死臭③

今回亡くなったおじさんは、いわゆる偏屈な人と呼ばれる人だった。息子さん夫婦は気にかけていたようだが、おじさんは会うのを嫌がっていたと後に聞いた。娘さん夫婦もいたが、こちらは絶縁状態とのことだった。

おじさんの家から出された荷物の中に、かなり大きな立派な雛人形の箱があった。ずっと捨てられなかったのかもしれない。こんなになる前に、おじさんと話す事ができたら、何か変わったかもしれない。でもただ単に捨てるのが面倒だったかもしれない。もう彼の本当の気持ちを知る事ができない。ただ、大きな立派な雛人形の箱が、どんどん雨に濡れていくのをみているしかできなかった。

奥さんが生きている頃は、まだ少しは地域の人と関わりもあったと聞いてはいる。奥さんが亡くなってから、彼は本格的に人との関わりを経った。挨拶はしない、目が合ったら家に帰ってしまう。

自ら望んで孤独死に向かってるとも言えるが、奥さんが亡くなって、心をどうしていいのか分からなかったのかもしれない。

また別の視点から見れば、彼には孤独でいる権利もあったと思う。誰とも接触しない自由。彼が心から望んでいるのなら、その権利が認められる社会こそ本当に自由だと思う。

ただ、問題は匂いと後片付けだけだけど、それを気にして自由が奪われてはいけない。

つづく


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