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「最高のオバハン中島ハルコ」に見るホワイト企業ぶってる日本のリアル

現在放送中のドラマ『最高のオバハン中島ハルコ ~マダム・イン・ちょこっとだけバンコク~』第3シーズン。作品の魅力のひとつは、時事ネタを織り交ぜながら、社会の問題を鋭く切り取るセリフの数々だ。

最近放送された第2話では、ホワイト企業のあり方について考えさせられる内容だった。働きやすい環境を整えることはもちろん重要だが、それが必ずしも組織や個人の成長に結びつくとは限らない。特に「完全週休2日・残業ゼロ」を掲げる会社では、それを実現するためには社員一人ひとりのスキルが高くなければ成立しない。しかし、現実にはスキルが追いつかないままホワイトな働き方を求めるケースも多く、結果として管理職の負担が増す状況が生まれている。

ドラマの中でも、若手社員の指導に対して「パワハラ」や「ウィルハラ」といった指摘が飛び交い、指導の在り方に悩む管理職の姿が描かれていた。これにより「仕事を教えたくても教えられない」環境が生まれ、新人が成長できず、最終的には「成長できないから辞めます」と言われてしまうという悪循環が発生している。

さらに、企業のトップがホワイトを推進するあまり、実際には自らが最も過酷な労働環境に追い込まれているケースもある。ドラマでは、社員の残業をなくすために社長自らが膨大な業務を抱え込み、最終的に過労で倒れてしまうという展開が描かれた。この状況を見て、「本当にホワイトなのか?」という疑問が投げかけられる。

現実の企業においても、表面的にはホワイトを装っているものの、実態は違う「ガワホワ(外見だけホワイト)」な会社が増えているように感じる。例えば、完全週休2日制を導入しても、仕事の総量は変わらないため、結局誰かが過剰な負担を負うことになる。また、ホワイトを強調する企業が、実は協力会社への支払い条件を厳しくしている場合もある。例えば、支払いサイトが60日を超えていたり、発注額が一定以上になると手数料や値引きが発生するような契約を結んでいる場合、それは「ブラック体質」が根底にある可能性が高い。

また、リモートワークが推奨される背景にも注意が必要だ。表向きには「柔軟な働き方」とされていても、実際には会社側がオフィスコストを削減したいだけという側面もある。社屋の維持費、電気代、交通費などの負担を減らすための施策である場合、それを「働きやすさの向上」とだけ捉えるのは危険だ。

近年、日本全体としてホワイト企業を推進する流れが強まっている。しかし、本当にホワイトかどうかを判断するには、単なる制度の有無ではなく、働く人々の実態を見極めることが必要だ。国がホワイトを推進する一方で、労働環境や負担の見えない部分に目を向けなければならない。ドラマを通じて、私たちが考えるべき「本当のホワイト企業」とは何かを改めて問い直すきっかけとなった。


以下はドラマのワンシーンである。


菊池いづみ
「そんなわけで、ホワイトもホワイト天国みたいです。みんな若くてゆるくて、ニコニコ楽しそうに仕事してて、結果さえ出せばokなんで。」

中島ハルコ
「本当に何にもわかってない。間抜けだわ。」
「週休2日、残業0ということは、1人1人のスキルが高くなければ成立しない会社ということよ。いづみさんなんかスキルがなければすぐ首よ!チャンスと思ったその時がピンチになるのよ。人間万事塞翁が馬」

菊池いづみ
「塞翁が馬?」

秘書
「中国の故事から来たことわざで、簡単に言えば人の幸不幸はいつどうなるかわからないという意味です。」

中島ハルコ
「まして買収された側は落ち武者同然。ハラ切りか、命からがら落ち延びるか、ごくわずかな優秀な人材以外、滅多に生き残れるものではないわ。」

菊池いづみ
「定時で、帰る部下の代わりに残業が山ほど増えて、よかれと思ってアドバイスしただけなのに。パワハラだのウィルハラだの。
え?それじゃ仕事なんか教えられないのに。
え?じゃあ成長できないからやめますって。
え?じゃあ私はどうすれば。」

秘書
「今は新人がミスしても怒らずいいよ!大丈夫と言わないといけないとか。」

中島ハルコ
「昔だったら大変よ。なんで。なんでこうなの。
なんで。なんでって、とことん反省させたのよ。」

菊池いづみ
「編集長代理は相変わらず無責任だし、野原さんはホワイトプレスに徹しちゃってて、社長の伝書鳩みたいに『うちはホワイトですから、ホワイトですから』って。
鰯ちゃんは地味に仕事が早くて助かるけど、いつ辞めちゃうかわかんないし。とにかくホワイトなんて体裁だけで管理職には超ブラックです。
ハルコさん、もう、あたしどうしたら~」

中島ハルコ
「だから塞翁が馬だと言ってるでしょう。いい加減、人生の浮き沈みの波にうまく乗ることを考えなさい」


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