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「新しい私」と出会う輝き/Liella! 2nd AL『Second Sparkle』レビュー⑥

4thまであと数日。現地初参加の千葉day2に向けて「忘れ物はないかな?」くらいの気持ちで、4thに向けてやっておきたいことを片付けていく日々なのですが、その中の1つに『ミッドナイトラプソディ』の魅力を語り直したいなというのがありました。

あと、ここ最近ずっと考えている『UR葉月恋』を通じて、この曲を捉え直した時にどうしても言葉にしておきたいこともきっかけです。

僕の中では、

『ミッドナイトラプソディ』には可愛い葉月恋ちゃんが詰まっている。そして、『UR葉月恋』という物語を経由したからこそ見えてくるまた違った魅力がある。

というのが今の時点で抱いているざっくりの解釈になります。前半に関しては、過去に書いていることもあってそちらを参照していただきたいのですが、今回は後半の『UR葉月恋』で見えてきたものを踏まえて、改めてこの曲の魅力を語ってみたいと思います。


■改めて『UR葉月恋』を振り返る

まずは『UR葉月恋』のお話から。この物語の魅力とは、恋ちゃんがゲームを通じて「私ってこうあって良いんだ!」と「新しい私」と出会えることにあると考えています。だから、彼女は物語の最後にお母さんの写真に向けて、こう語りかけます。

お母さまの作ってくれた学校は私にとても素敵な出会いを与えてくれました

(注1)

物語を見ていると、ゲームに夢中になっても優しく受け止めてくれて、一緒に結ヶ丘という場所を盛り上げていこうとするLiella!メンバーとの出会いがこのセリフでの「出会い」の印象が強いと思います。もちろん、それもありますが、個人的にはゲームに夢中になることで知った「新しい私」との出会いが、彼女にとって新しい一歩を踏み出すきっかけになったという考察が物語の感動ポイントを強めていると感じています。

もの凄く簡単にまとめてしまいましたが、ここに関しては前回の「『UR葉月恋』において恋ちゃんは何を恐れていたのか?」というブログに詳細をまとめておりますのでそちらをご参照ください。


■『UR葉月恋』から『ミッドナイトラプソディ』へ

そうやって振り返ると、『UR葉月恋』では「新しい私」への出会いをゲームに夢中になる恋ちゃんをメインに置きつつ、コミカルに描いていました。

では、それがどうやって『ミッドナイトラプソディ』に繋がっているのかというと、そういう「出会い」を「恋愛」というモチーフに置き換えたのがこの曲だと思っています。それを考えていくにあたって、この曲の歌詞の中で「わたし」と駆け引きしている「あなた」は特定の誰かではなく、今まで自分の中に存在していなかった「新しい私」としてみます。その上で、この楽曲を捉えた時に、ゲームに夢中になるその気持ちの奥底には、今まで自分にも気が付かなかった「私」との出会いが待っていたと考えてみたいと思います。

ここから本題の『ミッドナイトラプソディ』の話に入っていきますが、歌詞を各パートごとに分けて考えていきたいと思います。合わせて、それぞれのパートの中で語りたいことの大筋も書いておきます。

◯歌い出し〜1番サビ   (あと少しで会える〜)
→ゲームに夢中になることで「新しい私」との出会いを知り、抑えきれないワクワク感

◯2番〜2番サビ(飽きることない〜)
→新しい「私」と出会うということは「今までの私」を失ってしまう?=『UR葉月恋』との強い親和性

◯ラスサビ(もしも巡りあわなければ〜)
→素敵な出会いを受け入れていく=「素敵な出会いを与えてくれました」に繋がる

■「新しい私」と出会うワクワク感

あと少しで会える はしゃぎ始めるHeart
無意識に指先 踊るタララッタララッ
にらみ続ける秒針 はやく!はやく!回って!
22時の扉 カギを差しこませて

(注2)

ワクワクする気持ちをもう抑えきれなくなっているのが表現されているのがこのパートです。「心で思っている以上に体は正直」というか、何よりも体が真っ先に動いてしまっているのかが分かりやすくなっていて面白い。『UR葉月恋』のシーンを挙げるとするなら、練習中にも関わらずコントローラーを握る仕草を見せたり、独り言で「これでトロコン......」と呟いてしまったりと、ゲームにハマっている事がもう明らかな態度に表れてしまっている姿がピッタリ当てはまると思います。

いけないって思うほど夢中になってしまうの なぜ?
出会う前 あの頃のお利口なわたしに戻れない
どんどんズレていくチューニング
それなのにこんなにも心地よくって不思議ランデブー

(注3)

続くこちらもアニメの中で言うなら「今までの私に戻れるのです」というセリフとの親和性が極めて強い。作曲に集中しなくてはと思うけれど、それでもゲームに夢中になる気持ち=「今までの私」ではない「私」が育っていくのは止められなくなっている。むしろ、ゲームの面白さも加わって、少しずつそういう自分にも惹かれているようにも見えてきます。その後のサビではそんな「新しい私」へのときめきが加速していきます。

見せて魅せてわたしにもっと
あなたの素敵なとこ
自由な夜に飲まれたい
どうかほんのひとときだけでもいい
危ない夢の中へ
狂おしい胸騒ぎ Midnight

(注4)

「今までの私」に戻れない不安はあるけれど、それでも今は身を委ねてしまいたい。少しずつ、でも確実に「新しい私」に流されてしまっているような気持ちを感じさせるのがサビ冒頭の「見せて魅せて」の表現だと思います。やっぱりここが歌詞のフックになっていて、「あなた」=「新しい私」を通じて、今まで知らなかった景色や自分の光景を「見た」のか、「魅せて」と続ける事で確実に「素敵なとこ」に引き込まれているニュアンスを強く感じるようになります。そんな「新しい私」に飲まれていくことをどこか受け入れていると言っても過言じゃないと思います。

■「新しい私」への戸惑い

2番はこれまで同様に「新しい私」へのときめきは感じるけれど、でも、そこには不安も入り乱れるようになる。詳しくは後述しますが、ここで注目したい歌詞は以前の『UR葉月恋』のブログで書いていた「何を恐れていたのか?」というテーマにかなり近いパートだと思っています。

あなたわたしどちらでしょうか
虜になってるのは
答えは多分お互いに
いつも突然に遠ざかっていく
さよならも告げないで
抱きしめた胸騒ぎ All night

(注5)

これまでと変わらず夢中になっているはずなのに、急に雲行きが怪しくなります。特に「いつも突然に〜」辺りから来るさよならの予感がそれを感じさせる。まさにこれが『UR葉月恋』と重なる部分だと思っていて、アニメの中で「ゲームさえ視界に入らなければ今までの私に戻れる」とゲームから気持ちを切り替えられないでいる自分を「私ではない私」と遠回し否定しているようなあのシーンが思い浮かびます。

そんなシーンを念頭に置いて、このパートを振り返ると、生徒会長、そして創立者の娘としてこの学校にスクールアイドルを根付かせていくという「初心」を持った「私」がいなくなってしまうのではないかと言う恐れを、いつも突然に遠ざかっていく「さよなら」に例えているのだと思うし、そう言う予感がするから「胸騒ぎ」するのだと思います。(あと、これは完全に推測ですが、そういう「いつも突然にやってくるさよなら」は恋ちゃんにとってはお母さんとの別れを思わせる部分もあるのかもしれません。)

『UR葉月恋』を元にここを考えてみると、「新しい私」との出会いはかつての「私」ではなくなってしまう=「さよなら」の予感に対する恐れが強く感じられます。それでも、あの物語のようにこの楽曲でもそんな「私」をしっかりと受け止めていく。

■その全てが「私」であること

もしも巡りあわなければ
切なさも知らずにいられた
それじゃ会わなきゃよかったと
悔やむほどヤワじゃない
わたし実は少し悪みたい

(注6)

そうね 奇跡と呼びましょうか
惹かれ合ったわたしたち
自由な夜に飲まれてく
どうかほんのひとときの夢よまだ
覚めないでここにいて

(注7)

「新しい私」と出会わなかったら、知らない世界が沢山ある。恋ちゃんにとってゲームは切り上げるのを忘れてしまうくらいに楽しいものだし、それがきっかけで同じスクールアイドル部の仲間とはまた違う繋がりも生まれることになった。「新しい私」と出会えたからこそ、見られた光景もあるし、初めて知ることができた気持ちもある。そんな「出会い」ってもの凄く尊いことだし、「奇跡」のようなものだと思います。

もちろん、「新しい私」との出会うということは、「今までの私」と少し変わってしまう事にもなります。でも、そうやって変わっていけるのは今までの「私」がいたからで、決して悪いことじゃないと思うんです。

身近な話を例として挙げると、今まで好きだったものからまた別に好きなものが生まれた時の「変わってしまうこと」への怖さってありますよね?
でも、かつて好きだったものがあったから、今また新たに好きになれるものがあると思っているし、ここまで好きなものと過ごしてきた時間は、身の回りのグッズだったり、カメラロールの中に残っている写真だったり、もしくは形には残っていないけれど想い出だったりで残っているのかもしれない。そして、それが好きだった/好きな「私」は大きく見れば、同じ「私」だと僕は思っています。だから、どっちが正しい「私」で、正しくない「私」か白黒つける必要はないと思います。

ちょっと恋ちゃんの話からは脱線してしまいましたが、生徒会長で真面目な「私」も、ゲームに夢中になってやめられない「私」も、お母さんの想いを胸にスクールアイドルを始めた「私」も、その全てが「私」であるし、まだ出会えていない「新しい私」も沢山いるはず。

だからこそ、『UR葉月恋』の中で恋ちゃんは「今までの私」に戻りたいという気持ちと、ゲームが大好きな「新しい私」との間で葛藤していたのだと思うし、抱えていた問題の中で、そういう自分とどう折り合いをつけていくのかその答えを探していたのかなと思っています。

そして、その結果として『UR葉月恋』の中ではそういう「私」との出会いが「素敵な出会いを与えてくれた」という恋ちゃんの言葉に表れていると思うし、『ミッドナイトラプソディ』の中では、「悔やむほどヤワじゃない」し、今までの自分とはまた違った「私」を「少し悪みたい」と茶化せるくらいに受け止められるようになったと思います。そんな「新しい私」との出会いを少しずつ素直に受け止めていけるのが、このラスサビから感じられるエモさにあります。

■だからこそ「新しい葉月恋ちゃん」が見たい

ここまで書いてきたことをまとめると、『ミッドナイトラプソディ』の魅力とは、今まで知らなかった「新しい私」と出会って、それを受け入れていく、そんな素敵で奇跡のような出来事に心奪われる恋ちゃんの姿が思い浮かぶからなんです。
また、それは『UR葉月恋』の中では十分に描ききれなかったであろう「新しい私」へ心躍る恋ちゃんの姿がこの楽曲に詰まっているとも言えます。

そして、「恋ちゃんってこんな一面もあるんだ!」という可愛らしさと、「私ってこうあって良いんだ!」と「新しい私」にときめいていく恋ちゃんの姿が今までにないくらいに感じられるからこそ、『UR葉月恋』と『ミッドナイトラプソディ』が僕は大好きです。これが正解かどうかはどうでも良くって、僕自身はこの楽曲にそういう想いを抱いているし、そう感じている自分自身の感性をただ信じています。

だからこそ、「恋ちゃんにはこんなに素敵なところがあるよ!」と彼女の一番近くからその魅力を伝え続けてくれている青山なぎささんが、どんな想いを抱いて、そして、どんな表情でこの曲を届けてくれるのかが、ただ楽しみで仕方ないのです。

▼注釈
注1 TVアニメ 「ラブライブ!スーパースター!! 」2期第7話『UR葉月恋』(2022年8月28日放送)
注2〜注7 葉月恋『ミッドナイトラプソディー』 作詞 宮嶋淳子


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