カップルン
今、話題のAI恋愛マッチングアプリ「カップルン」。
あちこちのサイトで、成功体験談を見かける。
「素敵な彼女ができました!」
ボクの職場は男性ばかりで、出会いが少ない。
同僚の多くは「彼女いない歴=年齢」だったりする。
仕事が忙しくて、毎日帰るのは深夜。
電気の消えている部屋を見て、ふと淋しくなる時がある。
使い方は簡単。
アプリをインストールして、簡単なプロフィールを登録する。
相手の条件を入力すると、AIが「相性」を診断して引き合わせる。
ここまでは、普通のアプリと同じ。
「カップルン」の本領発揮はこれからだ。
相手に対してどう接したら良いかを、文字と音声でアドバイスしてくれる。
恋愛オンチのボクにはありがたい。
「カップルン」が選んできた相手は、2歳下の女性だった。
接客業で、女性ばかりの職場にいるらしい。
どうも、盛り上がる話題が見つからない。
「相手との共通点を見つけましょう」と「カップルン」。
なるほど、そうやってきっかけを作るのか。
メッセージのやり取りで、彼女はお笑い好きなのが分かった。
好みが分かれるジャンルだなぁ。好きな芸人さんも違うだろうし。
「まずは、話を聞いてあげましょう」
「カップルン」のおかげで、なんとかデートまでこぎ着けた。
待ち合わせの駅に、ちゃんと来てくれるだろうか。
なんと言っても、生まれて初めてのデートだ。
何かあったら「カップルン」に頼ろう。
約束の時間に、彼女はニットのワンピースでやって来た。
「服をほめてあげましょう」
「今日の服、素敵だね!」
彼女は嬉しそうにほほえむ。
「何かを決める場面では、リードして」
お昼に何を食べるか、ずいぶん悩んでいた彼女。
ネットで調べてきたイタリアンレストランへ誘った。
「あなたって、とても気遣いのできる人ね」
天にも舞い上がる気持ちになった。
ありがとう「カップルン」。
やっと、彼女のいない生活から卒業できるかも。
この勢いで、思い切って告白を……!
「カップルン」が急に黙り込んだ。
何か、間違ってる?
思わず、スマホを覗き込む。
画面には、大きな円マークが光っていた。
「これから先は、課金になります」