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オルフェオンとフィロシコス。

Orpheon
初めは明確なフルーツ。じんわりと美味しそうな果汁たっぷりの……果実?という感じ。花というよりフルーツ感。これこそいちじくとかそういう系の、ドラゴンフルーツよりもっとフルーティーで酸味のあるやつに感じる。ザクロではないかな。さくらんぼとか。もしくは花×シトラス系?  美味しそうな酸味なのでとてもスッキリする。でも清廉ではなく、地下の隠れ家のような落ち着きがある。その中での爽やかさと華やかさ。高揚はするが、決して夏のビーチとか朝の日差しとかで感じる高揚じゃない、イブニング系のうきうき。日差しはあまり似合わないかも。
それが抜けるとラストは少し渋い。お香とかウッディ系。少し強めの体臭、みたいな。オリエンタル……墨?に近い。夕方の果樹園からスタートして大きな花束が飾ってあるフロアのロビーを通り最後にお寺に着く。みたいなイメージ。


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前回のオルフェオンを嗅いだ日の無編集レビューだ。帰宅してから、タムダオを落として改めて肌に乗せた時のもの。ディプティックの即日垂れ流し文としてはタムダオODP、ODTに続いて3本目となる。
とにかくこの時は、10年ぶりに購入した大きめボトルの香水にしばらくにこにこが止まらなかった。primaniacsの時もそうだったが、新しい香りがフルボトルで家にやってくるというのは精神衛生上非常に良いものだ。そもそも日常に「好きな香りと外出する」という概念はなかったから新鮮だった。とはいえ、身近に香水談義のできる友人もおらず、SNSもやらないので、毎日孤独に楽しんでいた。あと、単純に75mlの大容量で安心できた。(primaniacsは30mlのみなので、割と減りが目に見えてしまうのだ)

さて、フルボトルを購入した際に貰ったサンプルだ。これはムエット祭りの最後に、「どれになさいましょう?」と選ばせてくれたのでとてもありがたかった。
前回の記事にも書いたが、一つは「けっこう好印象」だったフィロシコスODPにした。サンプルが頂けると知るまでは「次の来店時にはちゃんと肌に乗せてもらおう……」と密かに決めていた香りだったので嬉しかった。
香水の世界では、シングルノートというのは別に、果実をメインに葉っぱや樹木まで丸ごと使って一つの植物を表現する、というのは一般的なアプローチなんだろうか。個人的にはそういった香水に出会ったことはなかったので、この香水は妙に気になった。あとで調べたらオーデサンスも似たようなコンセプトっぽいのだが、これについてはまた別に書く機会があると思う。

さて、フィロシコスを試したのは約一週間後、オルフェオン熱初波も落ち着いてきた頃だったのだが、それがよかったのかもしれない。

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Philosykos

ちゃんと果実の香りなんだろうなというのはわかるが、背後の緑とか樹木がもっさりと存在感がある。でもちゃんとトップの主役は果実。青臭さはムエットで試した時よりはまろやか。肌に乗せると消えやすいのかな。
雨の日に嗅ぐと魅力的な気がする。今日は雨の中朝5時につけた。とても馴染むしスッキリする。いい匂い。気にいる。雨の日。夏の雨の日にがっつりつけて思い出にしたい香りだ。フルボトルどうしようかなぁ。しばらく悩む。それにしても消えるのが早い。外に出ると4時間で消えている。汗? これはODPだけど、ODTも気になる。
やっぱり夏に欲しくなるやつだ。
在宅の日は何度も付け直したい。ていうかこの夏の思い出の香りにしたい。
嗅げば嗅ぐほど馴染んでくる。他の香りもそうなんだろうか。

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いつもの無編集。色々と書いてはいるが要約すると、

自分、これを「そこそこ好印象」だと思っていたのか?
めっちょめちょに良い香りじゃないか……。

と呆然とした。店舗で嗅いだ時とは湿度も気温も体調も違うしまず家と店内では香り方が違う、だがそんな要素は些事だと思っていたのだ。ていうか、今考えるとあの時は初めての店舗に綺麗なお姉さんとたくさんの香水に囲まれて緊張していただけかなとも思う。とにかく全く印象が違った。こう言った体験を点数で表すのは抵抗があるが分かりやすくいうと、店舗の時は65点だった香りが家で嗅いだら96点だった、みたいな感じ。
なんだこの31点の差は。リラックス度か、気温か湿度か時間帯か、鼻の感性がちょっとディプティック寄りになってきたか? なんにせよ衝撃的だったし、俄然一つの香りをより深く考えるきっかけにもなった。深く考えると言っても、何度か違う条件下で肌に乗せてクンクンするだけだが。
ちなみにこれは梅雨の時期の話で、ここから夏にかけてしばらく毎日フィロシコスが欲しくなる日が続いた。他のもちょいちょい試しつつ、軽く一ヶ月はつけ続けたと思う。付ければ付けるほど良い香りだなーと感心するので、自分の肌と梅雨〜夏空の環境が偶然にもマッチしていたのかもしれない。毎朝、起きてすぐに「あの香水を嗅ぎたいぞ」と明確に鼻が要求してくるという、個人的には面白い体験をした。

フィロシコスの良さはあまり香水っぽくないところじゃないだろうか。なんなら果樹園とか、海外によくあるフルーツを並べた露店の店先の香りだ。一見飾り気はないのにちゃんと香水として成立している。青臭さのある香水を「原っぱで寝転がった人の香り」みたいに感じることがあるが、自分にはセクシー系や清楚な花の香りより、こう言ったシーン(ex.果物売りの店先)を想像しやすい香りの方が合っているのかもな……と少し遠い目になる。なんだか自分が当初の目的・タムダオとどんどんかけ離れてきているのが気になった。

うっかりフィロシコスだけで終わってしまったが、次は他のサンプルの話である。

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