◎中国版ラマヌジャンの孤独◎中国映画『デクリプト』を知っていこう
2024/10/22から開催の中国映画週間2024にて、中国映画『デクリプト』を見てきました。
作品全体は、見る人によっては結構ホラーサスペンスにも取れそうなストーリー展開。
原作者:麦家の小説は軒並み映像化されてますが、唯一鑑賞済みの作品は、長編第二作目「暗算」の第一章を映画化した「サイレント・ウォー」。盲目のスパイを演じたトニー・レオンが最高にかっこいいサスペンス映画です。
ちなみに「解密」「暗算」、日本とのスパイ戦を描いた「風声」の三作は、麦家による谍战3部曲(スパイもの3部作)といわれています。
作品の順番としては「デクリプト」のほうが、「サイレント・ウォー」よりも先になりますね。原作を見ていないので何とも言えないんですが、友情出演で王宝强が演じていた701局の盲目スパイはシリーズに登場するキャラかな。
イギリス映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」にも若干似た、天才が抱える孤独にフォーカスしている「デクリプト」。自分としては結構楽しめました。
主演を務める刘昊然で思い浮かぶのは、「唐人街探偵シリーズ」で演じた天才の吃音青年秦風か、「少年の君」で演じた学級委員長。今回も天才数学者役ということで、頭脳派イメージのまま本作を鑑賞。特殊メイクでも隠れぬ端正な顔立ちでした。
「デクリプト」の主人公金珍は類ぐい稀なる数学の天才。暗号解読の鍵を夢で得る彼は、中国のラマヌジャンと師匠キースに称されています。その一方で、夢分析に傾倒するあまり、夢と現実の境が常に曖昧になっているという危うい一面も…。
さて、師匠キースとの交流の中でキーアイテムのチェス。師弟はチェスを通して、言語を超えた思考をも共有しています。この部分は物語後半に大きく関わっていますが、もう一つ。
金珍は701局への配属初日、小枝と石で中国将棋「中国象棋」をする老人を見かけます。同僚から狂人だからかまうなと忠告をうけますが、金珍は向かいに座り、老人と一局始めてしまいます。このシーンは金珍がキース以外と言語を超えて通じ合う重要な場面。
他人の思考に干渉しすぎてしまう金珍には危うすぎる出会い。
その後、金珍の夢に正気に戻った老人が登場しますが、あの時すでに老人が正気だと感じる領域にまで金珍の精神が達していたのかもしれません。
本作の知ってこうポイント:チェスと中国象棋(中国将棋)
老人との対局で出てきた中国象棋は、全世界で約2億人のプレイヤーがいるとも言われるボードゲーム。ちなみに中国語では象棋をプレイする際の動詞は、「打」でも「玩」でもなく、下りる動作を意味する「下xià」が使われます。
キースと対局したチェスはいわずもがな有名なボードゲーム。
天才たちが言語を超えて通じ合う描写に重要なアイテムとして登場した二種類のゲーム。諸説ありますが、どちらも起源はインドのチャトランガというゲームで、アラビアで発展したのちに西洋で独自の発展を遂げました。(日本の将棋の期限でもあるといわれています。)