グレンアラヒー【モルト・レビュー&データ】
グレンアラヒーは元々シーバスブラザーズのブレンド原酒提供をメイン行う蒸溜所であり、クリーンで華やかな味わいをもつ。また、どんな樽にも負けない…とまではいかないものの、太く、しっかりとしたモルト感も特徴である。現在、独立系として稼働、目に見えてシングルモルトリリースの多い蒸溜所のひとつであり、総じて飲みやすく、比較的コストパフォーマンスにも優れている印象だ。
〈テイスティングレビュー〉
キーワード:
フルーティ・太い味わい・スイート・クリーン
~グレンアラヒー 2006年 シングルカスク For秩父ウイスキー祭~
しっかりとフルーティでスイート。かつ、太くてパワフルなモルト感。少々オイリーでビター。度数が高い(59.4%)ことも手伝って口当たりも少々刺激的だが、全体の纏まりが良く、樽感も丁度良く効いている印象。若さもあるが結構楽しめる味わい。
~グレンアラヒー 15年(2020年現行品)~
レーズンやバルサミコ、プルーンやベリーの甘みが主体。非常にスイートでわかりやすいシェリーカスクの風味が印象的。甘いがベタつかず、ビターだがあっさりしており、基本的に飲みやすい味わいに仕上がっている。コスパも良い。モルト感も樽のニュアンスに埋没しない程度に、ほどよく感じられる。
〈蒸溜所情報〉
ブランド名:グレンアラヒー(GLENALLACHIE)
蒸溜所名:グレンアラヒー(GLENALLACHIE)
国:スコットランド
エリア:スぺイサイド
創業年:1967(現在稼働中)
現オーナー:
ザ・グレンアラヒー・ディスティラーズ(ビリー・ウォーカー氏)
国内輸入代理店:ウィスク・イー
年生産量:400万リットル
水源(仕込み水):ベンリネス・スプリング(泉)
モルト供給:複数箇所
モルト種類:
オプティック種やコンチェルト種、オックスブリッジ種 等を使用。
基本的にノンピート麦芽を使用するが、ピートタイプも仕込む。
糖化槽:セミロイタータイプ
発酵槽:ステンレス製×6基
発酵時間:140時間
ポットスチル:初溜×1基、再留×1基
初留容量:36000リットル
再留容量:25000リットル
初溜スチル形状:
ランタン型
ラインアームは平行~やや下向き
再留スチル形状:
ストレート型
ラインアームは平行~やや下向き
スチル加熱方式:スチーム
冷却器:シェル&チューブ(横置き)
〈オフィシャル製品情報〉
~シングルモルト~
現行品(2019年現在):
10年カスクストレングス、12年、15年、18年、25年 等
過去:
ディスティラリーエディション(NAS)、
シーバスブラザーズ・カスクストレングスエディション各種 等
~ブレンデッド原酒提供~
マクネアーズ 等
(過去にはシーバスブラザーズのブレンデッド各種)
〈備考〉
「グレンアラヒー」はゲール語にて「岩の谷」の意(「アラヒー」は「岩だらけ」の意味を持つとされる)。
グレンアラヒー蒸溜所はスぺイサイドエリアの北部(スぺイ川の中~下流域)、スぺイ川近くのアベラワー村に位置している。付近にはアベラワー、マッカラン、ベンリネスなど複数の蒸溜所が林立している。
創業は1967年。20世紀に入ってから創業した比較的新しい蒸溜所のひとつ。
創立したのはマッキンレー・マクファーソン社。(主に米国での)ブレンデッドウイスキー市場の拡大に対応するため建設された。設計者はウィリアム・エヴァンス。タムナヴーリンやマクダフの設計も手掛け、スコッチウイスキー蒸溜所の設計者としては、主に19世紀に活躍したチャールズ・ドイグと双璧を成す存在だった。グレンアラヒーはエヴァンスが手掛けた最後の蒸溜所となった。
80年代にはインバーゴードンによって買収されるが直後に閉鎖。後にペルノリカールの傘下となって操業を再開、自社のブレンデッド用に原酒を供給した。
ペルノリカール時代に至るまで基本的にブレンド用原酒の製造のみを行っており、オフィシャルでは限定品のカスクストレングスエディション以外で一切シングルモルトのリリースが行われなかった。
2017年、かつてベンリアック・ディスティラリーを率いていたビリー・ウォーカー氏のコンソーシアムが買収。以降、シングルモルト主体のリリースに転換され、以後数多くの定番品、限定品がリリースされている。(尚、この買収と前後して、シーバスブラザーズより年数表記無しのオフィシャルボトル、ディスティラリーエディションがリリースされている。)
オフィシャルの他にボトラーズでも間々リリースされている。また、オフィシャルでプライベートボトリングも各方面に積極的に行っている模様。
発酵時間が非常に長く設定されている。これは昔から伝統的に行われていた模様。
蒸溜の冷却器は一般的なシェル&チューブタイプながら、一般的な縦置きの設置ではなく横置きとなっている。横置きの方が温度の管理がしやすいらしい。また、余熱を糖化用の湯沸かしに再利用するプレヒーティングの機構も、業界では先んじて導入されていた。
〈歴史概略〉
1967年 (創業) マッキンレー・マクファーソン所有。
1968年 ウイスキー製造を開始。
1985年 インバーゴードン・ディスティラーズ所有。
1987年 閉鎖。
1989年 ペルノリカール傘下、キャンベル・ディスティラーズ所有。
操業再開。
2001年 ペルノリカール傘下、シーバスブラザーズ所有。
2005年 Glenallachie 16年 カスクストレングスエディション発売
(初のオフィシャルシングルモルト)。
2017年 ザ・グレンアラヒー・ディスティラーズ所有。
2018年 創業50周年記念ボトルを発売。各種OBのリリースが定番化。
参考資料
・SCOTCHWHISKY.com(海外サイト:https://scotchwhisky.com/)
・whiskybase.com(海外サイト:https://whiskybase.com/)
・シングルモルトウイスキー大全(国内書籍:土屋守・著、小学館・刊)
・Whisky Galore(国内雑誌:ウイスキー文化研究所・刊)