域づくり拠点では『おすそわけ会』というフードパントリー(食品が必要となる世帯や人に対して、食品を無料で配布する活動)を実施しているのですが、最初はLFA主導だったのが、今やほぼ地域の方だけで会が回るくらいになっています。
――LFAなしでも『おすそわけ会』が回っているということは、塩成さんが理想としている「地域に子どもたちを支える大人がいる」という形ができつつあるということですよね。地域に根差したイベントに育つためにどんな工夫があったんでしょうか?
とにかく「楽しいやりとりが生まれる場を参加者と一緒に作る」ということを意識しました。配布を通じて会話を楽しむ、遊びを楽しむ、などなど。楽しい場を作ったら、人がたくさん来てくれるようになりました。賑わいが生まれると、今度は運営の人手が足りなくなってきます。そうしたら自然と、「手伝うよ!」と言ってくれる方が増えてきました。
その楽しさや賑わいがさらに広がっていき、町会の方が射的を始めたり、地域の別の団体が会場前にキッチンカー型のこども食堂を出店して無料配布をしてくれたりするようになりました。そのおかげで、誰でも気軽に足を運べる、地域に溶け込んだイベントになっていったんだと思います。
また、葛飾区のこども食堂団体とともに地域の高校・大学と連携したボランティアマッチングプラットフォームづくりなども進めています。
――地域ごとに課題が違うから、LFAが提供するサポートも変わっていくんですね。実際に地域づくりにかかわる中で、特に印象に残ったエピソードはありますか?
エピソードはたくさんありますが……。あ、戸田でLFAがかかわっている子どもの兄の話なんですけど。彼自身はLFAの支援対象の年齢を少し超えた若者なのですが、『おすそわけ会』やキッチンカーを手伝ってもらっていたんです。一緒に活動しているうちに、彼は「『おすそわけ会』やキッチンカーが居場所だ、自分がここにいてもいいと思えた」と言ってくれたんです。
それだけではなく、彼に「自分も居場所をつくる側になりたい」という想いが芽生えて、仲間と一緒に若者の団体を立ち上げました。昨年(2024年)の12月20日に、初めてのイベントが行われ、今後、中高生向けの夜の居場所をオープンする予定です。
ーー『おすそわけ会』の運営もそうですが、地域づくりや居場所づくりが地域の方々の力で動き始めている感じですね。
地域の大人が子どもを支える組織や場をつくることも大事ですが、当事者自身が地域に居場所をつくることにも大きな意義があります。子どもたちが地域の大人に「困ったな」「もっとこうなるといいな」と言える、そしてそれをキャッチした大人が、子どもとともに地域社会や行政に伝えられる、そんな仕組みをもっと広げていきたいです。
こども家庭庁「こども若者★いけんぷらす」で、子どもや若者の意見を行政に届ける取組みをサポート
ーー塩成さんは地域づくり事業のマネージャー職のほか、こども家庭庁『こども若者★いけんぷらす』にもかかわられていますね。どんな取り組みですか?
『こども若者★いけんぷらす』は、子どもや若者の意見を国の政策に届けるための取り組みです。会員登録すれば意見を送ったり、意見を伝える場に参加したりできます。
ーー塩成さんはどのような役割ですか?
『こども若者★いけんぷらす』は、こども家庭庁の職員と、『みんなのパートナー ぽんぱー(以降「ぽんぱー」)』と呼ばれる、中学生から20代の若者20人ほどで運営されています。わたしは、ぽんぱーのサポーターを務めています。職員の方が難しい専門用語で話したときに解説をお願いしたり、ぽんぱーが質問したそうな雰囲気のときに自身で聞けるように促したり、時には代弁したり、両者をつなぐ翻訳者のような役目をしています。
ーーサポーターとして取り組みを間近で見ていて、子どもや若者と行政が直接つながる意義は感じますか?
こども家庭庁の職員や大人だけではなかなか思いつかないアイデアも出ますし、政策のアイデアだけでなく「資料が読みづらい、デザインが良くない」といった意見も出てきます。実際、ぽんぱーたちがつくる資料は、子どもたちにだけでなく誰にとっても読みやすく、加えてかわいいんです。でも意見そのものの価値だけでなく、行政と当事者が一緒に考えることに大きな価値があると思っています。
ーー両者が一緒に考える取り組みなんですね。意見を出して終わりではないので、子ども側の学びも深められますね。
子どもたちの提案を受け入れることが難しい場合もあります。そんなときはこども家庭庁の職員から「なぜ採用できないのか」といったことが丁寧にフィードバックされます。そこで子どもたちとこども家庭庁と再度一緒に考え、意見をまとめていきます。わたしはサポーターとして安心して話せる環境を作ること、情報の非対称性をできる限り減らすこと、特定の方向に誘導しないよう選択肢の提示に留めることなどを意識しながら、子どもと大人の対話の場をサポートしています。
ーー子どもたちや中高生を育てている人たちに、もっと知られてほしい取り組みですね。
調べ物をしていてこども家庭庁のサイトで見つけた、担当教授に紹介された、といった理由で登録・応募している人が多いのが現状なので、もっと知名度を上げていきたいと思っています。
LFAは「この人たちとなら一緒にがんばれる」と安心できるチーム。学び続けることを楽しめる人と一緒に働きたい。
ーー今日はありがとうございました。では最後に、LFAのチームメンバーに対する想いとこれからLFAに入る方に期待することを教えてください。
LFAのメンバーに対しては、「すごく受け入れてもらっている」と感じています。ちゃんと話を聞いて気にかけてくれるメンバーなので、「この人たちと一緒ならがんばれる」と安心して働けています。
新しく入ってくる方に期待するのは、LFAのミッション「子どもの貧困に、本質的解決を。」のために何ができるか、どうしたらより良い社会にしていけるかを本気で考えられる人であること。高いスキルや明確なビジョンは必ずしも最初からなくても、学び続けることを楽しめる人と一緒に働きたいと思っています。