ウィルスは悪者!?
感染症を引き起こし、時に人類の脅威となるウィルス。捉えどころのない、この「曖昧な存在」の本質を、考えてみよう。
ウィルスは生物と無生物の中間に位置する。
ウィルスは、単独で自律的に生きていくことはできない。この意味で、「無生物的」である。
だが、生きている細胞(宿主)に侵入すると、その細胞の仕組みを利用し、「生きて」いるように「自己複製」を行う。
ウィルスが宿主の細胞に侵入し、増殖している状態、あるいは増殖後、宿主内に持続的に存在している状態を「感染」という。
ウィルスを阻む宿主の壁
ウィルスが細胞に侵入するには、宿主生物表面にある「レセプター(受容体)」に結合する必要がある。どのレセプターに結合するかは、ウィルスによって異なる。そのため、ウィルスは、多くの場合、特定の宿主生物にしか感染できない。
ウィルスが宿主を死に追いやるのは、「エラー」
ウィルスは、宿主を生かして自分も生きる、あるいは種の共生関係をそれぞれの自然宿主と築いている。にもかかわらず、ウィルスが宿主に致命的な病気を引き起こすのはなぜか?
宿主を殺してしまえば、ウィルスが生き延びるのは困難になる。つまりエボラ出血熱や高病原性鳥インフルエンザのように、宿主を高い確率で死に至らしめるウィルスと宿主との関係は、ウィルスの生存の観点からは「エラー」なのである。
ウィルスは悪なのか
人間の活動領域が広がり、野生生物を宿主とするウィルスと接触する機会が増えた。そうした自然界のウィルスの中から、人間に感染し、高い病原性を示すものが出現した。人間は、こうしたウィルスを「悪」とみなすが、ウィルスにすれば、自身の遺伝子を増やして残しているにすぎない。