高専生に3年次編入を勧めない理由
諸言
私は高専を卒業し、国立大学へ3年次編入、その後留年し、現在も3年生の大学生です。私のこれまでの経験から、現役高専生に向けて、編入して感じたこと等を伝えたいと思います。
私以外にも高専から大学へ3年次編入し、こういったブログ等々を書いている方もいると思います。私も高専4、5年次はこういった体験談を多々読み漁っていました。ただ、そんな彼らと当時の私の決定的に違うところが一つありました。それは根本的な学力です。多くの体験談著者はとても優秀で、当時の私は自分の状況との乖離を感じていました。その為、大学編入に対する見解や苦労する点などに加え、過去の私同様、学科席次半分以下でTOEICのスコアも芳しくない中、大学編入をしようと考えている誰かに読んで頂ければと思います。
まずは、ターゲットが多いであろう"編入して感じたこと(編入を後悔した瞬間)"から話し、「成績優秀ではないけど大学編入したい!」と考えている身の程知らずだが向上心だけは持ち合わせている数少ないターゲットに向けての話を合わせてしていきます。
私が3年次編入した理由
3年次編入のメリットは私がわざわざ述べなくても、教員に聞いたり、ネットで調べればそれらしい回答はいくらでも見つかると思います。
私の場合は、「学士号(進路によっては修士、博士等も)が取れる」この一点のみで編入を決めました。確かにやりたい研究があり、特化した大学の研究室に行きたいという大志を持って大学編入を選択する方も多いでしょう。しかし、私は違います。元々就職希望だったのですが、企業の求人を数多見ていく中で、高専卒より、学部卒、修士卒の方が初任給が良いことを再確認し、学士という肩書きを得たいが為に編入しようと決めました。非常に不純ですが。
後悔している理由①(大学のレベル)
学士という肩書きを得るために大学に編入しましたが、そもそもこれに関しては、”認識が間違っていた”なと感じています。よくよく考えれば分かる話なのですが、名の知れない地方国立大学卒の学士と、東京大学卒の学士では勿論違います。就職実績を調べて驚きましたよ。弊学の有名大企業への就職率の低さに。高専からの方がよっぽどネームバリューのある大企業に就職することが現実的に可能でした。就職しやすさは、高専卒<学部卒ではなく、底辺大学学部卒<高専卒<難関大学学部卒 と言ったところでしょうか。企業に入ったら学部卒の方が高専卒より収入が多少いいかも知れませんが、高専から入れた企業に、底辺地方大学からではそもそも入れないってなりますよ。
(こんな事を言うと方々から怒られそうなので念の為言っておきますが、別に高専からの就職に失敗する方もいれば、地方国立大学から超一流大企業に就職する方もいます。あくまで私の所感と傾向の話をしているまでですので、ご理解お願いします。)
勿論私も馬鹿ではありません。背伸びして第一志望は有名な難関国立大学にしましたよ。しかし現実問題上手く行くはずもなく、滑り止まったのがここだけ。正直こうなることは十分予想できた話なんです。つまり、この話における”私の認識の間違っていた”と言うのは、「学部卒でも難関大じゃなかったら苦しいじゃん!思ってたのと違う!」ではなく、そんな事は薄々分かった上で「いや、でも俺は難関大学に編入できる!」と自意識過剰だった過去の自分の己の技量への采配が間違っていたと言う話ですね。難関大学に進めなかった結果、「いや、でも大学入れたし。学士号取れるし。良いところ就職できるだろ」と自分の心を騙し、しばらくして薄々感じていた現実を思い知り、嘆いていると言ったところですね。普通に共通テストを受けて大学に挑むのと比べれば、科目が絞られている分難易度が低いとされている3年次編入ですが、そりゃもちろんそれ相応の準備をしないとって話です。非常に愚かでした。難関大学に編入できるほど成績が良かった訳でも、血反吐吐くほど猛烈に勉強したわけでもないのに。何を甘えてるんだって話ですよね。
ちなみに就職に関して地方国立大学の良いこともあります。場所にもよるかも知れませんが、その地域での就職はめっぽう強い傾向があります。地元の企業に入りやすい傾向があるので、そこが地元の方で地元に残りたい方からすればメリットの方が多いと思います。私の場合、滑り止めで受けた大学ですので、地元から遠いどころか、実家から大学までは飛行機と電車で行く距離です。周辺企業に入りたいなんて全く気持ちが無いので私にとってはメリットが限りなく0に近いですね。
長々話しましたが、結論、
「有名難関大学に編入すれば高専卒より良いキャリアが築けると確信していたものの、実力不足で手が届かなかった。滑り止めで中途半端な大学に編入したが、それなら高専卒で就職すれば良かった」
これが私が編入した理由と後悔している理由の一つです。
あなたの第一志望に十分に合格できると感じるなら編入試験を受けることを勧めますが、一か八かで勝負に出るくらいなら普通に高専卒で就職した方が安牌だと思います。私の一個人的な意見でしかありませんが。
後悔している理由②(大学生活)
3年次編入するにしても場所を選ぼう、選べないならそもそも編入しない方がいい、という話をしてきました。次は編入生の大学生活の中で編入を後悔した話です。
大前提、大学に3年次編入すると他の大学3年生よりも間違いなく大変です。その人の容量の良さや大学のシステムにもよりますが、私の場合は単位認定で一悶着、履修の関係で教授にメール、修得可能単位数が進級要件に届かないと判明、などなどまぁ様々な壁がありました。
②-1 必要履修単位数の多さ、それによる強制留年確定
まず最初に、大学に3年次編入すると単位認定というシステムがあります。これは高専時に大学の講義内容と同じことを学んでおり、修得済みなのであればその科目の単位を認定し、履修する必要がなくなるというシステムです。これによって3年次編入というシステムが成立します。大学に3年次編入したのに、1、2年生の科目も全て受けろなんて言われたらそれはもはや3年次編入ではなくただの入学ですから。弊学の場合、一般的な学生は1、2年生の間に約80単位ほど履修した上で3年生になると聞きました。半期で20単位ずつということですね。しかし弊学編入生の認定単位数の中央値は50後半から60前半でしょうか。(これは編入生で統計を取ったわけでもないので、私が何人かの編入生に聞いたことによる主観です)私も60単位ほどでした。この時点で約20単位のディスアドバンテージがあるわけです。科目数にすると10から12、3科目ほど多く授業を受けなければならないといった感じです。卒業必要単位数は約130単位。4年生で必修の卒業研究などの単位数を引くと大体115単位くらいです。その必要単位を3、4年生の2年間で取れば良いのかというとこれまた違うんですよ。卒業研究着手要件という実質的な4年生への進級要件がありまして、弊学の場合、4年で履修する科目以外のほとんどを履修できていなければ4年生になれないんです。先ほど言った、4年生で履修する必修の除いた115単位から認定単位数60単位を引いた差の55単位を3年生の一年間で取る必要があるんです。しかし大抵大学のキャップ制(半期に履修可能な単位数の上限)は20後半から30単位が上限ですから(弊学のキャップ制は基本24単位、編入生に限り30単位)、前期後期ともに履修可能単位数ほぼマックスまで履修する必要があります。つまり、忙しい。しかもそれだけでなく、大学には前期開講科目と後期開講科目があり、当たり前ですが、前期に開講している科目は後期には受講できません。私の場合これが酷かったんです。認定されていない科目(つまり受講、履修しなければならない科目)で前期開講科目が20単位も無く、逆に後期開講科目が40単位ほどありました。皆さん気づきましたか?弊学の編入生のキャップ制による履修上限は30単位。後期の科目はどう頑張っても全部は取れないんですよ。そうなると卒業研究着手要件の単位数に届かない、つまり強制留年、3年生2周目が確定するのです。確かに卒業研究着手要件に必要な単位数の前期後期の合計のみを考えれば、一つも落とさなければ足りますが、後期開講科目で履修が必要な科目が多すぎて後期が30単位フル単でも、物理的に卒業研究着手要件の必要単位数に届かないんですよ。罠でしたね。そのため私は現在大学4年生と同い年ながら、2周目の大学3年生を過ごしているのです。実際3年次編入においてこれはさほど珍しいことではありません。ただ、これだけの理由を事細かに説明する機会がない以上、人に話すと「留年したんだ」としか受け取ってもらえません。高専から3年次編入というのはおそらく知らない人が多数ですからね。珍しくはないとはいえ、就職する年一年遅れる訳ですから、欠点に一つであることは間違いありません。
②-2 納得できない単位認定科目
先ほども話しましたが改めて単位認定の詳しい話をしましょう。単位認定というのは勿論1、2年生対象講義の全てを認定してくれるわけではなく、高専で同じ内容を履修していれば認定されるだけで、その判断は大学の各教科担当が私の出身高専のシラバスを見て判断します。この単位認定がまぁ納得がいかない。私は高専の機械科出身で機械コースに編入したのですが、4力(熱力学、流体力学、材料力学、機械力学)は全て履修し直しです。チューターの教授曰く、「4力は機械屋の基礎だから、高専で同内容を学んでいても”弊学の講義”を受けてもらう。明言はされていないが傾向として毎年ある」と。正直これはまぁ納得せざるを得ないかなと思いました。4力は大切です。なんなら再び1から学んだことで理解が深まった気がします。
私が一番納得できなかったのは物理学の認定がされなかったことです。衝撃ですよ。高専を卒業したのに物理学認定されないなんて。一年生で受ける基礎科目のうち、数学やプログラミングは勿論全て認定されています。化学、生物学は認定されませんでしたが、これは高専(特に私は機械科だったので)の特色上、そんな深くやっていなかったので仕方ないと感じます。ただ、物理が認定されなかったのは流石に驚きでしたね。ベクトルやらモーメントやらをやる力学の基礎の科目です。良くない感情だと承知した上で、本音を言わせて頂くと、馬鹿にされてるのかと思いましたよ。単位認定が確定した際に学務課に意見しに行きました。「私は、この大学で学ぶ意欲がないと言っている訳ではなく、高専という高校一年生の年から工学を専門として学ぶ学校で数年かけて学んできたことを認めてもらえないのが非常に納得がいかないです」と伝えました。学務課からは「お気持ちはわかりますが、教科担当教員の判断ですので」と言われました。これが旧帝大クラスに編入して「高専の物理はレベルが低い。弊学の物理学はハイレベルである為、高専の物理ではモーラできていない。受け直してもらう」と言われるなら納得せざるを得ない気がしますが、、、。しかもベクトルって。「2つの質点系の重心位置を、、、」ってのを高専卒業して受けてるんです。「仕方ないな。もう一度受けるか」とすぐ飲み込めなかった謙虚ではない私にも問題はありますが、私自身「こんな高先生が評価されないなら編入しなければよかったな」と改めて感じました。
②-3 あまりにも友達が出来ない
非常にシンプルですが、友達があまり出来ません。勿論これは個人差がありますが、どちらにしろ編入生が友達が少ない傾向にあるのは間違いありません。私自身コミュニケーション能力には自信があります。編入試験においても面接はほぼ練習せず挑みました。そんな私でも友達を作るのは非常に難しかった。これ言ったら叩かれそうなので言葉を選びながら慎重に話しますが、そもそも私がいくらコミュ力が高かろうが、相手方が歩み寄ってくれない限りは友達にはなれません。そして工学部の子は歩み寄ってくれる子が少ない。私は工学部以外の学部の雰囲気を知りませんし、同じ工学部といっても大学によるでしょう。学年にもよるでしょうし。ですからこれは私の一感想です。なんの根拠もないです。ただ、話しかけても何も言葉が返ってこない子もいます。ずっと下向いてスマホと睨めっこしてる子が多いですね。明るい子達もいますが、すごく結束力が強く、尚且つ身内感を大切にしているようで、既存のコミュニティ以外との関わりは持とうとせず、コミュニティに新しく人が加わることを嫌うようです。これはみんなそうかも知れませんが。(別にこれが悪いといっている訳ではありません。私がこれに苦しんだので偏屈になっているだけです)その為、見たことない顔のやつにわざわざ話しかけることなんてないですし、見たことない顔のやつに話しかけられても割とよそよそしいんです。高専時代、私は友人にわからない課題を聞いたり、欠席した時のノートを見せてもらったり、テスト前に一緒に勉強したりするタイプでしたから、このギャップには苦しみました。大学編入後は、欠席したら割と詰みです。レジュメが手元にないんですから。ちなみに編入生はみんな同じような状況なので編入生同士の結束が強くなる傾向にあります。しかし、数多の課題や難解なテストを潜り抜けるためには、先輩からの情報や過去問を所持している編入生以外の学生との繋がりが非常に重要なのです。
この後悔している理由②で伝えたいのは、履修単位数が多くても勤勉に努力できる、単位認定に不満を持たず謙虚に学問に向き合える、友達がいなくとも大学にしっかり行き、毎講義真面目に受けることができる、そんな自己管理能力や向上心が高い方なら十分やっていけると思いますが、私同様、元の学力も大したことなければ、毎講義に真面目に出席する自信がない、なんて人は私と同じような壁にぶつかる可能性がありますよ、と言うことです。編入したら頑張れる!と思ってる浅はかな皆さんにお教えしますが、私も編入直後は真面目に大学生活を送ろうと考えていましたよ。整った生活リズム、毎日の勉強の習慣、課題やテスト勉強の早めの着手など。ただ、私のような自制心や勤勉さが足りていない学生から言わせてもらうと、これができるのは金銭的に余裕がある方です。仕送りはないので奨学金借りてますし、無論奨学金だけで足りるわけもないので、ずっとアルバイトしてました。週末は全て朝7時に家を出て、帰宅は20時頃。平日は夜働いていたので、退勤が遅い日は徹夜のまま一限行ってました。隙間時間で勉強したり出来ない私が悪いのは重々承知ですが、やはり編入するのであれば潤沢なご家族からのバックアップがないと大変です。田舎の地方大学なので、節約しようと自炊しますが、そもそもスーパーが遠い。車欲しいな。買う金ないけど。ってなりますよ。
結言
ここまで私が3年次編入して後悔した理由を話しましたが、これは代表的な一部分であり、厳密にいうと他にもあります。あまり長すぎても読んでられないと思うので、今回はこれで。大学編入を目指している高専生はこれらを踏まえて大学を目指してください。何度も言うようですが、難関国立大学に合格できる方は目指すことに損はありません。ただ、地元でもなく、やりたい研究が強い訳でもない、特に志望理由がない地方の大学であれば、志がよっぽど高くない限り、お勧めしないよってだけです。非常に不出来な元高専生の嘆きでした。読んでくださり、ありがとうございます。